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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
三章 多種多様精霊界巡会記
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二十四話 独断専行

馬車を大破させた騒ぎを聞きつけ、人々が集まりだしてきた。

木片を掻き分けて出てきた太った男は突然笑い出す。


「何を寝ぼけた事を! お前は薬でもやっておるのか?」


「いいえ、言葉通りの意味よ。私は勇者カウルと共にこの世界を救った者」


その言葉を聞き、周囲は私を嘲笑う。


「何を言ってるんだ、こいつ」


「おい、こっちだ! 変な女が貴族相手に喧嘩売ってるぜ!」


野次馬が続々と集まってくる。


「頭がおかしいのかこの女! この私になんの用だ!」


「おかしいのはお前の頭よ。少女に首輪を付けて奴隷にするなんてっ! 恥を知りなさい!」


この男の悪事を大声で怒鳴りつけるも、民衆は私に同調し加勢してこない。

むしろこちらに冷ややかな目を向け、悪びれもなく各々の思いを口にする。


「人を奴隷? あれエルフだろ? 異形種なんだから当然じゃないか」


「耳長の精霊獣だろ。あんなの精霊人じゃない」


「数千年生きて身体能力もずば抜けてるなんて良い労働力じゃないか」


私はショックを受けた。

民衆も太った男に同調するような声を上げていることに。

エルフは精霊人の中でも卓越した運動神経を持ち、五感も優れている。

それを妬んだり、忌み嫌う者が少しなりにいるのは知っていた。

しかし、エルフを長く使えるモノとして扱うのが、今の精霊界の当たり前になっていたなんて。


「その無礼、万死に値する! 放て!!」


あまりの衝撃に呆然としていた私は、矢に反応するのが少し遅れた。

頭を狙った矢が私のフードを吹き飛ばす。

そして、人々は叫びを上げた。


「エ、エルフだ――!!!」


その場は騒然とする。


「ははは! なるほど。

同族が(はずかしめ)められているのに耐えかねて、あの呪われた森から出てきたというのか」


「“戻りの森(リバースフォレスト)”は呪われてなんかいないわ。

私はただあの子を解放してほしいだけ」


「それは出来んな。こっちもそれなりに高い金で買ったもんでね。

長年使わなくては元が取れない。まあ、異形種でも見た目は申し分ない。

存分に堪能させてもらっているよ」


男は思い出すかのように舌なめずりをする。


「……下衆が」


「ほう……こう見るとお前も随分と綺麗な顔立ちといやらしい身体をしているなぁ……。

よし、気が変わった。お前も私のコレクションにしてやろう」


「その冗談、面白くないわ」


母天体(マザァーム)』から放った矢は、流星の如く流れて地面に刺さると即時爆発。

付近の弓兵を軽々と吹き飛ばす。

ただの矢一本が豪邸門前の地面を跡形も無く消し飛ばした。


「退きなさい。次は貴方たちの眉間にぶち込むわよ!」


兵士は恐れ戦き、その場を立ち去る。


「おい! お前たち!!」


逃げる兵を呼び止める男の声は彼らには届かない。

所詮は雇われの兵だろう。

自分の命が惜しくて当然だ。

私は堂々と門から豪邸の中に入る。


「エルフの子を出しなさい」


さっきの騒ぎを見ていた一同は抵抗せずに

弱ったエルフの少女をこちらに引き渡す。

私はすぐにその首輪を精霊術で壊す。

少女の目は虚ろに曇り、身体はフラフラしていて栄養失調気味だ。

首と手首には赤い黒い跡、背中には痛々しい傷が浮かんでいた。

よくもここまで酷い事ができる。

精霊人の所業ではない。


「おい! それは私の物だぞ!」


落ちていた槍を拾いこちらに駆け寄ってくる。


「ライズ!」


「あびゃっ!」


耳障りなので雷の低級精霊術で失神させた。


「見世物じゃないわ。散りなさいっ!」


周りでただ呆然と見ていた野次馬たちを散らせる。

私は女の子を背負い村の入り口まで駆け足で向かった。

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