第82話 植物園合流編⑩ 守る鍵と劇
ハレンの気がかりをもっと知りたくて、シェリフのことも知りたいナタレ。
やっと、シェリフのことをハレンに聞いた時アキリンがやってきた。
アキリンは自重が大切だと言いにきたのだ。
ナタレはアキリンにこそ自重が必要だと思った。
自重はすべきね。
そう思ったナタレはアサナの元へと向かった。
ナタレはもっと自分を知るべき。とアキリンに言わせたから、アサナの元へと向かう。
アサナは意外と簡単に見つかったね。
部屋を出て少し進んだ階段の前の扉でうずくまっていたのね。
元気無さそうね。
言いすぎたねアキリン、アサナにね。
「お嬢さん、紅茶をどうぞね。きっと元気になるね。」
アサナが落ち込んでいたらサキちゃんがなんのために頑張ってるかわからなくなるからね。
サキちゃんのためにもう少し自分の弱さを知って誰かを頼らないとダメだからね。
前はアサナが言ってたのに自分へのオウム返しになるなんてね。わかってたことだけどね。
「結構よ、一人になりたいのよ。」
あっちにいってよ、ナタレ。
「お嬢さん、あなたはここでなにをしているのね。」
アサナはナタレを睨み付けるだけでそこに居座る。
「なにね、せっかく元気につけにきたのにね。そんな風に座ってるだけなんてサキちゃんがアサナに頼らないのは納得よね。」
アサナはナタレを睨むことをやめて下を向いた。
ナタレの目の前には涙を流し世界から隔絶することを求める子供がいるようだった。
・・・
アサナに追い討ちかけてないよね。
「昔ね、小さな子供がいましたのね。その子は言ったね。生きる意味はないです。ここで死ぬなら誰にも救いは求めないです。自分で救いを作るのでいらないですってね。アサナはどうなのね。」
サキ様のことを出すなんてずるいじゃないのよ。
私は生きている資格がないのよ。
サキちゃんに頼られないならもういる意味ないじゃないのよ。
なにも言わないなんて、追い討ちをかけちゃたみたいね。アサナがそれでいいならいいけどね。
でもね、アサナは強いよね……強いはずよね。
「アサナ、アサナはサキちゃんの生きる目標なのね。でもね、アサナは人だからね。ここにいてね、寄り添っていたいから寄り添わしてもらうねアサナ。」
ナタレはアサナの隣に座ってアサナを抱き寄せた。
「泣きたいなら泣いていればいいね。でもね、その意味を知るべきね。」
その意味ってどういうことよ、私が泣いてるのは弱さよ。
生きることには諦めることが必要なのよ。
ナタレ様はなにを思ってるのよ。
「やっと顔をあげたね。その顔ならサキちゃんに頼った方がいいかもね。最近はサキちゃんじゃなくてアサナがサキちゃんに頼ってきてたね。そんなのでね、アサナはいいのね。どうなのね。」
サキ様に頼ってた……考えて来なかった……。
見てなかった……。
自分の考えを持たずにサキちゃんに頼ってたということよね。
でもこれは言い訳よ。ただの言い訳よ。
なにやっているのよ。私はサキ様に頼るなんてよ。でもよ、それだけサキ様が成長したということよね。
でもよ、ナタレ様はサキ様はこんな私を目標だと言ってくれたわよね。いいの、こんな私がサキ様の目標で、こんなところで生きてない何て言われて泣いてるだけでいいの……。
「いいわけないわよね。」
ナタレは抱き寄せていた手をアサナから離した。
ナタレはアサナに向き直った。
「少しは元気になったようね。ならね、早くサキ様を探しにいきましょうね。」
アサナは前を向いた。
ナタレはアサナの顔を見て笑った後、涙を拭った。
「アサナ、もう一度聞くね。どうなのね。」
「ナタレ様、聞いてもいい。」
「いいけどどうしたのね。」
「ナタレ様はなんでこの国のこととシェリフのことを聞いたのよ。」
「それは……。」
なんていったらいいのよね。
あれは目に写る影ね。
ここにいる人たちは影に振り回されてるのね。
でもね、影は影ね。
影を信じること、利用することはあるべきね。
それはひとつの言葉としてね。
でもね、やってはいけないこともあるからね。それを直したいのね。
「それはね……守るためね。誰も死ぬことがないようにね。」
見守るだけが護ることじゃないからね。
励ましたり怒らないとその子は成長しないからね。
でもね、それだけだとその子は成長しないね。
守ることが正しいとは限らないからね。大変なのよね。
「ナタレは加減を知らないとダメよ。」
そうね。アサナは頼ることをもっと知るべきね。
「なにボサッとしてるのよナタレ。早くサキ様を探しに行くわよ。」
なにね、せっかく元気つけにやってきたのにね。
少し拍子抜けね。
それがアサナなのかもしれないけどね。
「そうね、サキちゃんに会いに行きましょうね。」
「なにいってるのよ、ナタレ。迎えになんて行かないわよ。連れていくのよ、ラプオビに連れていくのよ。」
いきなり酷なこと言うわねアサナ。でも、そういうところがないとアサナじゃないけどね。
「そうね、サキちゃんが望まなくても行くべきよね。」
それはわからないよ、でもよ。サキ様はラプオビに行かないと行けない気がするのよ。
そうしてナスターク帝国の街中からサキとレバナを探しに向かうアサナとナタレ。
果たして二人は見つかるのか。
「ねぇ、レバナ。」
「なにサキ。」
「ここになにをしにきたです、レバナ。」
「え、興味ないですか。喜劇。」
「興味はないです。あっちの小物の方が気になるです」
目に写る距離にアサナに似合いそうな緋色のネックレスが見えた。それをアサナにプレゼントしたいと思ったサキであった。
「そんなこと言わないでください。ここは騎士団がやってる劇場なんです。」
「それなら尚更見たくないです。」
騎士団は真面目です。喜劇はできないと思うです。
「なんでです、サキ。」
「劇を見るほど気分が落ち込んでないです。気分がいいのに劇は見たくないです。喜劇でもです。」
悲劇はもっと見たくないです。
「そう、なら小物を見に行きましょう。サキ。」
近くにあった宝石店へと向かうサキとレバナ。
「あったけどお金がないです。お金かしてもらるですかレバナ。」
「サキならいいです。ちゃんと返してくださいです。」
「はい、返すです。必ずです。」
そしてサキはアサナへのプレゼントとしてネックレスを買った。緋色の宝石が埋め込まれたネックレスを。
「本当に、見ないサキ様。騎士団の喜劇。」
「アサナとナタレさん、そしてクラノスが出るなら見たいです。それにあの二人どころかクラノスもいないのに劇なんて見たくないです。」
「そうなのですか、残念だけど仕方ありません。サキ様に来てほしい場所があります。来てくれますか。」
怪しい。こういう時に知り合って間もない人についていっていいことがある本をあまり見たことがない。
でも、レバナは大丈夫です。
「レバナ、どこに行くですか。」
返事はなかったがレバナについていくサキ。
やってきたのは町にあった神殿だった。
なにしき来たです。
「ここになにをしに来たです、レバナ。」
「中に入ったらわかるです。」
・・・
~ ~ ~ ~ ~
「姫!ご無事でしたか。」
どういうことです、姫とはいったいなんです。
レバナが剣を出したです。読んでだそうです。
どういうことです。
「私が散歩中に急いでやってくるとはどういたしましたです、タラさん。」
ありがとうございます、姫。とレバナは言った。
「は!こちらにさせ参じたのは姫の安全のためです。封印が解かれており、後は姫が必要なので賊が襲ってこないようにお守りするのが役目です、姫。」
十人の男に囲まれた姫と護衛。
「私にお任せください。」
そういって剣を抜く護衛の男。
「なぜ裸に剣を持っているのです、あなた。」
「姫の安全のためです。」
そうですか。
安全とは一体……。
「姫をもらい受ける。素直に渡してくれれば痛い思いをしない。どうだ。」
「拒否する。」
「その意味がわかっているのか。」
「この人数を相手とるのはなんとでもなる。こんな風に。」
飛んだ人たち。
「気絶してるです。」
仁王立ちで腰にてをあててるだけで、気絶したということですか。すごいです。
「隊長格の男は無事です。」
そうだけど戦うですか。逃げた方が早いです。
「ここで逃げを徹しては意味がなくなる。」
「あなた一人でなにをしているタラ。」
「サム隊長。」
「独断で姫に会いに来たのはなぜだタラ。」
「姫を護るためです。」
「今のうちにづらかります。」
囲んでいた男も含めた全員が去った。
「隊長のせいで逃がしました。」
「それどころか姫をさらわれた。」
「姫なら……。」
そこには誰もいなかった。
「侍女も仲間だったようだ。もう手はうっていたということだ。やとは解放するだけ。」
場所を変えて教会。
「申し訳ありません、姫。あなたにやってもらわなくてはならないことがあります。抵抗しないでください。」
レバナ、これはどういう状況ですか。どうやってこの場所に来たのです。
「もういいでしょう。ラポポ様。」
「ラポポ、様。どういうことです。」
「姫様、あなたは封印を解くには必要なのです。生け贄になってください。」
生け贄になるってなんです。怖いです、レバナ。
「生け贄ってなんです。そんなこと意味わからないです。」
「わからないですか、あなたにはわからなくていいのです。生け贄になるために存在するのですから。」
どうしたのです、レバナ。
「無駄話もこれくらいにして行きましょう。抵抗しないでください。生け贄の姫様。」
教会の地下にある台座へとやってきた。
「これで世界を征する力を手にできる。」
生け贄を台座へと連れてきた。
「では、姫様台座に手を置いてください。」
台座に手を置く姫。
その手に20cmの片刃のナイフを突きつける。
姫は悲鳴をあげ手から血が出た。
「力が手にはいる。」
台座から水が溢れだし硝子の剣が現れた。
「なんです、この剣はなんです。」
侍女が硝子の剣に手をかけたそのとき、さらった男が侍女を手にかけた。胸に剣が突き刺さったのだ。
「な…に…を……。」
それだけを言い残し倒れた侍女。
「あ……あ……あ……あーーー!」
言葉が出てこず、悲鳴を上げた。姫。
「姫、様。」
次の瞬間姫の手には硝子の剣が握られていた。
「許さないです。お前は私がこの手で殺すです。」
あーーー。
沈黙に耐えられない姫は叫びながら男へと剣を振るった。
剣は掠めることなく、男は消えた。
しかし、姫の暴走は止まらない、一振りするだけで街が吹き飛んだ。
そして、目的をなくした体はただ剣を振るう。
それを騎士団の隊長が防いだ。
そして、剣は邪魔者を排除するため隊長へと向かう。
隊長と硝子の剣をもった姫の一騎討ち。
睨み合う二人。
姫が一歩踏み出す、常人離れした速度で隊長へと向かう。
隊長は抜刀の構え。
姫は隊長の左肩から右胸にかけて剣を振るう。
隊長は左の腰に付けてある剣を抜刀の勢いに任せて姫の剣にかち合う。
片手であった隊長が押し負けて剣を払う。
隊長は左に動き打ち勝った姫の剣をよけた。
振るいきった姫の剣は隊長の腹部へと向かう。
隊長は正眼の構えのように打ち落とした。
エネルギー切れで速度が遅くなったため打ち落とすのに成功した。
再びこのようなことが起こらないように剣を二つに折る姫様。
これぞ、織姫。
そして、剣は力を失い織姫は城へと帰っていきました。
~ ~ 完 ~ ~