第108話 救いの手と戦いの手
全くなにやってくれるの。
ここまでいったら私はなにも言わないの。
あなたは助けるべきだから助けたの勘違いしないでなの。
「なにしてるのよ。」
「それはあなたも同じなの。」
助けてやってるの、見えないの。
分かりなさいなのと思うテンギネトラ。
テンギネトラにサキを助けてもらっているが、なにかが府に落ちないアサナ。
「ありがとう、サキ様を助けてくれて。」
「当たり前なの。」
この人に死なれちゃ困るの。
なのになんであなたは・・・・・・。
この人はサキ様を助けて欲しいと言ったけど、もっと助けて欲しい人がいるんじゃないの。
そう思ったとき、テンギネトラに迷いが現れた。
それはアサナが感じている迷いと同じ迷い。
「お願いよ、サキ様を助けて。」
「今やってるの。」
テンギネトラは気づいていなかった。
アサナにもう一度助けてと言われるまで少しずつ治療の速度が遅くなっていたことに。
サキ様。アサナは余計なこと(クラノス)を忘れることにした。
サキは右腕を失い少し血を流しすぎて倒れてしまったサキをテンギネトラが助けてサキは目を覚ました。
「アサナ、どっちが勝ったのですか。」
「・・・サキ様よ。当然サキ様ですよ。」
サキはホエドの胸に剣を突きつけたことを忘れていた。
「そう、ですか。クラノスは大丈夫ですか。」
アサナがサキから違う方向へと目を向ける。
サキもアサナの視線が向ける先を見る。
そこには目をつむってまるで眠っているようなクラノスがいた。
「クラノス、生きてるですか。アサナ。」
「分からないのよ。サキ様も重症だったからクラノスは後回しにしたのよ。今はそれでよかったのか分からないのよ。」
クラノスを見ながらなにもできない自分に自責の念を込める二人。
クラノスごめんです。そして...。
「忘れてたです。」
「どうしたのよ。」
「アカネはどうしてるのです。」
「そうよ、巻き込んだアカネはどうしてるのよ。」
謝ろうと思ったサキはもう一人の苦労人を思い出したのだ。
そして思い出した人を周りを見渡して探し出したサキとアサナ。
アカネは目の前にいる人と共に眠っていた。
アカネにアサナが近づき脈を計る。
その後もう一人の千手観音のような人も計る。
二人とも眠っているようであったが、実際に眠っているようだ。どうして二人は寝ているのか。
「二人共死んでないわよ、サキ様。」
「よかったです。」
それはアカネがザムゴシドの腕を全て切り落としたため顔を殴ったがなぜか一本生えていた人間の腕にクロスカウンターを食らいアカネとザムゴシドは二人とも眠るように倒れたのだ。
ホエドことクラノスを治し終わったテンギネトラは絶望していた。
テンギネトラがクラノスの胸に開いた穴からホエドの核である石を取り出した。
ホエドが取り出してくれと頼んだためだ。
そして、テンギネトラの手には七芒星のある石であり、ホエドの核を包み込むようにもっていた。
テンギネトラにある思いが石から伝わってくる。
これをサキに渡してくれ、頼むテンギネトラ。
「ホエドのバカ。」
テンギネトラの目に涙が流れていた。
クラノスはフーという音を出しながら寝むっていた。
クラノスと呼ばれる男がしっかりと生きていることを確認してからザムゴシドとアカネの元へと向かうテンギネトラ。
「サキと言うのは君でいいの。」
「はい、そうです。」
「これ、あげるの。クラノスは無事なの。よかったなの。」
俯くテンギネトラからサキがホエドの核をもらった。
「ありがとうございますです。でもです、二人を何とかして欲しいです。」
サキの言葉を聞いて二人を見てテンギネトラが言う。
「この二人は大丈夫なの。すぐに目を覚ますの。」
サキはアサナとテンギネトラにどうなったのか聞いた。
サキとホエドはサキが勝利した。
サキとホエドが交差するような形となりサキは腕を失ったがホエドはサキに胸を剣で突かれて前に倒れ、サキも腕からの出血で倒れた。
アカネとザムゴシドは途中まで二人で戦っていたがサキとホエドの迫力に負けて観戦することにした。
そしてアサナとテンギネトラの二人が知らない内にザムゴシドとホエドの二人は眠ってしまったのだ。
・・・
サキ達がアカネとザムゴシドを見つけてから一時間ほどが経ち、まずアカネが目を覚ました。
家々が立ち並ぶ場所で目が覚めたため最初は困惑していたがすぐにことを思い出しサキとアサナに心配かけましたのね。と謝るのだった。
次にザムゴシドが目を覚ました。
テンギネトラにひっぱたかれたが次の言葉に納得したようだ。
「ホエド、死んだの。」
それを聞きザムゴシドは立ち上がりサキ達の元へとやってきた。
「もう一度やろう。次はどちらかが朽ち果てるまでやりあおう。」
ザムゴシドのその発言にテンギネトラも否定的であり、ザムゴシドに賛同するものはいなかった。
「それをやる意味を感じないです。」
「そうよ、あなたとやる意味なんてないわよ。」
しかし、アカネはなにも言わずそこにただ佇むように横になっていた。
「ザムゴシド、もうあなたに腕が一本もないの。もういいじゃないの。ホエドはいなくなったけどもういいの。」
テンギネトラはホエドがいなくなって仲間がいなくなって欲しくなかったのだ。
「よくない!」
しかし、ホエドがいなくなったからこそザムゴシドはやることがあった。
「よくないんだ。まだ、残ってるやるべきことが残っている。それをやらずして終われない。ホエドの仇を取るまで終わってたまるものか。」
ザムゴシドの言葉に恐怖して愕然とするテンギネトラ。
ザムゴシド達がここにいたことに疑問を持ち恐怖するサキ達。
「もう遅いの、潮時なの。」
「やめどきでもやめはしない。生きている限り貫き通す。そう決めた。」
テンギネトラはザムゴシドの覚悟を目にしたがそれよりもホエドを失った悲しみの方が強かった。
「ふざけないでなの。あなたにはもうあの人達に打ち勝つための力はないの。諦めるしかないの。」
「本当に諦めるしか選択肢はないと本当に考えているのか。テンギネトラ。」
「当たり前じゃないの。だから早く撤退するの。」
ザムゴシドはテンギネトラの言葉で少しだけ撤退の二文字に傾いた。
テンギネトラの顔にパンチするザムゴシド。
ザムゴシドに殴られて茫然とするテンギネトラ。
「ごめん、テンギネトラ。」
謝るザムゴシドの顔は申し訳なさと僕のせいじゃないという二つの感情が入り交じった複雑な顔をしていた。
「君たちをこのまま逃がすのは得策じゃない気がするです。」
サキのその言葉を聞いてテンギネトラは空を飛んで逃げ出した。
テンギネトラとザムゴシドの二人がこのナスターク帝国にいることと監獄を襲い全てを葬り去った記憶があったためにサキはそう言ったのだ。
「サキ様、逃げられますわよ。」
「サキ、テンギネトラに逃げられるのね」
アサナとアカネの二人が逃げられる。と言ったが助けてもらった恩があるためわざとテンギネトラを逃がしたサキ。
「サキどうするのね。」
サキは逃げられないようにザムゴシドに羽をつけて飛ばすがもうそれなりに距離が離れていた。
サキの視界からテンギネトラが見えなくなった時ザムゴシドが止まった。
その時テンギネトラに声をかけたザムゴシド。
「テンギネトラ、ありがとう。本当に感謝してる。」
「ザム……。」
テンギネトラが声をかけた時にはザムゴシドは蜻蛉返りしていた。
テンギネトラはザムゴシドの後ろ姿を見た後、船長ことタヒリキオに会いに行った。
・・・
「逃げられてしましたよ、サキ様。」
アサナの言葉にキョトンとして首を傾げるサキ。
アサナはそんなサキの仕草をかわいい。と小動物を愛でるような視線をサキに向けるのだった。
「サキ、逃げられたのね。どうするのね。」
「逃げられたわけじゃないです。邪魔だからどっか行ってもらったです。」
彼女には助けてもらった恩があるです。
ちょっと待ってよ、サキ様。
「この後どういたしますのよ、サキ様。」
「当然戦うです。」
「どういうことですのよ、サキ様。」
アサナはテンギネトラに恩を感じて逃がしたのだと思った。
それなのに戦うと言うサキの言葉の意味が分からなかった。
「なるほどなのね。」
なるほどって誰と戦うのよ。もしかして今から戻ってくる千手観音みたいだったあいつと戦うって言わないわよね。
「彼らは根絶やしにした方がいいと思うです。」
「それは本気で言ってると思っていいのよね。」
テンギネトラは助けてもらったから一度は逃がすです。でもです、二度はないです。
「本気で言ってるです。」
しばらくの間アサナはサキのことを睨みつけるようにじっと見つめた。
「わかったわよ、戦うのでいいわよ。それで誰が戦うのよ。」
サキ様が戦うわけじゃないのよね。
アサナは自分かもしれないと薄々思っており、アカネはアサナで決まりなのね。と決めつけていた。
「もちろん、アカネにやってもらうのです。」
二人は予想外のアカネと言う答えに驚いた。
「「え。」」
「ちょっと待ってくださいよ、サキ様。」
「そうなのね、なんでアサナじゃないのね。」
「そんなに疑問があるですか。」
「大有りよ。」
「あるのね。」
「愚問だ。」
白い目でザムゴシドを見る三人。
「サキ様、なんでアカネじゃないのよ。」
「そうなのねサキ。」
少し不服そうにするサキはなんでわからないです。と考えていた。
「それはアサナよりもアカネの方がいいと思うからです。それにです、アサナ。」
そう言うとサキはアサナの元へと近づき一言囁いた。
(クラノスの看病をアサナがしないといけないのです。)
そうすればクラノスは喜ぶです。
ついでにアサナも嬉しいかもです。
「・・・わかったわよ。」
その言葉にサキはイタズラっ子のように笑った。
「よかったです。」