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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
三章 多種多様精霊界巡会記
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三十五話 無人の村

ロードたちが村を去り、村人たちは早々に追うのを諦めた。

別に本気で殺そうとした訳ではない。

ただ、やりようのない怒りをどこかにぶちまけたかったのだ。

家族が死に、友人が死に、恋人が死に、ペットが死んだその悲しみを

見ず知らずの余所者に八つ当たりしたかったのだ。


「バカ共! 早く無礼共を殺し、エルフを捕らえよ!!」


太った貴族は村人に指示するが、もうその声を聞く者は誰もいない。

ロードたちが去った後の現実を呆然とただ受け止める。そんな時間だった。


「使えない愚民共が! 我が兵は残っておらんのか!?

執事は!? 御者でもよい! 誰か! 誰かおらんか!?」


誰もその問いに答えない。

皆、死に絶え肉片となり散らばった。

エナとなり散っていった。


「くそっ! 全部、全部奴らのせいだ!!

誰でもいい奴らの一人でも殺してやる!!」


刃の欠けた木の小斧を手に、岩の壁をよじ登るも

急勾配から転がり落ち、小斧が地面を滑ってゆく。

男は自身の重い身体が仇となり足を捻った。


「痛っ……くそ……なんでこの私がこんな無様な事に……」


虚しく呟くと、いつの間にか目の前に一人の大男が立っていた。

百八十センチ程の背丈に褐色の恵体(えたい)

衣類は黒いパンツ一枚で両肩にガタガタに凹んだ鉄板を装着している。

継ぎ接ぎの革のマスクを被り、二つの耳と顔を覆っていた。

豚のような大きな鼻と真っ赤に充血した右目は不気味にも露出している。

左目は白目しか見えず、常に開いた口からは

不揃いな黄ばんだ歯をのぞかせおびただしい程の唾液を垂らしていた。


「な、なんだお前は!? いつからそこに居た!?

精霊人……いや異形種のオークか。今はなんでもいい、お前、私の家来になれ!!

褒美なら好きなモノをやろう! 金でも土地でも女でも好きなモノをねだるといい」


引きつった笑みで見上げると大男はそれに答えた。


「ニク」


「は?」


「ニククレニク。

ニクニクニクニクニクニクヲクレ。ニクニクニクニク!

ニクニクニクニクニクニクニク!!!

ニクニクニクニクニクヲクレ。ニクニクニクニク! ニク!

ニクニクニクニクニクニクニクニクニクゥ!!!!」


その瞬間、太った男は悟った。

この男は関わってはいけなかった存在なのだと。

ゴリゴリと骨を噛み砕き、分厚い肉をガムのようにクチャクチャと音とたて喰らう。

大男の手に握られたモノはもう、血液の染み出たただの肉片となっていた。

エナとなり消え始めると、大男は急いで自分の口の中に肉片を握った手を突っ込み

喉で肉と血を()し取るように手を引き抜いた。


「フウ……ドチソウサマ」


食事が終わると同時に頭が割れるような雑音を響かせながら

空間を侵食して陽炎のように揺らめく“ワザワイ”と呼ばれる黒い影が現れた。


「呱呱も◆孤ノ村8打mだ&聞きD4価値):Ё。:dい9ぞOーヌ」


「ニク?」


「あ※、?=だ・И。?3”ノ@‘‘*で前菜W喰・^おk」


脳が軋むようなノイズ交じりに大男とやり取りをする。

大男は理解したのか、していないのか、分からないが

地面から突き出た岩の壁を片手で薙ぎ払い進む。

その進む先は、シネト村。

突然現れた血塗れの大男に怯える村人たち。

その恐怖の表情を見て大男は笑みと唾液を大量に(こぼ)す。


「ンハァ! イ・タ・ダ・キ・マ・ス」


大きく開いた口は

盛大な血飛沫を上げて閉じた――――。

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