第69話 植物園合流⑤ 複製と破壊人形
「サキ様!」
パチンと音を聞きその方向を見るとサキが緑の頬を叩いた時の音だった。
「サファイア、大丈夫。」アサナはサファイアを気遣い声をかけた。主がしたことを謝罪した意味も込めてだ。
「心配するの、こっちの台詞なの。」
「そ、そうよね。」逆に気遣われるとは思わなかったアサナだった。
しかし、あいつが出てくるとは驚いたな。
久しぶりに出てきて制御できなかった。
「キンレン、大丈夫なのよね。」
怒ってるのがわかる。
「心配するのが違くないか。」
あんたにも心配されたくないわよ。
「あなたも一発叩かれた方がいいと思っただけよ。」
「なら、お願いできるか。」
迷惑かけたから、それなりのことしないとな。
「バカなこと言うんじゃないわよ。もう、正気に戻ったのよね。なら謝りなさいよ。それで許すわよ。でも、緑にはしっかりと伝えなさいよ。バカ。」
「・・・」
驚いて声が出ないキンレンであった。
時間はサファイアと緑がケンカしたのをアサナが仲裁?した後に遡る。
「はぁ、はぁ、疲れましたの。」
「緑さん、あなたの娘ではないことはあの子の反応を見てわかったです。あの子は誰です、緑さん。」
「はぁ、ちょっと水飲んでもいい。」
「いいです、でもです。教えてくださいです。」
「わかりましたの。教えますの。でも、サキのことも教えて。」
「それは嫌です。」
飲んでいた水を吹き出しそうになるほどに驚く緑。
「ゲホゲホ、そ、そうなの。・・・わかった、言いたくないならいいの。」
咳き込みながらも言いたいことをいう緑。水を飲むことはなかった。
「本当にですか。ありがとうです緑。」
と笑顔が刺さるから水を飲まなかった緑。
しかし、落ち着いたら少し水を飲んだ。
仕方ないの。サファイアのことはもう言っているから教えてあげる。
「あの子は、サファイアはそうじゃないともいえるけど娘なの。」
「どういうことです。」
「あの子は完全に人工物なの。」
「・・・ありえないです。」
「そう思うのも無理ないの。あの子を作ったのは兄さん。シゲル兄さんがあの子を作ったの。」
「・・・兄弟で子供できたですか。狂気です。」
「違うの!そうじゃなくて、私の細胞を培養して体の基本構造を作ったって兄さんは言っていたの。」
「よくわからないです。」
「冗談だからわからなくて当たり前なの。」
バカにしてるです。ムカつくです。
「あの子は、わたしのコピーなの。」
「それも冗談ですか。」
首を横にふり言った。
「ちがいますの、サファイアはコピーなの。兄さんが自分の分身を作るために作った機械人形型のコピーなの。わたしもね。」
「そうだったですか。でもです、なんで緑もロボットなんです。」
「……少し話長くなるけど聞きたいサキさん。」
「・・・話したくないなら話さなくてもいいです。」
緑の顔が曇ったのがわかり、あんまり人には言いたくない内容だと悟ったサキはそう言うのだった
「サキさんは本当に優しくていい子いい子。優しい。いい子なの、ありがとうサキさん。」
サキの思いやりの言葉に感銘を受ける緑。
優しくていい子と可愛がる緑。
そして、ありがとうサキさんと抱きつくのだった。
「ありがとうサキさん。」
「ありがとうサキさん。」
「ありがとうサキさん。」
それも何度も・・・。
なんとその数、10回。
サキはしびれを切らして緑の顔を叩くのだった。
「もう嫌です、やめてくださいです。ウザいです。やめてです。」
「もー。そんなこと言うんじゃないの、もっと抱きついてほしいなら言ってなの。」
緑がまた抱きついてこようとしたのをひっぱたいた。
うるさいです。といいながら。
・・・といったことがあったのだ。
「・・・」
回りが引いているのは言うまでもない。
「キンレンかわいそうよ……止めてきなさいよ。」
「アサナが止めてくればいいと思うぞ。やってるのはサキだから。」まだ壁に埋まってる人間にどうやってやめされろと言うのだ。
「それはどうでしょう。」
サキ様がなぜあんなに怒っているのはわかりませんが楽しそうですわよ緑。
だから、緑を止めるためにもキンレン……あなたが行くべきよ。
「あの楽しそうな二人をやめさせる気はありませんのよ。キンレン止めてきなさいよ。」
「それは御免に決まっているだろ。」
こっちでは痴話喧嘩が始まってしまった。
面白くないサファイアはフラット緑に話しかけた。
「緑御姉様、お楽しんでるのなら混ぜてなの。」
混ぜてーと夫婦の喧嘩に不用意に子供が割り込んできたような気の抜けるような出来事が起きたのだった。
「・・・」
そして、四人は正気に戻るのだった。
「フッハハハハ。」
そして、今は全員で笑っていた。
「はぁもう、何やってるのよ。本当に。」
「本当だな。」
「でもなんでサファイアだけ無事だったの。」
「なんのことなの、緑御姉様。」
「それはです、サファイアが発しているからです。」
「え!」とサキ以外全員が驚いた。
「・・・」
「理由を教えてくださいよサキ様。」
「理由知りたいの。」
「それはです。」
サファイアを膝の上に乗せて座っているサキ。
それを微笑ましく見ている緑とアサナ。
「なるほどな、それはイポメアルと同等の力があるのか。混乱するのか。」
「そうです、イポメアルと同じです。でもです、これは少しだけ違うと思うです。」
ポンポンとサファイアの頭を叩くとキノコの胞子のようなものが出てきた。
「・・・」
「そうなの、サファイアはイポメアルの毒を出すことがでもそれはサファイアの能力の一つなの。」
「他にもあるのですか。」
「ええ、サファイアはさっきいったように人形なの。……そして私も……。」
「・・・」またそれ言うですか。もういいです。
「それはどういう意味なのよ。聞き忘れてたけどどうやってそんな精密なの作れるのよ。」
「そんなのわからないの。でも兄さんは能力を持っているわけではないの。だから、よくわからないの。」
「どういうことです。アサナ。」
「それはサキ様、緑とサファイアは人形で緑のお兄さんに作られたそうですわよ。」
「へぇーそうなのですか。」
そうは見えないです。何度もそういう風な目で見てもわからないです。
そう思ってアサナを見たサキ。
「どう思ったのよサキ様は……そう思わないわよね。」
アサナはサキにそう思ったと聞きたかった。
しかし、サキを見て思った。
サキは緑が人形なんて関係ないです。そう思うです。
言っているときにアサナはサキを見て思ったのだった。
「どうしたですアサナ。
「・・・ラプオビのアウルに会いに行くのよ。」
「本気で言ってるですか。」
「会いたくもなければ世話にもなりたくないと思うかもしれないけど行こうって決めたのはサキなのよ。」
「違うです、コラル達です。」
私もそうなのだけどよ。サキ様ではないのよね……。
「アサナは反対しなかったってことです。でもです、あそこの協力がないと何もできないのは事実です……。」
サキ様……。
「サキお姉、大丈夫なの。」
「ビックリするです。」「!」
ビックリしたよ。すごいわよねサファイア。気配がしないのよ。本当驚きよ。
「ちょっと疲れたから休みたいなと思っただけです。」
「サキの言うことも一理あるな。お前ら臭うぞ。風呂に入ってこい。服は俺が洗っておく。」
「緑、キンレンは殺されたいのよね。」
「そうみたいなの、殺していいみたいなの。」
「二人とも気持ちはわかるけど物騒です。」
服をあなたに洗われるなんて最悪よ。
「御姉様、もうシバキ倒しましたの。どうしますの、この変質者。」
「よくやったわよ。でも、埋まってるのにボコボコにされているのはかわいそうよ。もっと埋めてほしくてももう埋まってるのよね。」
「アサナの言ったことを実行するのサファイア。キンレンをもっと埋めるの。」
本当にそう思わないわよね緑。
「はーい、わかったなの。やっておくの。」
穴を掘るサファイア。
壁を掘り進めるサファイア。
「サファイアさん10メートルは穴開けてないですか。なんのためにこんなに大きい穴つくってるです。」
「そうよね、これはちょっとかわいそうよね。」
「あそこまで掘られても意味ないの。」
掘るように言ったのは緑なのにそれはかわいそうと思うサキとアサナであった。
「止めなくていいですか。」
止めた方がいいけどよ。あの怯えるキンレン見るとやめておきたくなるのよね。
「いいんじゃないの、お風呂までの直線距離を作るのもいいかもしれないの。」
「あんなに掘ったらここが崩れてしまうです。」
「・・・」
顔を真っ青にしたのはキンレンだけではなかった。
「サファイアー!もうやめなさーい!」
サファイアが掘った穴に向かって叫ぶ緑。
一時間後
「まだ掘ってるわよサファイア。もっと近くに行かないときこえないわよ。」
「そもそも横に突き進んでもなにもないのに驚きです。」
「それは、ここは二人もご存じの通り空操樹の中だからな。」
「え、もうでてきたはずよ。」
「そうです、出てきたはずです。」
「出てきてないの、ここはまだ空操樹なの。」
「なら、お風呂なんて入れないってことになるわよ。」
「大丈夫さ。ここから30m向こうの壁の奥にお風呂があるはず。」
キンレンの言う方向はキンレンがいる右の方だった。
扉を開けて言われた通り歩いて向かった緑とアサナとサキ。
・・・
「あったです。」
「あったわよ。」
「こんな近くにあったなら毎日通えばよかったなの。」
「毎日入りなさいよ。それでも人の世話をする立場なのよね。なら、毎日入っておいた方が怒られないわよ。」
もう意味ないことかもしないわよね。
「入った意味なんてあるとは思わないの。」
「疲れがとれるしリラックスして集中できるのになんでよ。」
もう遅いわよね。
「はぁ、気持ちいいです。」
風呂に一人ずつ入るサキと緑とアサナだった。
キンレンを壁に埋めたままでよかったのかは不明である。




