パーティからの追放系がいま流行ってるみたいだけど、これって婚約破棄と同じ構造じゃね?
誰かがどこかで書いてるかもしれないので、この発想はべつにたいした字数をかけるべきではないだろうけれども。
いま、追放系が流行ってる。
追放系というのは、まず初手で、パーティを追放される系列の話だ。
よくありがちな話の流れとしては
1、唐突なクビ宣告
2、仲間からの罵倒
3、実は主人公最強だった。あるいは数行で最強に。
4、仲間たちをざまぁする
5、新たな美少女をゲット。栄光の日々へ。
こんな感じだ。
それで、ファンタジー恋愛のジャンルでいまもなお権勢をふるっているのが婚約破棄ものであるが、
話の流れが追放系と似ているように思う。
1、唐突な婚約破棄宣言
2、相手方王子のとりまきあたりからの罵倒
3、実は主人公最強だった。あるいは数行で最強に。
4、相手方王子と新婚約者をざまぁする。
5、誰かから見初められる。栄光の日々へ。
うーん。真理に到達してしまった……。
どちらが先かというと、おそらくは婚約破棄なので、婚約破棄系統の発想を男性的なチートハーレムものに適用すると追放系になるのだろう。
さて――、しかしここで終わってしまうとなんとも無意味な話なので、ここではファンタジー恋愛の発想を、男性側の論理に適用させて、他に何か方策がないかを探ってみよう。
例えば逆の発想として、追放されるのが女の子だったらどうだろうか。
「おまえはクビだ」
「え? なんで、わたし美少女なのに」
「そうだな。おまえは美少女だ。けどな。美少年ばかりのこのパーティで、おまえみたいな美少女を入れていると他の女の子が寄ってこなくなるだろ」
「そうだそうだ」
「この勘違い逆ハー野郎」
「野郎じゃないわよ!」
そんな出だしを考えてみたが……、なんだこの違和感。
こういってはなんだが、追放系は寝取られ属性も加味されているのだろう。
寝取られ属性とは付き合ってるないし付き合ってはいないが恋慕の情を抱いている相手が誰かに寝取られることを意味する。
属性的には、マゾ的に快感を覚えたりもするのだが、なろう的には単純に復讐するための前段階でしかないようにも思う。
これは婚約破棄とも一致する。
さて、そうした段階で考えたときに、少女のほうが遥かに『所有物』としての側面が大きいのだろう。言うまでもないことだが、男は少女を所有したいと考えている。奴隷少女とかがその最たる例だ。
ゆえに――、追放系では、男が追放される場面が多い。
歯にモノを着せぬ言い方をすれば、男どうしの女の取り合いに過ぎないからだ。
逆に女主人公追放系をもし書くとするならば、女だらけのパーティで男が少数という構成にするほかないだろう。
それともうひとつ。
追放された後の主人公というものを考えてみたとき、これは巨視的には恋愛脳からの脱却というチャンスでもある。
婚約破棄後に破棄された令嬢がまた他の恋に殉じるか、それとも農業を始めるかはわりとその後の展開次第である。
基本的には追放も婚約も、それがダメージであるという価値観があるから、そういう描写をするのであるから、恋愛脳からの脱却はそれなりに難しくはあろうか。
例えば、追放された後に、ぼっちで農業ライフとかもいいかもしれないが、やはり美少女がセットでついてくる理由としては、ダメージからの回復に心地よさを感じるからだろう。
ここまで、追放系と婚約破棄の似ている点を言ってきたが、違いがあるとすれば、男女の視点の差というのもあるけれども、大きくはおそらく恋愛に対する比重だろうか。追放系でその後にガッツリ恋愛を書いた作品というのはおそらくない。というか、ハイファンに位置する作品というか、チートハーレム系は恋愛という要素がごくうすくて、なんとなく無条件に慕ってくれるような、そういう感覚でしかないので、なんというか、すごく都合のいい女状態になっている。
婚約破棄はやはり恋愛がメインの作品が多い気がする。
そうすると、メインとサブセットの差だろうか。メインとして恋愛が置かれるかどうか。これが婚約破棄を書くか追放系を書くかの差なのだと思う。