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6話 突入

「さて、行きますか」

 街の路地裏に二人の黒スーツがの男二人が地下へと続く通路を塞ぐように立ち尽くしていた。それを少し離れた位置から見ていた実原達四人はそれに向かって足を踏み出していく。

「予め確認しておくけど、国沢くんはここの中がどんなものか知ってるんだよね……?」

「知ってると言っても自分が行ったのは普通の一般人の入れるエリアだけです。ユグドラシルの入れるVIPルームには入れていません」

「フェンリルがいるのだとしたらどう考えてもそちらの方でしょうね」

 染川、お前は黙ってろ。

「……今回はユグドラシルとして入るので、チェックを抜けないといけません」

「それはまぁ、私達ならなんとかなるよ」

 そう言って実原達は立ち尽くす男二人に近づいていく。

「……」

 男二人は実原たちの方をまじまじと見てから、片方がこちらに近づいてくる。

「すみません、こちらに用でしょうか……」

「えっと―――」

「VIPルームに入りたいのですが」

 戸惑っていた実原を押しのけて割り込んできたのは国沢だった。

「……少し失礼しても?」

 そう言って男は懐から計測器のような機械を取り出す。そしてその計測器のような機械から放たれた赤い光が四人を包む。

「……」

 計測器には4つの数字が表記される。

「少し低いような気もするが、規定内か」

「案内します、こちらへどうぞ」

 あの計測器みたいなのが魔力濃度数を図る機械なのかな。そんな風に考えながら実原は地下へと続く階段に足を踏み入れていく。降りてしばらく通路を歩いていくと、カジノやダイス。ギャンブルでよく見れる光景が一面を覆い尽くす。

「これがカジノですか……私初めて見ました」

 小さく言葉をこぼしたのは根谷だった。

「安心しろ、俺もだ」

「……」

 お前ら未成年なんだから当たり前だろ。俺もだが。

「実原しょ……」

「……」

 国沢は小さくため息をつく。

「実原様、例の件残り15分ほどなので時間確認しながら捜索の方お願いしますね」

「うん、わかってる」

「こちらです」

 騒がしい音が鳴り響く中に一つ静かに佇む扉を男が開く。そこは先ほどの明るい雰囲気とは全く違い暗い空間に赤い照明で照らされているだけで視界はかなり見えにくかった。

「これ大丈夫ですかね、色々と……」

「とにかく上の指示を待とう」




「……」

「そうイライラするのやめましょう、香椎少佐」

 カジノの会場から少し離れた場所で待機していた香椎が腕を組みながら指をとんとん鳴らす。それに対して気を遣って近づいてきたのは黒いボブヘアーに黒いセーラー服、小柄な体型をした少女だった。体つきはまだ成熟した女性とは程遠く、顔立ちも幼さが残っており未成年であることが見た目ではっきりとわかった。

「雪村……」

 雪村(ゆきむら)(はる)。基本的には魔導軍は18歳からしか入隊することが出来ないが、唯一16歳から入隊することの出来る特権を持つ人間が存在する。それが聖字(ルーン)を持った人間である。そして雪村はその聖字(ルーン)を持ち、16歳という若さで魔導軍に入隊した少女である。

「丹羽少佐もそれが最善策だと―――」

「私が腹を立てているのは丹羽ではない」

「え……?」

 不意をつかれたように雪村はキョトンとした表情を見せる。

「国沢だ」

「国沢中尉、今回の作戦を提案した?」

「ああ……」

 香椎は小さくため息をつく。

「あいつはあの松井夕希を超える魔導兵を目指している。だから功績を欲しているんだよ」

「なるほど、松井大佐を……ですか」

「入隊から四年、22歳で大佐になった彼を超えたものは彼を超えたものはこの四年誰もいない。だからこそ彼を越えようとするものが未だに絶えない」

「それで亡くなっているひとしかいないのも、現実ですけどね……」

 香椎は雪村の言葉に答えることはなく、二人の思考をかき消したのは丹羽の声だった。

「時間だ、突入するぞ!」

 丹羽の声と同時に待機していた魔導兵全員が持っていた魔導器を構える。

「作戦通り谷口班は一般エリアの制圧を、私の班と香椎で実原達のいるであろうVIPルームへ突入する」

「了解!」

「……」

 香椎は近くに置いていた鉈状の魔導器、鬼殺しを手にすれば少しだけ雪村の方に視線をやる。

「今は作戦に集中しよう、実原たちを早く助けないと……!」




「そろそろ作戦ですね、先輩……」

「そうだね……ってあれ、国沢くんは?」

 そう言って辺りを見渡すと根谷と染川しかおらず、国沢の姿は消えていた。

「あいつ、作戦中にどこへ……」

「仕方ないよ、このまま作戦を続行するしか」

 実原は右ポケットに隠し持っていた刀の柄の部分だけの魔導器を取り出す。

「他のみんなは……?」

「私たちにはあれがあるので大丈夫です」

 あれ、魔導器なしに魔法を行使する力、偽聖字(アウラ)のことだ。

「じゃあいくね」

 実原は魔導器を持たない方の手でスーツの懐から手帳のようなものを出す。

「魔導兵です、抵抗しなければ危害は加えません!」

 実原がそう叫んだ瞬間、辺りにいた客が騒ぎ始めた。

「魔導兵だと、ふざけるな!」

「ここは安全じゃなかったの!?」

「俺は関係ない!返してくれ!」

 色んな叫び声が室内をこだまする。

「……」

 黒服の男が無言で実原に向かって拳を振るってくる。だがその拳が実原に届くことはなく、黒服の男は体から血を吹き出しながら倒れる。

「根谷さんの偽聖字(アウラ)、相変わらず頼りになるね」

 男の息の根を止めたのは根谷の腰辺りから飛び出す先端部分に刃物のようなものの付いた尻尾だった。

尻尾(ジ・アナザーテイル)です」

「ふんっ!」

 根谷に向かってもう一人の男が向かってきたが、それを染革が殴り飛ばす。

「大丈夫か、根谷」

「ありがとう、染川くん」

「さて」

 染川の背中から歪な音と同時に翼と呼ぶのか、黒い塊のようなものが姿を現す。

「これを見てまだ抵抗するのなら、俺の弾丸翼(ジ・アナザーウイング)の餌食になってもらうことになるが……?」


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