二十八話 双頭の獣
一方、村の入り口で村人を救出する朔桜、ノア、キリエの方にも
大量のネオパンサーのが襲い掛かっていた。
ノアは涼しい顔で硬化した『雨の羽衣』を振り回し、獣の首を軽々と刎ね飛ばしていく。
「もう何匹殺したか分かんないよー。まだまだ来るし、ノア、疲れてきたぁ」
飽きっぽいノアは、途絶える事なく現れる
ネオパンサーを相手するのに嫌気が差してきた様子。
「ノアちゃん! もうちょっと頑張って!」
「もうちょっとってどのくらい?」
「う~んと、一時間くらい?」
「むり~~~~」
朔桜と雑談をしつつもしっかりと羽衣を動かし、パンサーの首を狩っている。
実に頼もしい女児だ。
朔桜が回復させたのは、三十人程。
村人のエナ値は平均的に低く、全員治癒させても
まだまだ宝具の中のエナには余裕があった。
「あ、二匹そっち行っちゃった。キリちゃんよろしくね~」
「キリちゃんとは。。。私の事ですか?」
朔桜の方を向き、自分を指差して自己人称の確認を取る。
「そう、そう! 前、前!! 来てる、来てるよキリエちゃん!!!」
「キリちゃんですか。。。そうですか」
心なしか嬉しそうなキリエは、相手の姿を見ないまま精霊術を唱え
地面から現れた鋭利な岩が二匹の獣の胴体を二つに引き裂いた。
「愛称。。。悪くないですね」
キリエは初めての愛称に浸っている。
よほど気に入ったのだろう。
「二人とも見て! なんか強そうなの来た!」
ノアが騒ぎたて指を差す。
その先には、一つの胴体に二つの頭が付いた黒い獣がいた。
「何あれ……」
「ノア知ってる! 頭二つの犬はケル……ちがくて~あ、オルトロスっ!」
その獣の名前を言葉にした瞬間、双頭の獣は牙を剥き出しにしてノアに飛び掛かる。
「ノアちゃん!!」
「うわ~! 食べられちゃう~~~~……なーんてね」
ノアは羽衣でオルトロスを真ん中から両断。
「なんだ、強そうなのは見た目だけだったね」
がっかりして視線を逸らした瞬間。
半分に断ち切られた二つの半身は突如動き出し、再びノアに襲いかかる。
「ノ――――――」
「知ってるよ」
朔桜が注意を促す前に、綺麗な薄藤色の髪をなびかせ、回転しながら横一閃。
オルトロスの首は胴体から吹き飛び、エナとなり消えた。
「ふぅ……ヒヤヒヤしたよ……」
朔桜が胸を撫で下ろした途端。
地面を掘り進んだネオパンサーが
朔桜の喉元目掛け、その鋭い牙を剥き出す。
「朔ちゃん!!」
ノアが秒速で反応するが、数センチ間に合わない。
首元を噛まれそうになったと同時にネオパンサーの顔が弾けた。
二人とも唖然とする。
キリエは地面から現れたネオパンサーに反応すらできていなかった。
「え? 今、何が起きたの?」
「今のは魔術でしょ?
ロード君なんだかんだ甘いねぇ。
最初から朔ちゃんの事守ってたみたい。ずるーい」
「あ、そういえば……馬車で別れた時なんかされた!」
「う~ノアが守るって言っておいたのに全然信じてないじゃん!
まあ、今のがなかったら朔ちゃんの首噛み千切られて死んでたけどね、へへっ」
「ノアさん!? しっかりしてもらっていいですか!?」
「はい! 以後気をつけます!」
その後ノアが周囲のネオパンサーを掃討。
三人が一息着く頃合いに丁度、シンシアが屋根を渡り駆けつける。
「三人とも無事でよかった!」
シンシアは安堵の表情を浮かべる。
「あははは……」
数分前死にかけた朔桜は苦笑いで返したのだった。




