第66話 植物園合流編② もう一人、あと一人、もう一回
屋上には、ナタレ達以外にもう一人いた。
その人は景色を眺めていた。
その人が見ている景色を眺めてナタレは思った。
窮屈なのよね、この景色ね、何でなのか気になるね。
どうしてなのかね。
そして、屋上にいたもう一人とは・・・。
「ハレン、ここでなにをしているのね。」
「ちょっと不味いことになったから教えようと思ったから伝えにきたの。」
ハレンであった。
「不味いことってなにがありました。」
「レイジェストなら、・・・。あれね、どうしてね。」
手錠もなにも着けずにこんな堂々としてるのね。
「それはいいのよ。放っておいても。」
「ナタレさんが知りたがってることはその人がいる方が都合がいいでしょ。ね、ミドリ。」
「どこにミドリがいるのね、ハレン。」
「あ、アハハハ。」
「もう、なにしてるのよ。ハレンさん。」
「仕方ないですね、はっきり申し上げますナタレ様。
私はアサナではありません。そして、レバナと行動を共にしているサキもサキ様ではありません。」
「そうよね、それで目的はなにね。」
「目的は単純です。」
「ナタレ様、サキ様、レバナ、そしてアサナ様の護衛と保護が目的です。」
護衛と保護ね。パラレとサカイルとゼウトはどうするのね。
「そうなのね。それならね、パラレとサカイル、ゼウトはどうするのね。」
「その三名のうちゼウト様は我々の保護下にあります。他の二名はもうこの国の外へと旅立ちました。」
「そうなのね。」
おいていくなんて二人ともひどいじゃないのね。
「ナタレ様、我々と来ていただけますか。」
どうすべきね。アサナとサキちゃんと合流したいけど、この国がどういった状況なのかも把握しておきたいね。
・・・二人に会うのはとうぶん諦めるね、ごめんね。
できればもう会いたかったのにね。会えなかったから仕方ないね。
「いいね、一緒に行くね。でもね、その前にレバナと会わせてね。」
「はい、仲間の一人が一緒にいますから少々お待ちください。」
つまり、クレープ食べに行った二人が来るってことよね。
「キャー!」
叫び声と共にレバナとサキちゃんらしき人がやって来たね。
「それでどうして壁から上がってきたのね。」
「こっちの方が近いです。」
そんなわけないね。レバナおろしてあげなさいね。持ったままだとかわいそうね、荷物になってるね。
「なにかわかりましたか。」
「少々まずいことになりました、です。」
この人こんなに下手だったのね。それなのに気づかなかったなんてね。
「それはもうやらなくて結構なのね。」
「どういうこと、です。」
「まぁ、そういうことです。」
「・・・」
「どういうことなのですか、ナタレさん。」
「その人はサキちゃんではないね。レバナ。」
「え、どう見てもサキさんなのに違うのですか。」
レバナ、本当に知らなかったのね。
「それよりレバナ、その姿恥ずかしく思わないのね。」
「……ありがとうございました。おろしてくださいサキさん。」
「それでね、アサナはミドリの変装というのは知ってるけどね。サキは名前なんて名前ね。」
「サキさんに変装してるのはアオイ。アオイは変装の達人で私の部下。」
「ミドリの部下のアオイね。」
サキの皮を破くときにナタレと声が被ったアオイだった。
「それでね、わざわざアサナとサキちゃんに変装した理由を教えてなのね。」
その二人が来たら王の死について教えてくれるって言ってくれたのは二人なのにね。
「それがちょっとあの二人たてこんでてまだこれないの。」
「そうなのね。」
そうなのね。まだ、ミドリの頼みごと終わらないのね。
そうは思えないけどね。
あれから一週間経ってるのね。
一週間でこれだけ回復するのね、ちょっと嬉しいのね。またね、あいつに会いたくはないね。
「それでね、後どれくらい二人は時間かかるのね。」
「後一週間だって聞いてます。」
後一週間ね、そんなに時間あるのね。
「ならね、王の死の真相を教えてね。」
「それは、また今度と言うことでナタレさん。」
「・・・そうなのね。言いたくないならね言わなくていいのね。」
「そうだ、鬼貴に言われたことあるの忘れてた。」
「なにをね。」
どうしたの、ハレンさん。
「ナタレさんには全て話しておけって言われたから教えてあげる。」
「・・・ちょっと、なにいってるの。ハレンさん。」
「いいから、いいから。落ち着いてミドリ。」
早くしてほしいね。言いたくないならね言わなくてもいいのね。
「一つだけ気になることがあるから聞いていい。それともダメ。」
「なにか気になるようなことありますかハレンさん」「なにがきになるのね。」
「どうしました。」
ハレンの気になることとはいったい。
・・・
「レイジェストどこに行ったか知らない。」
・・・
辺りを見渡すがどこにもレイジェストは見当たらない。
そして、誰もどこにいったのか見たものもいない。
「ここにいたはずね。」
しかし、一つだけ不自然な場所があった。
フェンスが一部壊れていたのだ。
もともと壊れていたのかはわからない・・・。
「逃がした。」
「逃げたのになにボーとしてるのね。早く追うのね。」
「大丈夫のはずなのに遅いから聞いたのに。わからないなら見てくる。」
「よろしく。ハレンさん。」
ミドリによろしくと言われてなに言ってると言う顔をしていることに気になったナタレ。
ミドリが見てくれると言ったつもりのハレンであった。
しかし、間違えたなら仕方ないと見てくるハレン。
ハレンが落ちていったところでミドリは口をもう一度開いた。
「わざと落としたから上がってこない理由は知ってるの。ここにいる二人を保護します、一緒に来てくれます。」
「どういうことです、ミドリさん。」
「ミドリは保護と護衛のためにここにいるそうね。」
「なぜですか。」
「そうね、ミドリ。どうしてそんなことする必要があるのね。」
「ここは、まもなく戦場になります。そのためにあなた方には避難していただきたいのです。」
それはね、この国またなにかあるってことね。
「なんでね、レバナも避難するのね。」
「それは……。」
「レバナが相手の標的ですの。」
「どういうことねレバナになにがあるのね。」
それならね、なぜレイジェストはレバナを連れて行くか殺さなかったのね。
「レバナは、この世界の鍵の一つですの。鍵は全部でいくつあるかわかりませんの。しかし、鍵である人物は私にはわかりますの。」
「それでね、この世界の鍵ってどういう意味ね。」
ならなぜね、ハレンがいなくなった時にその事いったのね。
「鍵とはある厄災を封じる人のことです。」
「そうなのね。その厄災ってなにね。」
初めて聞いたね。厄災なんてね。
「イポメタルを破壊するための鍵があなたたちということですの。」
「なぜイポメアルを破壊するのね。ミドリ。」
「これが理由ですの。」
・・・
「「え!」」
「えーー!」
「レバナ、あれ知ってなかったのね。」
「知らないですナタレさん。」
「でもね、まさかね。ミドリがずっと帽子被ってたのは気になってたけどね。」
「そうでした、帽子被り続けてました。」
「そんなに見ないでくれませんの。恥ずかしいからあまり見ないで……。」
「でもね、よく今までバレなかったよね。」
「気づかなかったです。本当になぜバレなかったのか不思議です。」
「黒犬のミドリね。可愛いねレバナ。」
ナタレさんはかわいいしか言わないです。
でもかわいいです。癒されます。
「ナタレさん、触りたいです。」
でも無理だと思います。
「無理ね、ねぇミドリ。」
「触られるのはイヤなの、見るだけなの。」
「そうよね。」「わかってたです。」
・・・
「んー。わかりました。触っても構いません。」
「触りたいけどね。」
「そんなに嫌そうにしてる人に無理強いさせたくありません。」
「本当ですか!」
ブンブン音がなるほど尻尾振ってるね、ミドリ。
「ありがとうごさいます。誰かに触られると敏感で変な声が出てしまうの。」
・・・ミドリの恥ずかしがる顔と態度に少しひいた二人。
そして、顔を見合わせて笑顔になる二人。
「この愛おしい娘を好きにできるっていうならね。」
触りたいね。
「ダメです。かわいそうです。気持ちはわかりますけど……。こんな人に今まで命令されていたと考えると腹が立ってきました。触りまくってやります。」触りたい。
「そうね。」
「ちょっと二人とも、顔がいっちゃてるけどやめてほしいの。」
「やめるなんて無理ね。」「やめられません。」
「触らせてねーー。」「触らせてもらいますーー。」
「イッヤーー!」
ああね、いいね。ずっと触り続けたいね。
モフモフ。モフモフ。
「モフモフサイコーです!この尻尾になら殺されてもいいです。ああ、もう眠くなってきました。」
「ちょっとレバナ。尻尾で寝ないで。本当にそこは不味いの。一番敏感なところだからやめてね。」
「そうね、レバナ。やめてあげるのね。」
座っているミドリの頭をすりすり撫でるナタレ。
手が当たって犬耳がつぶれて、手が離れるとピンとたつのを見て自分もやりたいとレバナが思ったのも無理はないだろう。
「ナタレさん、次変わってください。」
「いやね。これがいいね。」
「気持ちいいですの。ナタレ様さわるのうまいの。」
「ここで触られてるミドリ見てるのもいいです。」
・・・
そんな犬耳と犬の尻尾がついたミドリの頭を撫でるナタレとそれを眺めるレバナという全く理解できない状況についつい持っていたレイジェストを離してしまったハレン。
また、連れてきては離してしまうハレン。
これをもう一回やってなんとか現実を理解したハレン。
しかし、声をかけると言う行為が難しそうであった。