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11月3日 春香の見学

私はまた、屋上に来ていた。

相変わらず、あの数学担任ひとは甘い。

100近くある階段を上りきると、そこは冬が近づいた場所だった。

…というか、冬だった。


「んー…。」


スケッチブックを持ってきたものの、なんだか描く気がしなかった。

寒い、っていうのも理由の一つかもしれないけど…

この風景を、私の手で絵にするのはもったいなかった。

夜に此処にこれるのなら、此処で絵を描いてみたい。

冬は星が綺麗に見える、最高の季節。

これくらい空に近ければ、それだけいいものが描けると想うんだけどなぁ…。


「…星…か。」


お母さん、お父さんも星になっているのかな?

お婆ちゃんがいってた。

死んでしまった人は皆、星になって、生きている人を見守るんだよって。

…。

星は確かに綺麗で、小さくて、はかない。

一生が燃えているだけなのに、一生懸命光り輝いて、終わりまで輝いていようとする。

生きることに、一途なんだなぁ、って、よく想う。

人間も、同じように生きられればなって想う時もある。

でも、そんな人生を送る人なんて、いないんだって、想う時もある。

…そんなことを考えてる私って、ホントになんか可笑しい。


と、かなり下から声がした。


「ひーめかセンパァーイ!!」


…。

この声で、大体検討は着いた。

風向きを、その声一つで変えられる…。

そんな人、そうそういない。

起き上がって、柵越しに下を見る。

…やっぱりな。

ふわふわにカールされた茶色い髪。(ちなみに遺伝らしい。)

小さくて、可愛くて、それでいて間抜けっぽい。

クリッとした瞳と、キュッと結んだ口。合わせるようにレース付きのワンピース。

…間違えない。春香に違いない。

春香意外にこんな人がいたら、是非ともお目に掛かりたい。


「春香ー。どうしたの?

 ここ、中学校だよ?」


もはや叫んでいるような声で、話しかけた。

何しろ、8階だ。

…まさか、場所を間違えた、ってことはないだろう…。

春香は私を見ると、目をバッと輝かせた。

当てずっぽうで呼びかけたみたい…。


「中学校見学ですっ!

 絶対っ、先輩と同じここ、入りますからっ!」


「難しいよっ、ここはっ!」


特待生&学費免除で入っている、私が言うのもなんだが…。

ここ、市立月代学園は、世界的に超一流。

寄付金トップ、偏差値80以上という、最高レベルの学校なのだ。


ちなみに、何故此処に満がいられるのかは不明だ。


そんで、寮生活というのは、ある一定の生徒だけが使える。

私は特待生、っていうのも理由の一つだけど、

それ以上に、親がいないって言うのが一番の理由だった。


まぁ、春香なら、親は金持ちだし、成績も上のほうだった…気がするから、

これないって、訳ではないと想うけど…。

流行語で言えば、『K・Y』だからなぁ。(古い)

クラスの中で、ううん、学校の中で一番の偉業だったからなぁ…。

面談で落ちなければいいけど…。


下で小さくくしゃみの音がした。

…寒いよね。その格好じゃぁ…。


「待ってて、先生に聞いてみるっ!」


呼びかけると、春香はすぐに顔を上げ、


「……はいっ!」


と、威勢良く返事をした。

…やっぱ、大丈夫だったかなぁ…。


春香が職員玄関の方に向かったのを見て、方向転換。

1階までの長い道のりを、一気に駆け下りた。



* * *



「はぁ、あったかですぅ。」


「はい、紅茶。」


「あ、ありがとうございますっ!」


春香は、紅茶の入ったコップを受け取ると、

そのまま口に持っていった。


「あーっつ!」


「…。」


はい。

ゆっくり飲みなさい。火傷します。


ここは応接間。

私は特別に、授業中だけどここにいる。

まぁ、引き入れたのは元々私だしね。

まず、この子の場合は、先生では手がつかないと想うし。

うん。


「あれ?姫香先輩は、授業でなくてもいいんですか?

 もうすぐテストの季節ですよ?」


「ん?あ、それは全然余裕ー。

 とゆうか、春香。そっちは平気なの?学年末テスト。」


「ギクゥッ!」


効果音をわざわざ口に出す、春香のおもしろいところ。

いつ聞いても飽きない。


…と、まぁ、

こんな感じでしゃべってた。


と、おなじみのあの音。



キィ〜ンコ〜ォ〜ン〜カァ〜ンコォ〜ン〜♪



「あ、終わった。

 春香も、もう帰ったら?」


と、扉に手をかける。


「先生には私から言っとくね。

 あ、上着、忘れないでね。」


そういって、部屋を出たは…ず。





バタンッッ!



「………!?

 どうかしたの?春香?」


…びっくりしたぁ。

春香が扉を押し閉めた。

こんなにかわいい格好して、力は恐ろしいもんねぇ…。

その顔でまず、こんな子だとは、誰も思わない…。


「…はっ、すいませんっ!驚かすつもりじゃなかったんですっ!!」


「わ、判った……てか判ってるからっ。

 とりあえず落ち着いて。」


結構な説得(?)の末、春香は落ち着いた。

…いや、疲れた。

走り出すと止まらないってのがよくわかる。


「で、なに?」


「えぇっと…。

 …なんでしたっけ?」


「…。

 私に聞かれても…。」


うん…まぁ、ここが春香のいいところだからね。

しょうがない…としよう。


その後、頭を抱えて唸ってる春香を帰して、

私も教室に戻った。

…何となく、変な気分だった。



* * *

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