何か出会ったわ
俺と姉さんはこれからの旅に備えて準備をすることにした。
えーっと、最低限の物を持っていくとなると……。
服じゃろ? ナイフじゃろ? 剣とかは最悪、要らないな。
あれ? というか待てよ。
これ、旅専用のスキル作っちまえば用意なんていらなくね?
おぉ、ナイスアイディアやな。
「『能力創造』発動。」
実は使うのは今日が初めてで起動の仕方すら分からないがこれで合っているのだろうか。
しばらく待ってみるが、特に何も起こらない。
んー、起動は特に必要ないのかなぁ。
ならば。
「えーっと、旅だから分かりやすく『旅行』でいっか。『旅行』作成。」
『スキルの創造を確認しました。』
『スキル『旅行』を修得しました。』
そんなアナウンスが流れる。
お、作れた作れた。えーっと、イメージ的には旅に必要な物とかを作り出してくれるものなんだが……。
試しに使ってみるかと俺は服を呼んでみる。
すると、手のひらに服とズボンがポンッと現れる。
動きやすくするためか、豪華な装飾はない。何かド○ゴン○エス○の村人が着てそうな服だった。
「後は手荷物を減らすために『魔法箱』作成。」
『スキル『魔法箱』を修得しました。』
お、いいねぇ。まぁ、マジックボックスやな。
俺は手に持っていた服を『魔法箱』に仕舞う。
これまた手から服が無くなる。特に動きに問題はない。
「よっし、つか便利すぎてやばい。」
『能力創造』様様ですぜぇ……。ありがたやありがたや。
頭の上で手を合わせて拝んでいると、扉がコンコンッとノックされる。
「レオ君、準備できた~?」
そして、ひょこっと姉さんが現れる。
「うん、もう負ける気がしない。」
「? 荷物は~?」
首を傾げる姉さん。
ふっふっふっ、我にはもう荷物の心配はいらぬのだよ。
「安心して姉さん。俺は旅のプロフェッショナルになった。」
「どういうこと??」
頭の上のクエスチョンマークを更に増やす姉さん。
「大丈夫ってこと。さ、出発しよ?」
「あ、うん。そうだね~。」
俺の言葉に姉さんは頷く。
多少、疑問に思っても別に問題ないかと思ってくれる姉さんちょーかわいい。
あ、俺はブラコンじゃないです。
◆◆◆
『ガアアアアアアアアアアッ!!』
口から涎を撒き散らしながら叫ぶ獰猛な虎さんと対峙してるけど質問ある?
ま、そんなことはさておき。
これまでの回想的には、家を出発する、森に入る、俺が何かを踏む、虎さん激怒。の最後のところやね。
「うへぇ……噛まれたら痛そう。」
「そうだね~。」
こんな時でも俺達、姉弟特に姉さんはいつも通りにほのぼのしている。
多分、アニメとかだったら周りにぽわぽわ~とかの描写がされてるに違いない。
虎さんは俺達が怖がらないのが面白くないのか更に声を上げる。
「だまらっしゃいッ!! 『竜化』」
「キャウンッ!?」
俺の右腕が光り、竜の手へと変化してそれで虎さんの顔をぶん殴る。
本来は全身の全てが竜に変わるのだが、それでは使い勝手がよろしくないため俺は体の一部分、今回で言えば右腕だが、だけにすることに成功した。
殴られた虎さんはあまりの痛さからか俺達を置いて森の奥へと逃げていった。
あ、冒険者になる時の手土産にと思ったんだがなぁ……。
ま、いっか。
「レオ君は強いね~。」
姉さんが俺の顔を胸に沈める。
名状しがたい感触と暖かさを感じるそうかここに理想郷があったのか。
といっても、窒息を理由にホントに理想郷(天国)に行きかねないので俺は姉さんの腕を二回ぺちぺちとして降参を告げる。
力ずくで出てもいいのだが、何か寂しそうな顔をされるし、何よりも力が強くて離れられない。
そして、俺の体が強張ってしまい普通に動けないのも理由だ。
決してもう少し味わいたいなどと愚かな考えはしていない。因みに俺は愚か者。つまりそう言うことだ。
「え~、もう少し~。」
「むぐッ!? むぐぐ~ッ!!」
更に力を強めて俺を沈める姉さん。
何とか喋ろうと試みるが無理だった。悲しい。後、苦しい。
「あはは~くすぐったいよレオ君。」
「む、むぐ……。」
あははと笑うが力は緩めない。
この辺りはさすがといったところか。
今日はこのぐらいにしてやらぁ。俺はそう思って姉さんの胸の中でソッと意識を落とすのであった。
あ、姉さんとの戦いに俺は勝ったことがないくらい姉さんは強いよ。
◆◆◆◆◆
意識を落とされてから暫くして俺達は森を突破した。
何度か強そうな魔物と出会ったため手土産はバッチリだ。
魔物は『魔法箱』のなかに入っている。
この森の中ではスライムやゴブリンを代表とする雑魚雑魚オールスターズは出てこなかった。
多分だけどかなり強い系の魔物ちゃん達だと思うんだよね。
俺が久々に視界を見渡せる喜びに心を踊らせていると、何かが目に入った。
「ん?」
砂ぼこりを撒き散らしながらこちらに向かってくる物。
見た感じ魔物ではなさそう。なんやろ、俺を迎えに上がった馬車とか?
今、踏み潰しに来たんだよとかいったやつッ!! 後で語ろうじゃねーか。
で、こっちに向かってくるのはどうやら馬車らしくみるみる俺達との距離を縮める。
やがて、俺達の近くでそれは止まり、中から鎧を着た女性とローブに身を包んだ女性とが下りてくる。
さすがは異世界。髪の色がピンクに青ですか。
「あなた達ッ!? 怪我はないッ!?」
開幕一発目でそんなことを言われて俺は戸惑う。
姉さんはあらあら~と言いながらニコニコしている。流石姉さん全く動じないね。
と、それより焦ってる理由が気になるな。
「自分らは怪我はないですが、何かあったんですか?」
「何かあったも何もこの森は第一級危険区域なのよッ!! そんなところにいるから慌てて来たんじゃないッ!!」
鎧を着てる女性が大声をあげて俺達に説明する。
大丈夫、ここ俺んちがある所やから。キリッ。
とは言えないので知らなかったで押し通すことに決める。
「いや~、ちょっと知らなかったですね~。申し訳ないっす。」
「知らなかったって……。」
「無事で何より。」
ローブに身を包んだ少しお胸が残念な女性が告げる。
「……? 何故が今あなたに明確な殺意が湧いた……。」
「何をやってるのマーシャ?」
こういう思いっていうのは女性に伝わりやすいらしい。
よく覚えとこう。別にびびってねーしッ!! ちょっと怖かっただけだしッ!!
「まぁ、いいわ。それよりも早く乗ってッ!! 森の中の魔物が出てくる前にッ!!」
「それは難しいんじゃないかしら~?」
どうやら森の魔物と戦いたくないらしいが、姉さんは何かに気づいたようだ。
「難しいって何……が……。」
鎧を着た女性、名前聞いてねーや、が俺達の後ろを見て驚愕の表情を浮かべる。
うーむ、これは……。
「あなたは今から百面相でもやるのか?」
「やらないわよッ!! て、そんな場合じゃなくて後ろよ後ろッ!!」
俺達に会ってからどうも声を張り上げているな。
喉が壊れないか心配だぜ。あ、えーと、それよりも後ろだったか。
俺はスッと後ろをむくと、首が三つもある鳥さんが俺達を見下ろしていた。
「Sランクのフラスベルクじゃない……ッ!!」
鎧系女子さんがそう言って焦りの色を顔に浮かべる。
横のえーっとマールク? いや、マーシャさんは既に戦闘モードに入っている。
因みに俺達、姉弟はというと。
「丸焼きにすると美味しそう。」
「大きいから食べきれるかしら~?」
こんな会話を展開していた。
やってきた二人は俺達の会話を聞いてポカンとしていた。
あ、なんか緊張感が一気になくなったった。
「姉さん、ここは俺に任せてくれない?」
「うん、いいよ~。」
姉さんは俺のやりたいことが分かったのか俺の後ろにいる二人を連れて少し離れる。
鳥さんは三つある頭を使って俺をジロリと睨んでいた。
ふふ、捕食者を気取っているつもりなんだろうが。
「それは間違いだ。『竜化』」
俺の体が輝き出す。
そして、どんどんと西洋の竜の形にと光の塊は変化を始めていく。
大まかな大きさに変化した後、細部の形状を形成し、やがて輝きはなくなる。
『オォォォォォォォォォオオオオオオオオオオッ!!』
俺は誕生の咆哮を上げる。
その声は世界中に轟き、人々の記憶に刻まれるのは別のおはなち。
俺の体は全体的に赤色というか朱色というか紅色というかとりあえずそんな感じ。
鋭い形状の大きな牙に、全てを切り裂くといわんばかりの爪、そして、全身を覆う鱗。
俺の体はこんな感じに変化してる。
あ、大きさ的には今回は鳥さんを二割ぐらい大きくした感じ。
本来ならこれよりも大きいが今回は止めておく。
姉さんだけならまだしも普通の人がいるからね。
俺はギロリと鳥さんを睨む。
鳥さんは俺のいきなりの変化に戸惑っていたが、闘争本能が強いらしく俺を睨み返していた。
さて、調理開始だぜッ!!
『ガアァッ!!』
口をガバッと開けて、炎を吹き出す。
鳥さんは避けようとしたらしいが間に合わず俺の炎をくらう。
『ギャアッ!?』
俺は怯んだ鳥さんに飛びかかり、足の爪を使って両側の頭を落とす。
そして、続けざまに再び炎、今回は少し強めの炎を浴びせる。
これにはひとたまりもなかったらしく鳥さんは鳥の丸焼きになりいい臭いを漂わせた。
◆◆◆◆◆
「……あんた何者なの?」
俺が竜化から戻って第一に言われた一言だった。
だが、気にしない。
「それより君の名前は?」
そういえばと俺はなけなしの根性を使って名前を聞く。
いかんせん、女性に対する免疫がないし作り上げることも出来なかった。
「私? 私はララ・イーリクリズ。冒険者をやってるわ。」
「マーシャ・ヴィローネ。魔法使い。」
あ、俺らも名乗ってなかったか。
「先に言うべきだったな。俺はレオン・ハート。種族は竜人。」
「エレナ・ハートよ~。よろしく~。」
二人は少し考えた後、もう一度聞き返す。
「え? ハート?」
「うん、ハート。」
お互いにクエスチョンマークを量産していたためヴィローネが細くしてくれた。
……細く? 違う違う、捕捉だよ。捕捉。
「ハートは龍神様の家名なの。」
「そうだったんだ。因みにその龍神様の名前は?」
俺の問いに答えてくれるヴィローネ。
まぁ、予想が正しければ……。
「グニラ・ハート様なの。」
「あ、それわしの父さんや。」
「へ~龍神だったんだね~。」
俺はやっぱりと思い、姉さんは相変わらずのマイペースぶりだ。
「「えぇぇぇぇえええええええッ!!?」」
大人しそうなヴィローネも今回はイーリクリズと一緒に叫んでた。
仲がいいなと思いました。
毎日、投稿三日目ッ!!ドンドンパフパフーッ!!
どうも、作者です。
ようやく最強要素を出せました。最強っていうかチートっていうか。
今回出てきた女の子二人はヒロインです。
今後の活躍に期待ですかね(^_-)
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でわでわ~。(^ω^ )