【G】爆誕!
学校に着いた俺らは、まず雪佳の転入申請をするため、事務室に向かった。雪佳は転入が認められるのか不安なのだろうか、少し心配そうな顔をしていた。
そりゃそうだ。普通に考えていきなり今日から転入なんて認められない。
しかし俺がいる場合は違う!
俺は校長と仲が良いため、簡単に認められるのさ!
なぜ仲が良いかって?この話は長くなるからまた今度にしよう。今は早く申請を済ませて雪佳と教室に行き、イチャイチャ…いや、お勉強をしたい。しかし両親が死んで「キャキャキャキャキャ」言っていた雪佳でも普通の感情を持っているんだな。
「大丈夫、心配する事は無いよ。俺に任せて!」
「う、うん。ちょっと不安だけど昇くんに任せるね!」
「任されました!」
そう会話を交わし、俺らは事務室の前にたどり着いた。
(さあ、いよいよ始まるんだ。)
そう思い、事務室に入った。
「失礼します。1年6組下山昇です。転入の申請をしたいんですけど。」
「は?いきなり君は何を…?」
時が止まった。
予想もしていなかった返答が返ってきたからだ。返答したのは事務員である倶来慎雅である。
「いや、だから、俺の隣にいる彼女、城所雪佳の転入申請をしに来ました。」
「初めまして。これからお世話になる城所雪佳です。よろしくお願いします。」
俺は倶来の勘違いだと信じ、もう一度聞き返し、雪佳も自ら名乗った。
「いや、いきなり転入って言われてもね、転入試験とかいろいろあるでしょう。城所さんだっけ?転入とかそんな話知らないんだけど。」
勘違いではなかった。
しかしなぜ…?俺は校長と仲良しで何でも受け入れられるはずだぞ…?
「え…、あ…、え…?ピギャーピギャーピギャーピギャーピギャー…………。」
雪佳はどうしたらよいのか、わからなくなっていた。
「雪佳!落ち着け!大丈夫だ!きっと何かの間違いだからきっと一緒に居られるよ!」
「あ…あ…あ…ああああああああああああああああああああああああああ!」
雪佳は涙を流しながら奇声を発し制御不能になっていた。
まずいまずいまずい!俺もどうすればいいのかわからなくなってきた。約1年間過ごして来たが、希望が通らなかったのは初めてだ。
「あの、ここ学校ですし、もうすぐ着席時間なので教室に行き早く着席して下さい。雪佳さんについてはお帰り下さい。」
うざい、こいつうざい。もうこいつの呼び名は苗字が倶来だし【G】でいいだろうか。いや、決まりだ。
「うるせぇG!こっちは真剣に悩んんで考えているのにうるさいんだよ!貴様事務員なんだよな?こっちは学力学年1位なんだよ。次期生徒会長も期待せれているんだよ。貴様はどうなんだ?いや、聞くまでもないな。器の小さい人間は身分も小さいんだよ!俺は夜一人ぼっちで泣いていた雪佳を助けてあげたんだよ。貴様はそんな雪佳をまた一人ぼっちにしようとしているんだ!」
俺はいつの間にかGに向かって怒鳴ってた。
(あぁ…もう生徒会長の座は無くなったな。学校に居れるかも危ない…)
Gは驚いたような顔をしてただ立ち尽くしていた。
雪佳は俺の怒鳴り声で驚いたためか、正常の雪佳に戻っていた。
「昇くん、ありがとう。私も自分の力で努力しないとね。」
雪佳はそう言い、Gの方へ近づいて行った。
「倶来先生、いや、私は生徒として認められなかったので倶来さん、お話があります。これで最後にしましょう。ここでは話しづらい内容なのでどこか2人っきりになれるところへ行きましょう。」
「わ、分かりました。最後の話なら聞いてあげます。私も暇ではないので早く行きましょう。下山さん、あなたはここで待っていなさい。処分の手続きをします。」
「ああ、そうかい。勝手にしろ。貴様いつか殺す。」
「昇くん、そんなこと言っちゃだめだよ。じゃあ、また後で。」
「う、うん…。」
そう言って雪佳はGと共に事務室を出ていった。
数分後、雪佳たちが帰って来た。
しかし、そこには一人増えていた。校長だった。
「校長、お話があります!雪佳を転入させてあげてください!」
俺は校長に頼み込んだ。
「まあまあ、落ち着きなさい、昇君。事情はちゃんと雪佳ちゃんから聞いているよ。大丈夫だ。転入を認めよう。」
校長は雪佳の転入を認めてくれた。
「あ、ありがとうございます!」
一方、Gはずっとこっちを睨んでいた。
「校長、倶来先生の事なんですけど…。」
「大丈夫、私は校長だ。あとの事は任せなさい。」
少し不安だったが、頼りになる校長だ。校長の言葉に甘えてあとは校長に任せる事にした。
「分かりました、校長。あとはお願いします。」
「はい、任されました。さあさあ、もうすぐ授業の始まる時間だ。二人は早く教室に行きなさい。二人とも同じ教室にしておいたよ。」
「「はい!ありがとうございます!」」
俺たちは二人で校長に礼を言い、教室へと向かった。
次こそ本当に始まるんだ、俺たちの学校生活が。
「倶来先生、嫌な役やらしてしまってすまなかったね。しかしあの子たちには常識と言うものを知ってもらいたいのだよ。」
「いや、構わないよ校長。必ず誰かがやらないといけない役だからね。愛する生徒の為なら喜んで悪役になろう。」
「恩に着るよ、倶来先生。」
「さあ、これが新しい次の職場だよ。次は小学校の教頭先生として、その生徒愛を小学生たちに注いであげてくれ。」
「分かったよ、校長。今までありがとう。校長、そして降陽高校、さよなら…。」
そうして俺たちに歯向かった倶来慎雅、通称Gは降陽高校から姿を消したのであった。