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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
三章 多種多様精霊界巡会記
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二十話 下劣な賊と死闘の果て

火の精霊を宿した俺の本気の精霊拳。

それにキーフの雷を宿した精霊脚を受けても、賊長ジオラはまったくの無傷。

火傷もしていなければ、感電もしていない。


「お前らじゃ俺を倒せねえよ。俺様は無敵だ」


ジオラが拳を頭上に掲げると、連中は張り裂けんばかりに声を上げる。

それは奴に対して絶対的な信頼から来るものだろう。


「無敵ならその鎧いらないんじゃね?」


ふと疑問になった事を口にする。


「違げぇねぇ!」


腰に手を当て広場に木霊するほど大声で豪快に笑う。


「さあ、野郎共! 客人をもてなしてやろうぜ!!」


ジオラの号令で指揮は高まり

連中の戦闘意欲が肌にヒシヒシと感じる。

最初に飛び出したのはジオラ。

武器も持たず、丸腰で俺の前に飛び出し、大きな拳を振り上げる。

反射的に俺も拳を振り上げ、攻撃のタイミングを見計らい相手の拳にぶつける。

精霊装備のガントレットとリフィンデルの籠手が激しくぶつかり合う。


「反 拳!」


俺の能力《反拳》を使い、受けた衝撃を二倍で返し、ジオラの拳を押し退ける。


「ほう。俺の拳を弾くか」


ジオラの顔からはさっき余裕は無くなり、驚きの表情を浮かべている。

なんだでかは分かんねーけど、俺の反拳は通用するって事みたいだ。

それにこの手ごたえのない感覚。

つい最近味わったことのある感覚だ。


「キーフ! こいつは俺が殺る! 残りの雑魚を頼む!」


「一人で大丈夫か? そいつ、なんだか妙だぞ」


「分かってる。でも、どうやら俺の能力とは相性がいいみたいだ。

雑魚を片づけたら加勢頼む!」


「おう! とっととブチ殺してすぐに向かうぜ!」


お互い戦う相手と向かい合った。


「お別れの言葉は済んだか?」


ジオラは足元に転がっていた剣を足で拾い上げ

右手に握ると手首にスナップを利かせクルクルと回し、再び握り直す。


「今するよ……さよならだ! ジオラ!」


「ははは! 面白れぇ! かかってこい。クソガキ!」


その言葉を皮切りに俺は勢いよく突撃。

精霊拳を使いそのまま殴りかかると

相手の振り(かざ)した剣と拳がぶつかり合った。

その刹那(せつな)、拳の勢いが止まり、相手の剣が俺の拳に勝る。

腕が両断される寸前で、手首を捻って剣の一太刀をかわし、難を逃れた。


「あっぶね、くそっ! さっきは押し切ったのに!」


剣は拳ではびくともしなかった。それに鉄とは違う変な感触がした。


「はーん、さっきのはまぐれか?」


足を広々と開き、剣の峰で肩を叩いている。

野郎も随分と余裕を取り戻したみたいだ。

たぶん、何かの能力で反拳じゃないと奴の攻撃を押し切る事は出来ないらしい。

俺は精霊拳を使い、左右に揺さぶりをかけ、右横から顔面めがけて真っ直ぐ拳を打つ。

しかし、ジオラは防ぐという動作すらしない。

顔面に当たる寸前で反拳を使い拳が顔面にヒットする。

だが、手ごたえはまるでない。

それどころか、奴は微動だにしていない。


「隙ありだ」


鋭い銀の刃が首を掠める。


「あぶねっ!」


上手くかわしたはずだった。 

気が付くと首からおびただしい量の血が溢れ出る。

刃は完全にかわしたはず。

にもかかわらず、首の皮と動脈がパックリいってやがる。

これはまずい。

傷口を手で押さえ、距離を取る。

でも、今ので分かった。あいつが何をしているのかが。

確かに強いが、()()()ほどじゃない。

だが、問題は俺一人じゃ、奴のカラクリを破れないって事だ。

ヘアバンドをきつく首に巻き付け、一時的に止血する。

かなりの血が流れたせいで視界がぼやけ、頭のてっぺんからさーっと血の気が引いていく。

頭頂部が冷たくなってきて脳からのSOSが聞こえてくる。

手足の感覚も若干鈍い。

悠長に戦っている暇はないみたいだ。


「キーフ! そっちはどうだ!?」


ジオラに視線を合わせたまま、

大声で問いかけ状況を確認する。


「後、七人だ」


「了解だ、相棒! わりぃがやっぱこいつは俺一人じゃ倒せない。

時間を稼ぐからなるはやで頼む」


「おう」


さて、問題はこいつをどう足止めしておくかだ。

おそらく、全うに戦ってこいつに一撃当てるのは無理だろう。

俺一人の攻撃じゃ、届かない。

それに奴の攻撃を避けても、攻撃範囲から出ないと食らっちまう。

どうしたらいいんだ。


「さあ、もう諦めはついたか?」


「はっ、言ってろ! もうちょっと付き合ってもらうぜ」


「なら、精々楽しませろよっ!」


ジオラが剣を振ると斬撃が床を削りこっちを一点に目掛け、向かってきた。

なんとか横にかわすも、さらに斬撃が放たれる。 


「ああ! くそ!」


ふらふらになりながらも斬撃を紙一重でかわしていく。

足がもつれたら一瞬で肉塊だと思うと、血が足りない頭から更に血が引いちまう。


「おいおい、トカゲみたいに逃げ惑うだけか? あん?」


「うるせえ! ちょっと待ってろ!」


「飽きてきちゃうとよぉ……手が滑っちまうな!」


俺が離れたのを見計らって 女性たちがいる監禁部屋を狙い斬撃を放つ。


「しまった!」


咄嗟(とっさ)に打ち消しに追うも、風を切り進む素早い斬撃に追いつけない。


「せこい真似……すんじゃねえ!」


怒号とともに放たれたキーフの蹴りが斬撃をかき消す。

キーフが居なかったら、今のは正直ヤバかった。

後ろの女性たちを狙うなんて、マジでこいつは糞野郎だ。


「レオ、終わったぞ」


その言葉通り辺りに賊のものと思われるエナが舞う。


「おいおい。全滅たあ、やってくれたな」


ジオラは賊のエナジードを吸収。

自身の精霊力値を上昇させる。


「いい加減……くたばりやがれ!!!」


放たれた無数の斬撃。

それは見境なく、広場の物を削り破壊していく。

俺らは後退し、監禁所の前で女性たちに当たらないように猛攻を防ぐ。


「甘ちゃんがっ! その使い捨てと一緒に消し飛べ!!」


大きな竜巻が一直線でこちらに迫る。


「ここで決めたい」


そう一言キーフに告げると、その意図を汲み一度だけ頷いた。


「精霊拳!」


燃える拳が竜巻と激突。

ここが正念場だ。

激しい斬撃の嵐が、俺の腕をズタズタに引き裂く。


まだ。


まだだ。


まだまだ。


耐えに耐えた怒り。痛み。衝撃。

それを一度に乗せて拳で放つ。


「反 拳!!!!」


竜巻で受けた衝撃を倍にして返す。

拳から飛び出した衝撃は、ジオラの出した大きな竜巻を

一瞬でかき消し、ジオラ本人に返ってゆく。


「ちっ!」


奴は必死に風の壁を展開。

ギリギリ防いでいるようだ。

だが、そのチャンスを俺たちは逃さない。


「精霊拳!」


「精霊脚!」


俺の拳とキーフの蹴りが一点を狙う。

示し合わせたわけではない。

ただお互いそこに良しとしない(わだかま)りがあっただけ。


「下劣なお前じゃ、それは似合わないぜ」


「リフィンデルを背負うには品が足りない」


王都リフィンデル騎士団の鉄鎧のど真ん中を


二人の渾身の一撃が穿(うが)った。

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