第109話 再戦と覚悟
ザムゴシドとアカネの再戦を願うサキ。
サキの案に疑念を感じるアカネとアサナの二人。
アサナはサキの囁きで賛成することにした。
「サキとアサナさんが賛成派なら仕方ないのね。わかったのね。」
サキのそのイタズラ心溢れる笑顔にやられたか。
アサナの少しだけ赤く染まった顔を見て感じ取ったのか。
それとも仕方なくと割りきったのか。
とにかくアカネはザムゴシドと再戦することにした。
ザムゴシドはサキがアカネと戦うことを提案した時にサキ達の元へとんぼ返りしていた。
しかし、ザムゴシドの腕は今一本もない。
対するアカネは自分の姿を獣へと変える。
いつもは犬のような猫のような姿へと変わる。
今回も犬のような姿となり人狼となったアカネ。
アカネはその姿のままザムゴシドへ向かっていく。
サキ達はそれを見守っていた。
ザムゴシドは腕は失くなっていたが微動だにしない。
アカネがザムゴシドの首へと噛みつこうとしたその時アカネに強い衝撃が走り地面に倒された。
アカネはなにをされたのかわからず敵を見る。
そこには後ろから生えた人間のような腕が3本あった。
その腕は一本が3mあり太さも1mはあるほど巨大であった。巨人の腕を再現したザムゴシド。
アカネは体を動かして異常はないか確認する。
あばらがなん本か折れてるなと思うが気にせずザムゴシドへと突っ込んでいくアカネ。
ザムゴシドの手前で横へと移動しザムゴシドの後ろに回った。
ザムゴシドは慌てて行動するも腕が邪魔でアカネを見失ってしまう。その隙にアカネはザムゴシドの右腕を切り落とした。
後2本。ザムゴシドは今までになく叫び声を上げる。
今まで一度も腕を取られても叫ぶことはなかったのに。
その違和感を感じながらもザムゴシドへと迫るアカネに激痛が走った。
ザムゴシドは巨大な腕を降りましている。巨腕以外になにかおかしな部分はない。
そのためなにをやられたのかわからないアカネ。
「やるです。」
アカネとザムゴシドの二人の対決でザムゴシドが策を積みその策にはまってしまったアカネ。
それを見てやるです。とサキは言った。
「そうよね、アカネが少し厳しい展開になったわよ。」
「アサナ、いいのですか。」
「いいのよ、テンギネトラが治してくれていたのよ。今はあいつに構う意味はないのよ、サキ様。」
そうですか。クラノスへの気持ちの整理をしたいだけかもです。
聞かないけどです、聞いてしまったら意味ないのです。
「そうですか、アカネにはちょっと無理してもらったかもです。」
アカネとザムゴシドの二人の対戦でザムゴシドが策を積みその策にハマるアカネを見てちょっと厳しいと思ったサキ。
「そうかも知れないわよ。でもよ、サキ様。アカネは真っ向勝負で負けないわよ。」
「なんでわかるです、アサナ。負けるかもら知れないです。」
「ということはサキ様はアカネのこと信頼していないということでよろしいのよね。」
「そうは言ってないです。アカネには勝って欲しいです。でもです、無理かもしれないのです。」
「サキ様が勝って欲しいと願うのなら私はアカネの勝利に賭けますよ。なぜならサキ様がそこまで信頼したかたならその信頼に答えてくれると信じているのよ。」
・・・
アサナに言われて自分がアカネを信じていることを確認したサキ。
サキはアカネとザムゴシドの二人の戦いを見守っている。
しかし、明らかにアカネの動きに最初のキレがなくなってきているとサキには思えた。
アカネに何をしたです、ザムゴシド。
それでもアカネはザムゴシドへと突っ込んで行きザムゴシドの顔めがけて飛び蹴りをするも見きられておりザムゴシドの巨大な左手によりアカネは右足を捕まれ放り投げられた。
その時に足を複雑骨折したようだが右足を引きずりながらもザムゴシドへとゆっくりと向かっていく。
「かかってこい。」
ザムゴシドはアカネを見つめアカネの次の行動を考える。
アカネはゆっくりと進みながらもザムゴシドを見続ける。
瞬きをアカネがしたタイミングでザムゴシドはアカネの元へと歩み始めた。
それはまるでパーンと銃の音がなって開始の合図があったかのように。
痛手を負う両者であるが今だにザムゴシドが優勢である。
しかしそれは圧倒的な優位へと変わっていたのである。
アカネの顔に向かって三本目の巨腕が一本だけの指へ小さくなっており、その一本がアカネに迫る。
アカネは踏ん張りがきかないためしゃがみザムゴシドを見る。
巨腕はアカネを追っていくがアカネは左へ腕で横跳びして避ける。
しかし、かすっていた。
「アカネ!」
「それじゃ遅いわよ。」
アカネは左を向くがそこには巨腕がアカネへと向かう姿があった。
「冗談じゃないのね。」
早すぎるのね。
アカネはそれでも左へとしゃがみながら進んでいき、ザムゴシドの腕はアカネへと迫っていく。
「サキ様、このままじゃジリ貧よ。」
「アカネが少しずつ迫られてるです。」
このままだとアカネがやられるです。
「アカネを助けるわよ、サキ様。」
「ダメです。まだ、ダメです。」
サキがダメと言っている間もアカネにザムゴシドが迫る。
「なにを言っているのよサキ様。見てわからないなんて言わないわよね。」
「わかってるです。」
「なら助けましょうよ。」
「ダメなのです。」
それはダメなのです。
それではザムゴシドに殺されるのです。
アカネと戦かい合うことが条件だと思うからです。
サキの考えの通りであり、アカネとの戦い合いではなくなると理性が消え去る。
それがザムゴシドの今の状態であった。
また、全ての腕を失ったことでジャイアントフロッグが解放された。
そう両腕の巨腕の他にもう一つ三本目の腕がフロッグの象徴である。
だからこそ普段は隠れている。
その隠れた腕には毒が含まれていた。
その隠れた腕には一つ効果があった。
またもう一つ彼には効果があった。
それが二人以上であった場合に大爆発するというものである。
それを感じ取ったというよりも巫女の力で見たためだ。
そのためサキは見守るだけで割り込まないことに決めた。
アカネをザムゴシドが三本目の腕から伸びる一本の指で左手を突き刺す。
「痛ったいのね。」
「まだまだやってやろう。」
ザムゴシドがアカネに巨腕を伸ばす。
「サキ様、本当にいいってことよね。もしアカネが死んでしまってもよ。」
「・・・わからないです。」
サキとアサナが言い争ってる間にもアカネは少しずつザムゴシドの攻撃を食らう。
アサナとにらみ合いを続けていたがバツが悪そうに俯いていたサキが顔を上げた。
その時、ある一筋の線が延びていたために断ち切るためにホエドの核である七芒星を持ち剣へと変えるサキ。
その一筋の線を切るサキ。
サキの目の前にはクラノスがいた。
一筋の線とはクラノスが剣を持ちながら進む道のことであった。
クラノスとサキの二人が十字になるように剣をぶつけていた。クラノスがサキに叫ぶ。
「邪魔しないでっす、サキ様。」
「邪魔してるのはあなたです、クラノス。」
「なに言ってんすか。アカネが死にそうなんす。助けなければいけないんす。」
「ならですクラノス。アカネたった一人と世界中全ての人ならあなたはどっちを助けるです。」
クラノスの目には子供から大人へ変わったサキの気迫が垣間見えた。
クラノスはサキの気迫に押されるように剣を下ろす。
「わかったっす、サキ様。」
サキも剣を下ろそうとする。
「させないわよクラノス。サキ様を騙してアカネも世界中全ても助けようとしてるわよね。」
なんで気づかれたっす。
「なんでわかったのかって顔してるわよ。あなたは顔に出やすいのよ。」
「二人とも仲間が死んでもいいんすか。」
「いいわけないじゃないのよ。バカクラスあなたが邪魔してることは確かなのよ。アカネの希望をザムゴシドの弱点をサキ様をあなたは邪魔してるのよ。」
アサナはクラノスに怒鳴りつける。
「わかったっす。」
アサナはよりクラノスに密着しクラノスの首に突きつけていたナイフを少しだけ食い込ませる。
クラノスの首から血が流れる。
「その手には乗らないわよ、剣を下ろしなさいよ。」
剣を地面に下ろし両手を頭に上げるクラノス。
「もういいっす、決着はついたっすから。」
それにアサナとサキは驚きサキは後ろを向く。
そこには倒れる二人の姿があった。
サキは急いでアカネの元へ向かう。
「サキ様も心配だったんすね。」
「当然じゃないのよ、あなたなんて非にならないほど心配してるのよ、全てに。」
アサナは縛りつけながらそう口にした。
「なんで縛るんすか。」
縛られ終わった後にアサナにそう聞くクラノス。
もっと早くそう言いなさいよ。とはアサナは思った。
「それはあなたの単細胞で無鉄砲な行動のせいでこうなったからよ。わかってるわよね、それで反省するように縛ったのよ。」
「納得いったけど納得できねえっす。」
そんなこと言ったら余計に解放しないわよ。Fクラス。
・・・
地面に横たわるアカネの名前を呼ぶサキ。
「アカネ、アカネ。」
「サキさん」
うっすらと目を開きアカネはサキの名前を呼ぶ。
「サキさんの期待に応えられたのね。」
「応えられたです。ありがとうですアカネ。」
「よかったなのね。」
「アカネ、大丈夫なのよね。」
「どうだかわからないのね。」
「アサナ、アカネを助けてです。」
「すみませんサキ様、アカネの生態にはわからない部分が多いため不可能なのよ。」
そんなのかわいそうです。
「仕方ないのね。」
「まさか相討ち覚悟で突っ込んでくるとは完敗だ。」
「あんたまだ話せるのね。」
「もう核もないから消えるがな、サキとアカネだったか。俺たちみたいにはなるな、けっしてな。」
そう言うとザムゴシドは土の中へと吸い込ませていく。
ゴゴゴと音と共に何本かのタコの足のような木の根が伸びた。
それを見て戦慄が走ったがしばらくするとそれは大木へと姿を変えるのだった。
その光景に呆気に取られて呆然とただづむサキ達。