第75話 番外編脱出ゲーム②二つの丸赤と青
地獄絵図のショッピングモールの一室にて一夜明け次の日。
「それで水鳥、それどうしたの。」
水鳥が興味津々で手に持っているものを見ているためそう聞いたミドリ。
「よくわからないけどジムディーに似てるから持ってきた。」
笑顔で自慢気に見せつけながらそう言う水鳥。
「本当だジムディーに似てる。けどどう使うんだろう。」
「ジム・・・ちょっとそれ貸して!」
水鳥は最初はヤダ!といっていたが緑の迫力に負けてしぶしぶ、緑に手に持っていたものを渡した。
「これがあれば今何やっているのかわかるかもしれない。」
緑は水鳥からタブレットを手に入れた。
奪い取ったが正しいけど・・・。
五人は脱出ゲーム開始から3日目にしてやっと脱出ゲームが始まったことを知った。五人は驚きのあまり沈黙を浮かべた。
「・・・サファイアがいる場所ってどこだかわかるの。」
ミドリはサファイアの居場所について聞いた。
わかるよ。と言う緑。
「あそこはフランスだ。場所はわかるがそんなところにはいけない。」
「そう、なの……サファイアに会えればなの、会えさえすればなの。この世界の崩壊が解除してもとに戻せるかもしれないの。」
そうなの、サファイアさえいれば・・・。
「サファイアに会えるなんて……本当のこと。ミドリ姉さん。本当のことなのミドリ姉さん!」
水鳥はサファイアが本当に生きていることにまだ実感していなかったのだった。
「それは無理だと今いっただろう。」と言おうとしたがのどにつっ返した緑の夫であった。
なぜなら……。
「フランスに行くには成田に行かないとね、成田で飛行機に乗って中国に行ってイタリア行きの飛行機に乗り換えてそこからまた飛行機を乗り換えればフランスには行ける。」
申し訳なさそうな緑。
「それで問題があるの。」
「う、うん。ここからなら成田の方が近いから。成田にするとして73kmはあるから歩き続けて約16時間だから2日と半日かかるくらいかな。
フランスまでは1万3千250kmあるみたい。フランスに着くまで飛行機を乗り継いで18時間はかかる・・・。」
ヨーロッパ内しかないなんて驚き。
「4日かかるの!」早いの、一月はかかると思ったの。
「4日しかからないなんて奇跡。」
「二人共どんな世界から来たんだ。」
「・・・」
「そこは気にしないことなの。」
「ああ、そうか。」
「ミドリと水鳥がどこから来たかはともかく。どうするの成田まで2日間歩くの。」
「サファイアとかに会わずに脱出するには・・・嘘だろ。日本にないのか!最低でもヨーロッパに行くこと確定・・・。」そう言って崩れ落ちた緑の夫。
悪夢だと呟いたのだった・・・。
そんな緑の夫はともかく。
「そうなの、だからサファイアさんに会いに行くってことでいいのだけど・・・。」
どうかしたの、緑。「なにかあったの。」
「今言った通り遠いからできれば何とかしてほしい。」
・・・
2日歩くのは確かに堪えるの。
「この赤丸と青丸がなにか見に行ってから考えたいの。どう思うなの。」
「いいんじゃない。それでいいと思うよ。」
「赤と青の丸って何ミドリ姉。」
「その二つが気になるからそこに行くのもいいけど2日も歩かないといけないんだから早く成田に向かった方がいいと思うぞ。」
「・・・」
空気読んでくんないと言った顔で3人は緑の夫を睨み付けた。
地図にある2種類の印はここにいた迷彩服の二人組が持っていた地図と重ねると同じ位置を示していた。
あいつと同じ情報を持ってるってことは組織か同じ場所、つまりはここにあいつがいた可能性があるってことなの。
美郷ちゃんをあいつが抱き抱えた理由もこことなにか理由があったりするのかもしれないの・・・。
「緑、あいつが着てた迷彩服ってなにか意味があるの。」
「あれは自衛隊って言うこの国の軍隊だ、この国は敗戦国で軍事力を持つことを禁じられているが自国を守る戦力は必要だからとある変わった組織のことだ。」
「そうなの、変わった国なのね。」
「ミドリ姉どういうこと。」
「負けちゃって守る力がないことになってけど守る力を作ったってことを正当化したってことなの。」
「変わってる。」
「そういうことなの。」
変な言い回しだけどあながち間違いとも言い切れない。
「それでいいと思うけどあなたはどうする。」
緑のその発言でミドリと水鳥、そして緑が緑の夫にわかってよね、と賛同の視線を送る三人。
三人の視線にため息を吐き諦めたように緑の夫はわかったとなげやりに言った。
赤と青の2つの内赤丸の方が近いため赤丸を目指して進んでいく。
赤丸へ向かう道中、爆発する車を見つけたが素通りした。
赤丸に到着した一行。
唖然とした。
そこは商業施設の駐車場で車が停まっていた。
そこに一際目立つ物がひとつあったからだ。
それがヘリコプターである。
ヘリコプターが一機駐車場の真ん中に堂々と佇んでいた。
まず始めにミドリが口を開いた。
「あれを動かせる人はいるの。」
緑と緑の夫は首を横に無理と否定した。
あの爆発する化物が徘徊しているのにわざわざ自分の居場所を大っぴらに広げて言いわけない。
人もよってきて色々面倒事が多そうだからな。
やめておこう。
「なら。」
「いや、車だと面倒だ。やめておこう。入れる人数も決まっているし小回りも効くが人を引きそうで怖いからな。」
「そうなの。ならいいの。じゃあ青丸にも行ってみようなの。」同じ結果になると思うの。
「そうね、いきましょう。」
青丸は1キロ圏内にありすぐに着いた。
「・・・」
そこには看板といえばいいのかが1つたっているだけの建物もなにもない場所だった。
「これはどういうことなの。」
「わからない、あなたはわからない、あなたの知り合いでしょミドリ。」
「知り合いなの、でも今のこの現象はどういうことかわからないの。」
どうしてこんなことするの、サファイア。
「やっぱり成田に行ってた方がよかったんじゃないのか。」
反論できるものはいなかった。
無駄足にしか思えないのも事実だから。
「それにしてもここがなにかも気になるの。」
「ミドリ姉の言う通り、ここなにもないのはおかしい。」
ええ、気になる。でも、それだけのために命を投げ出すことじゃない。
「それだけのためにここにはいれない。車に乗って行きましょう。」
待ってなの。
「そうだな、歩いていくより危険はますが早いからな。」
待ってよ、なんでなの。
なんで諦めるの。
「なんでなの。なんでなにもないの。」
「それはここがやって来る場所だから。ジャジャーン。どう、私の登場はいいタイミングでしょ。あきらめた諦めちゃった。もう、諦めたらなにもできないのに諦めるなんて・・・。」
「・・・」言葉もない緑たち一行。
「なによ、反応がないじゃない。なら私はあなたたちを見捨てるからじゃあね。あっちの車で楽しみなさい。」
「ちょっとそれは困るわ。それより、車もバスも変わらないじゃない。」
うんうんと相づちをうつ緑の夫。
「でもこれなら大勢を運べるわよ。なによりこれなら海も渡れるからね。すごいと思わない。」
「待ってなの、待ってなの。これで海を渡れるの。そんな風には見えないの。」
「そう見えないって、でも大丈夫。もう結構大勢脱出場所へ運んだから。」
でもなの、罠にしか思えないの。
本当にあなたは大丈夫なの。
この人の言った通りタイミングがよすぎるの。
ここへやって来るタイミングが良すぎなの。
「あ!疑ってる。大丈夫ここはゲームの一つよ。」
だから不安なの。
「・・・」
どうする。と話し合いを始めた緑達。
その姿を見つめるバスの運転手のお嬢さん。
しばらく待っているとバスに連絡が入った。
まだそんな所にいるなんて、早く次へ進みなさい。命令よ。
と連絡が入った。
「もうーー、あなたたちのせいで遅いって言われたじゃない。もう私は行くから乗るの、乗らないの。もういくけどどうするか決めてちょうだい。」
「どうする。」
「どうするって言っても、こんな見え透いた罠に乗っていくのもじゃない。」
「でもなの、これなら目的の場所まで運んでくれるかもなの。」
「そうなのよね、そこが難しいところなのよね。」
「どうするべきか……。」
「パパーママー。」「ミドリ姉。」
「「乗っていかないの。」」
美郷と水鳥はバスに既に乗っており早くいこうよと待ちくたびれているようだった。
「悩んでも仕方ないもの、そうなの行ってみるの。」
「そうね、乗っていきましょう。当たって砕けろって言うものね。」
「・・・本当にこれでいくのか。」
「仕方ないじゃない。成田までいって本当にヨーロッパに行けるのかはわからないのよ。」
「これに乗っても行けるかわからないのだぞ。」
「乗るなら早くしてよー。」とハンドルに頭をおきクラクションを鳴らす運転手。
どうするべきか。
「なんなの、奥さんが乗っているのに男は乗らないの。肝っ玉の小さい人なの。こんな人おいていっていいんじゃないの緑。」
「そう、ミドリの言う通り。早く行きましょう。こんな臆病者と一緒にいたら意味ないもの。空港だっていく意味があるかわからないのに。」
「・・・」
でもこれがこれが本当に海を渡ってヨーロッパに行けるかもわからない。
なぜなら人が一人も乗っていないのは不自然だそれも大勢乗れると自分で言っておいて・・・。
「悪い緑、美郷。俺には信じきれない。すまないが行ってくれ。俺は車で成田へ向かう。」
「・・・」
「そう、わかった。じゃあね、あなた。」
「おう、またな。」
「じゃあ決まったわね。出発するわね。」
「パパが乗ってないのに行かないで。」
「パパが行かないって決めたのだから仕方ないわ。」
「でも、でも。離ればなれは嫌。お願いママ、説得して。」
「・・・ごめんね、ふがいないママであの人を乗せられなかったのは悪いと思ってるでも、乗っていくことを選択したのは美郷あなたの意思でもあるのよ。でも、パパは自分の足で行くことにしたのよ。パパの気持ちもわかってあげて。ね、美郷。」
「わかったママ。ママ。でも、でも、悲しい。パパと一緒じゃないのは嫌なのーー。う、うーパパー。」
美郷はその後も泣き続けた。