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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
三章 多種多様精霊界巡会記
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三十話 三つ頭の獣

暗い夜闇に目映いばかりの炎が(おど)る。

炎は荒ぶり、次々と家屋や人々の日常や

思い出を無慈悲に燃やし、呑み込んでいく。

辺りに漂う黒い煙を吸わぬよう、シンシアは風の精霊術で道を開いて進む。

以前は通路であったであろう道には、瓦礫が散乱し容易に走る事もできない。

前衛をノア、レオ、キーフ。

真ん中に朔桜。

後衛をキリエ、シンシア。

の陣形で進んでいく。


六人の行く手を阻むかのように先程より多くの

ネオパンサーや二つ頭のオルトロスが現れるようになった。


「敵の層が厚い。やっぱり湖で正解かもしれないわ」


全員で獣の群れを薙ぎ払いつつ進むと真っ暗な虚無の空間が視界に入る。

昼間は太陽の光を反射させ綺麗に煌めいていた湖。

そして、今は不気味で広大な闇の塊。恐怖すら感じさせる。

全員が息を呑み、陣形を崩さぬまま警戒し進むとノアがなにかを見つけた。


「止まって。奥になにかいるよ」


ノアの言葉に従い全員が足を止める。

だが、他の者には暗闇しか見えない。

視力のいいシンシアさえもだ。

ノアの宝具【鵜の目鷹の目】により

夜目が効いているからこそ発見できたとも言える。


「アレはノアかシンシアお姉さんしか勝てないかなー」


「お前には何が見えるってんだ」


キーフがノアに説明を求めると、地を揺らすほどの重い足音が奥からこちら目掛けて向かってくる。


「おいおい、なんかすごいでかくて重そうな足音だな!?」


「来たよ。みんな、下がって明かり用意しといて」


ノアの指示に従い、村から拝借(はいしゃく)した精霊光を準備する。


「ノアが攻撃を弾いたら明かりを使ってね」


ノアは飛び上がり、【変身(メタモルフォーゼ)】でロードへと姿を変える。


「風壁!」


ロードの姿に変わり、ロードと同じ魔術を使う。

もちろん効果も威力も全くの同等だ。

大きな音が響くと同時に一斉に精霊光を点け、周囲を目映く照らす。

すると目の前には、巨大な身体に三つの頭を付けた恐ろしい顔をした獣が鎮座(ちんざ)していた。


「顔が三つ、だからこれは……ケルベロス!」


ノアは続けざまに風衝を使い、ケルベロスの巨体を奥に吹き飛ばし

元の幼い少女の姿に戻った後、羽衣で追撃する。

ケルベロスは巨大な手と鋭い爪で羽衣を容易に弾く。


「あの獣エナジードがまるで読めない。。。」


「バルスピーチの能力《結合》で作られたモノよ。

ネオパンサー百匹分くらいの生命力を感じるわ」


「百匹くらいの集まりなら俺らでもいけるっすよ!」


「一撃がネオパンサー百倍の攻撃力と言ったら

後ろに引いてくれるかしら? 当たったら即死よ」


「ひっ」


レオは砂を鳴らし、後ずさりする。


「それが普通の反応よ。

あの子、ノアは普通じゃないわ」


「それは見ていれば分かる。

夜目が効きすぎていたり、変化できたり明らかに異常だ」


「そこー聞こえてるよー」


戦闘中も片手間に会話を聞き、シンシアとキーフをジト目で睨む。

会話の最中にも関わらず、ノアは軽快に動き巨大なケルベロスを翻弄(ほんろう)させている。

隙を見つけては幾度となく『雨の羽衣』を使って攻撃するが

皮膚が硬く、なかなか致命傷に至るダメージは与えられない。


「ノアちゃんはロードに勝っちゃうくらい強いから安心して」


「まじっすか!?」


「まじまじ」


「見ててね!」


褒められ上機嫌になったノアは、もう一度ロードに変身する。


「爆雷―鈴鯨!」


腹部黒い溝ができた金色の鯨が出現。

ケルベロスはそれに敵対し爪を突き立てる。

その瞬間、美しい鈴の音が鳴り大爆発。

周囲をまるで昼間のように照らし

濃縮された雷がケルベロスを一瞬で焼き払った。


「どや!」


ロードの姿のままどや顔を決めていた。


「ノア!! 避けて!!」


シンシアの今までに聞いたことのない叫び声が湖に木霊(こだま)する。

突如、湖の中から全員の視界を覆うほどの巨大な白い熱閃がノアに向かって放たれた。

熱閃の風圧で、五人は周囲に吹き飛ばされてしまう。

なんとか受け身を取りすぐに立ち上がったレオは目の前の光景に愕然とする。


「……は?」


熱閃が放たれた部分は消し飛び、熱量で地は真っ赤に溶けている。

そして、シネト村の三割を一瞬にして消し飛ばしたのだった。

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