第55話 植物園地下その8 空操樹を守る者と封印する者
カランカラン
「本当に鍵になっています。おどろきました。」
竜人さんが蜥蜴さんだったです。
ありがとうです。
「次はどこに行くのよ緑。」
その時扉が音を立て開いた。「ありがとう。」
それ言うために。
「あれは何だったのでしょう。」
「竜人さんは一人だったです。あれは記憶の影だと思うです。」
「影……影というのはどういう意味かわからないですよ。サキ様。」
「記憶の影は影です。」
「記憶の影……一人だからってことよねサキ様。」
「それは違うと思います。」
「緑が違うと言ったのはわからないです。
影は一人で居続けたから幻覚と幻聴が聞こえるようになったです。
でもです、その幻覚はこの地下環境が誰でも見れるようにしたです。」
植物は異質であり、その場すべてを特殊空間とする。
世界を作ってしまうことも可能。
それが空操樹。
「サキのいっていることもわかります。植物がサキが言うほどに異質なことは見て取れます。」
しかし、こんなにも異質な植物がなぜここに生えているのかわからない。どういうことでありますの。
「サキ様。そんなにすごい植物があるなんて……よ。」
「アサナ知らなかったですか、あの樹はくうそうきです。」
「くうそうき……なんで空操樹がここにあるのよ。」
「空操樹、それはアサナも知っていますの。」
「空操樹はどこにでも生えることができるです。」
「界封門はここにはもあります。」「界門があるのに空操樹が生えるなんて……どうしてよ。」
「それはこの旅がはじまったことと関係あると思うです。」
「あの変な生物が起こしたといいたいのよね。サキ様は、それはありえませんよ。」
空操樹、お母様がいっていたものよね。
この国には門があるから大丈夫だと思っていたのに植物が生えてしまったことには驚いていましたよ。
お母様がよ。いえ、ナタレ様もそうでしたわよ。
不思議な事はわかりますよ。
なぜよ、門がある限り空操樹は生えないはずよ。世界を守るのが界封門であるはずよね。
・・・
もしかして……。
「そういうことじゃないわよね。」
「どうしました。アサナ。」
「サキ様の言う通りかもしれないわよ。世界が変わってしまったのよ。門が破壊されたのかもしれないわよ。」
「もうです、終わってしまうのかもしれないです。」
生き続けることがかなわないかもしれないです。
「それはないわよ。サキ様。」「サキは終わってほしいと思いますの。」
「どうしてです。」
「緑がいったでしょ。サキ様は終わりたいと思うかどうかよ。サキ様はどう思っていますのよ。」
「…どう思っているかですか。」
もう、だめだと思うです。終わってしまうです。
でもです、そうならないようにするです。
「緑、なにか気になることがあるなら言った方がいいわよ。」
「サキ、アサナ。ありがとう。ここまで来れたのは二人のお蔭だから本当に感謝してるの。でも、いいのかわからないの。」
「わからないなんてユカリに会いにここまで来たのよね、緑。サキ様をわたしもユカリに会いたいのよ。サキ様と私は違う気持ちだと思うけどよ。」
「でも、わからない。なんで二人と一緒にここまで来たのかわからないの。」
「終わらないように頑張るです。」
「サキ様……。」
今やっと答えがでるとはびっくりよ。それがサキ様の答えよね。
ここまで来た理由よねサキ様は。
サキ様がなぜここまで来たのか知りたいからここまで来たのよ。緑と同じよ。緑もここに来たことも気になるのよ。
「サキ、聞きたいことがありますの。ここまで来てよかったの。」
「わからないです。さっき言った通りです。終わらないように頑張るです。」
「サキ様。でも、よかったのよね、こういう結果になってよかったのよね。」
「わからないです。竜人さん、蜥蜴さんがなにを思っていたかわからないです…。」
「わからないの。わからないでありますの。それがわからないなんてどうかしてると思います。」
「自分の気持ちがわからない人が言うことじゃないと思うです。」
「そうかもしれません。もう、あの扉がなにを思って開いたのかも気にしません。次に行きます、次の階に進みます。」
終わってしまった。そう伝えに来たのだと思います。
しかし、終わってしまったけどそんなこと関係ありません。それがこの場所の力だというのであります。
いつかまた、復活してしまうと思います。終わりなき一人の孤独な世界が何年も……。
それを、それこそあの扉の向こうの人たちが思っていたことかもしれません。
ありがとう。そして…。お別れをいいに来ただけだと思います。
「サキ様、進みましょう。ユカリはあまり時間がないのよね。サキ様、ユカリと緑を合わせるためにここまで来たのよねサキ様。」
「そうよね、サキ様。進みましょう。」
「よかったのかはわからないです。この結果はもうわからないです。こんな力を持ってるとは思わなかったです。」
でもです!
まだです、アサナの言う通りやっぱりユカリと緑を合わせたいです。そしてです……。に会いたいです。
そうです、わがままでここまで来たです。それには先の階に進まないとです。
「はい、進むです。もう、歩きを止める意味ないです。進むしかないです。」
そうなのよ、戻れないのよ。なのに進まないなんて選択はサキ様はしないわよね。
「戻りたいわよ。」
「それ言わないでくださりません。アサナ。」
「なに言ってるです。アサナ。」
「すみません、もう言わないのでそんな怖い顔しないでくださいよ。」
顔を見合わせるサキと緑。
そんなこと気にしていないと怒っていた顔が嘘であったかのように満面の笑みを浮かべるのであった。
怖いわよ、二人ともよ。
「失言したことは謝りますからそんな笑顔になっていないで次に進みますわよ。」
「はーーいです。出立です。」「次の階へ進みます。次が最後だと嬉しく思います。そうであってください。」
鍵が連れてきた扉の前で一瞬緑は考えた。次でもうユカリに会えます待っていてください。…と。
次の扉を開いた。
次は雀の模様が描かれていた。
三人は息を呑んだ|≪のんだ≫。
まだ、続きがあるのかとまだ終わらせてくれないのかと。
そんな気持ちは扉を開けて消え去った。
「真っ暗です。」「暗くてなにも見えません。」「暗いけどあそこにあるわよ。鍵があるわよ。」
そう、鍵は暗闇の中、台座の上にスポットライトを浴びてフワフワ浮かんでいた。
「これで終わりなら楽だと思うます。しかし、雀がいません。」
それを言わないでくださいよ、緑。まだ可能性があるのよ。
「扉見つけたわよ、ここじゃないのよ。緑。」
「違います。見つけるので待っていてください。」
わかってるわよ。
「ここが扉みたい。開けます。」
「お願いしますよ、緑。」
「開けたみたいよ。どうするのよサキ様。」
「どうするってなにが言いたのですアサナ。」
「もうすぐユカリに会いますよ。そこをどうするのか決めてくださいと言っていますのよ。」
「気になるって言いたいのですか。アサナ。」
「教えてください。サキ気になります。」
「緑はユカリに聞けばいいじゃないです。早くしないといけないんです。開いたのなら早く入るです。」
扉を開くサキ。
ここは、まだやることがあるですか。まだ、やらなくてはいけないですか。
早くしないとです!
「まだです先あるみたいです。」
「えーそんなーいやよ。また数時間歩くなんて疲れるのよ。」
「それはいっていいことだとは思いません。アサナ。」
どうしたです、アサナ。アサナらしくないです。
「いいじゃないです。疲れるのに水もないんですから。ゴクン。」
「あの、サキ様それは…どこにあったのよ。」
「なに言ってるです。来る途中に買ってきたじゃないです。」
「あーあれならもう飲み終わったと思ってたわよ。」
「ほら、お二人さん行きませんと。」
「そうよ。行きますよ。サキ様。」
「はいです。」
なんでかサキ様元気がないのよ。
また鍵があったけどどういうことよ。
「ほら見つけるから待っていなさい。見つけたらここに来ます。」
「緑行きましたけどどうしたのよ。サキ様。」
「…飲み終わっちゃったからです。あとですアサナ。これ拾ったですけどなんだかわかるですか。」
「カードよね、それがなんなのかはサキ様の方がわかると思いますよ。」
「・・・、アサナそれ本気で言ってるですか。」
「わからないのよ、ナスターク帝国はナタレ様の方が詳しいほどよ、言われるまま来て言われるまま行動したのよ、指示待ちよ。
ナタレ様の犬だったのよ。そんな人にそこまで求めないでくださいよ。」
「わからないならいいです。ちょっと言い過ぎたみたいです。ごめんなさいです。」
「いやいやサキ様。謝られるほど言い過ぎてはいませんよ。サキ様、カードを聞きたかったということであってますよね。」
「そうです、でもですわからないならいいです。」
「サキ様。…なぜ緑がいるときにお聞きにならなかったのよ。緑の方がそのカードについて詳しいと思いますよ。」
そうです、アサナに聞くより緑に聞いた方がわかったかもしれないです。
でもです、これは緑に聞けるようなことではありませんです。
蜘蛛で出会ったあの人にもらったものです。緑に聞くのは違うと思ったです。
あの人何が目的なのです。
「アサナ、アサナはなぜついて来たです。」
「・・・」
「アサナ。」
「ハッハハッハハハ、ハハッハッハッハハ。君がアサナだと思っていたとは驚きよ~~ね。」
「アサナはどこにいるのです。」
「本気で君は言っているわけじゃないわよ~~ね。」
「質問に質問で返さないでアサナ気持ち悪いです。」
「君~~わかってますよ~~ね。樹影(ツーマン)に殺されるわよ~~ね。どうするのよ~~ね。」
樹影ってツーマンのこと言ってるですか。
ツーマンってもう…もう…。
「どういうことです。アサナ…どういうことです!」
「君に言えるのはそのカードを使えば一人は助けられますよ~~ね、早く目覚めなさいよ~~ね。」
目覚めるってどういうことです。目ならもう覚めてるです。アサナが目覚めてないです。
わかっていないよ~~ね、サキちゃん。自分がわからないわけじゃ……ないよ~~ね。サ~~キチャン。