第92話 ナタレと木獣ギド
アサナと別れたパキパキ族の一体がある場所にやってきた。
「帰ってきたの。どうだった。」
「パキパキ・・・・・・。」
「そう、ごめんねお客様がいるの、ご褒美あげている暇がないの。」
パキパキと不服そうにしてそのパキパキ族は去っていった。
「待つのね、これあげるのね。」
客人に出されていた茶菓子のクッキーをもらうパキパキ族。
「これがご褒美ってことにはならないね。」
「それがご褒美でいい。」
「パキパキ」(ありがとうございます。)
嬉しそうにパキパキ族はスキップしながら去っていった。
「それでね、この後どうするつもりね。キピ、あなたはね。それとね、プニカお嬢様はここにいるのよね。」
質問は一つにして欲しいの、どれに答えたらいいのかわからなくなるの。ナタレ、久しぶり会いたかったの。
「・・・あなたがここにくるなんて珍しい。」
「死にたいのね、殺してあげるわね。」
いきなりその言葉を使うの。
「いいわ、もう私の役目は終わったの。あなたはどうなの。」
あなたは進む道があるなら進んで見たらいいんじゃないの。絶対に会わない方がいい人はいるの。
でも、その人に一番あなたはあって欲しいの。
「まだあるわね。あなたはもういいのね。」
ナタレに微笑みかける女性。キピ。
ナタレはキピの悟りを開いたかのような微笑みに苛つく自分の心の内を理解しキピを睨み付けた後に深くため息を吐きキピに問いかける。
「キピ、あなた本当にいいのね、大丈夫なのよね。」
ナタレに微笑みかけたままだったキピが口を開いた。
「わからない。それぐらい不安定なの。成功と悪夢は全く違うけど二つはないといけないものなの。覚悟はできているの。」
進んでいっても楽しいことでつまっているかわからないね。いいのかはわからないね。それが楽しいね。
「そうなのね、それでねムラサキ様はどこにいるのね。もしどこかで聞いているなら伝えて欲しいのね。ユリースと二人で邪魔しないでって伝えて欲しいのね。」
あの二人は絶対に今回の件は関わってくると思うのよね。ローザさんには話してしまったからね。今回の計画をね。
「それならあなたがなにをするのか聞かないと行けないの。それでもいいならその言葉に従うの。どうするの。」
「キピは終わると思うかね。それとも思わないのかね。聞きたいね。」
「ナタレ、あなたはなにか頼まれたの。ならいいじゃないの。やることがあるならしっかりやるだけやってみるの。一ついえることはここはやり直しができるということだけなの。」
「あなたはそれを信じてるのね。そうね、その通りね。でもね、死んだら終わりなのね。」
終わりはあるけどやり直しがきくと思ってるってことよね。でもね、やり直しがあっても死ぬことは終わりなのね。
「そうなのナタレ。」
ナタレはそういう風に考えているの。
「でもナタレがいいたいのはそういうことじゃないんじゃないの。」
「いいえ、死んだらそれは終わりね。その後なんて誰にも分からないからね。」
そうだけど本当にそうなの。
そうかもしれないけどそれだけじゃない、そう思うの。
あなたはそう思わないのナタレ。
・・・
「じゃあ帰るけどムラサキ様とユリースに伝言よろしくね。」
「言わないかもしれません」
「それでもいいからね。もう帰らないと行けないからバイバイ、キピ。」
「ナタレ、ありがとう話し相手になってくれて。」
「礼なんていらないね。こっちは用事があってきたんだからね。」
なに言ってるのねキピ。お礼言わなくていいのね。
だってね、キピを利用するためにやってきたからね。
でもね、連れてこれなかったね。
どうしようね。
そういえばねもう一本大木があったね。
でもね、それを使う方法がキピにあるからね、説得しにきたよね。
・・・
なにしてんだろうね。
ナタレは笑いながらその場を後にしたのだった。
~~~~~
一方、サキ達一行から一人食料などの日用品をもらう約束があったことを思い出してもらいに大木のある広間へと戻ったアサナ。
そんなアサナのいなくなったサキ達一行はというと。
・・・
クラノスのことが気になるです。どうしたです。
「クラノス。なにか悩んでるみたいだけどどうかしたです。」
「同行していた者の姿が見えないんすよサキ様。今なにをしているのかと思ってたっす。上にいるとは思うんすけど。」
「そうですか。」
クラノスに同行者がいたですか。ありえないです。
信じられないです。期日が決まっていないのも変ですし、定期連絡する方法もないのはもっとおかしいです。いくら洞窟へ行くとしてもなにかしら連絡手段がないのはダメなのです。
しかし、クラノスの言う通り同行者がいたのなら納得なのです。
それをアカネに問いただそうとアカネに声をかけるサキ。
「アカネさん、なんでアサナと一緒に行くって言わなかったですか。アサナが道に迷うかもしれないのにです。」
アカネはサキの姿を見てアサナが心配なのと思った。
「アサナさんは道案内はいらないよ。一度ここであったことがあるから。」
そうなのですか、アサナならナタレに命令されたと考えるとここに来たかもしれないです。
けどです、それだけでこの洞窟の案内が必要ないかは別の話じゃないです。
でも今行ってもアサナに会えるかは分からないからもういいです。
「それならいいです。アカネはあの大木の洞窟が故郷なのですか。」
「そうだけど。」
「ならなんでアサナと一緒に戻らなかったですか。」
故郷なら別れの挨拶をしても・・・会いたくはないです。少しの間でなんてです。
「……色々あるの。サキさんも故郷に忘れたいことってあるでしょ。」
ごめんなさいです、アカネさん。
「あるです。」
サキは下を向いて悪かったと思いながら呟いた。
「そういうこと。」
それだけが理由じゃないんだけど。
・・・
それから誰も会話せずにどこか気まずいまま時間が過ぎた。
「ただいま戻りましたよ。目的の物ももらってきたわよ。」どうしたのよどんよりと空気が重いわよ。
「アサナが戻ってきたです。」
サキ様もどこか不安そうだけど大丈夫よね。
「サキ様、大丈夫よね。」
「なにがですか、大丈夫ですアサナ。」
そうそれならいいのよ。
しかし、全くをもって大丈夫ではなかった。
道に迷うことはなかったが先頭はアサナが担当し殿をアカネが担当した。
なぜかというとアサナが帰ってきた後からずっとアカネは下を向いたままでいた。異変に気づき落ち込んでいるからだ。
気まずいです。そして気になるです。
アサナが先頭にいるです。アカネさんは一番後ろにいるです。
アカネさんは下を向いて歩いているです。落ち込んでるんだと思うです。
アサナに食料とかもらいにいった時になにかあったのか聞いてみるです。
アサナはそっとしといてあげてよ。なにも言わないであげてよサキ様。と言うだけです。
アサナが道を間違えたようでアカネがアサナにそっちじゃないと口頭で伝えて道案内していた。
・・・
地上にたどり着いたです。
そこは生きた心地のしない地獄絵図のような場所と化していた。
そこにはクラノスに依頼したシルヴェスがいた。
シルヴェスにクラノスは近づき声をかける。
シルヴェスかいきさつを語った。
上に上がってきたクラノスの相方はクラノスが死んだと報告した。それから少し経ってヤツラがやってきた。
シルヴェスに問いただすクラノス。
やつらってどんなやつらだ。
やつらは俺たちと同じく人の形をしたいた木だった。
確かに、木だったんだ。
サキ達一同は理解ができなかった。
木人形が襲ってきてそれにやられたですか。ありえないです。
腕や体が噛みつかれてできた傷や引き裂かれた傷があるです。でもです、あれが木がやったなんてありえないです。
・・・
少しは状況を整理できたサキ達はそれを目撃した。
木が人の姿と変わらず歩きこちらに近寄ってくる。この中には獣のようなものもいる。
そして、悲鳴が聞こえるとシルヴェスが叫ぶ。
「木獣ギドがきたぞ。」
やつらが襲ってきた。
それはもうただの殺戮だっだ。
武器を持たぬ人間に戦車で戦うかのように圧倒的だった。
やつらは自身の形状を変え襲ってくる。
やつらに対する武器は銃ではなく火。
火薬も限られるためそんなに使いたくはない。
そう考えながら戦っている内に人がバタバタと殺されていったのだ。
そして今は10数人いるかどうか。洞窟に囚人こと捕虜がいるが彼らを外に出すのは違うと考え自分達だけで戦っていた。
そんな時に死人のはずのクラノスがやってきたのだ。
おかしくなるのも無理はない。
サキが樹木を操る力を使いやつらギドを一ヶ所に集めて一本の巨大な木へと変えた。それをアサナは持っていた手榴弾を投げた。
そこにパキパキにもらった食料などの中に油があるからそれをかけてゆっくりと炎で燃やした。
「これってそんなに怖いものですか。」
サキがシルヴェスに聞くと彼は口を開けてその状況を見ていた。
「呆れちゃうわよ。こんなのに指揮させるなんてよ。これなら被害が甚大じゃないのも納得よ。」
こんなのが上にいて襲われてやられていったなんて悲しいわよ。
でもよ、サキ様。この木は怖いわよ。
さっきの一本木は根本は消えたわよ。
でもよ、少しは残骸が生き残ったわよ。
「救世主様!」
とサキの手を掴み叫ぶシルヴェス。
ビックリするじゃないのよ。
「なにするのよ。シルヴェス。」
シルヴェスをサキから振りほどいた。
「あんたみたいなのが触っていい人じゃないのよ。」
「アサナ、苦しいです。」
「すみません、サキ様。」
手を離して大丈夫ですか。とサキに尋ねるアサナ。
「お願いします。救世主様、そのお仲間様。どうかこの危機から我らをお救いください。」