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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
三章 多種多様精霊界巡会記

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十九話 下劣な賊とその賊長

俺はキーフと共に賊の後を追う。

逃げた男は人が通らないような山道の険しい雑木林を進んでゆく。

そんな場所に人が行き来して踏み固められた形跡があった。


「まるで獣道だ」


「獣もケダモノも変わらん。レオ、賊だといっても油断するなよ」


「当たり前。全力でぶっ飛ばす!」


男が逃げ込んだのは、古びた遺跡。

大きな入り口の半分以上が土で埋められ、木や草で入り口が巧妙に隠されている。

これじゃ、ここを通ったとしても気づく事は出来ない。

小賢しい。よほど後ろ暗い事をしてるんだろう。


「キーフ。いいか?」


「おう。ブチのめしてやろう」


俺たちは賊巣の食う遺跡へと入った。

地下に進む構造になっていて中は多方向に入り組んでおり

入って早々、通路が三つに別れている。

道幅は広く、五人くらいが横に歩いても大丈夫そうだ。

天井も十分に高い。側面には明かりとして精霊光が使われている。

普段使っていそうな通路は精霊光が灯してあり

使ってなさそうな道は瓦礫や木材の破片が無造作に散らばっていて

虫の巣が張ってあって埃っぽい。

おそらく、入り口付近は資材倉庫にしているようだ。


「分かりやすくて助かるぜ」


俺たちは精霊光に沿って奥へ奥へと通路を進んでいく。

また通路が三つに別れていて、今度は全てに精霊光が使われていている。


「真っ直ぐ進もう」


キーフは迷わず正面の通路を選んで進む。

俺はそれに付いて行く。


「なんで真っ直ぐなんだ?」


「戻る時、下手に曲がると帰り道が分からなくなるだろ?」


「確かに!」


またしても三つの分かれ道。

しかし、今回は左の通路から人の話声が聞こえた。

俺らは迷わず声のする方に気配を消して静かに向かう。

近づくにつれ、微かな酒の臭いがする。

それに吞気な男達の笑い声。

声の数的に十人以上は居るみたいだ。


「酔い覚ましにガツーンと行くか」


「ああ!」


キーフがドアを思いっ切り蹴って吹き飛ばす。


「ちわー! 勇者活動しに来ました!」


元気よく俺が挨拶し先に部屋に入ると

見慣れない侵入者に一瞬困惑するも男たちは怒号を上げ、拳を振り上げてきた。


「んだ、てめえ!」


「おっそいよ、おっさん!」


その拳を払い、一直線の俺の拳が男の顔面にめり込む。手ごたえありだ。

後方の男を巻き添えに男は吹き飛んでいく。

ここはこいつらの寝床だろう。

小汚く、カビ臭い。布団を何年も干していなさそうだ。

男達はざっと十~二十人くらいか。

今のを見ても、懲りずに駆けてきた男はキーフに向かって行くが

一回転の勢いとともに放たれた強烈な蹴りが男の頭を一撃で砕く。


「おい! やべえぞ! なんだこいつら!」


今ので流石にビビったのか、男達は慌てふためく。


「あー静粛にー。ここに捕まってる人達はどこにいるのか案内してもらおうか」


「このガキが! サイネの組は居ねえのか!?」


「さっき出ていきましたよ!」


男達はざわざわと騒ぎだす。


「外をふらついてた賊は全員シメた。残りはお前らだけか?」


「ばっバカな!? こんな十代そこらのガキ共にやられたってのか!?」


「強さは年じゃねえ。ここだ!」


俺は心臓を叩き高らかにアピールする。

決まった。完全に決まったぜ。

すると、男達は大笑いする。


「今ので完全に酔いが覚めたぜ。おい、全員ナイフ出せ。こいつら惨殺だ」


一番歳をとってそうな男が指示すると全員手にナイフを持つ。


「さあ、気を抜くなよ、相棒!」


「レオ、お前もな!」


それから数分後、俺らはナイフを持った男達を全員半殺しにした。

一人だけ意識のある状態で残し、このアジトの地図を作らせる。


宝の部屋   賊長の部屋 賊長の寝室

サイネ組の部屋 広場   監禁部屋

イグン組の部屋      水場

武器庫          装備庫

資材庫          資材庫


という構造らしい。


女性たちを監禁しているのは、広場の右の監禁部屋。

鍵はここの賊長ジオラが持っていて

ジオラの許しが出た時に監禁した女性たちを好き放題犯しているらしい。

胸糞悪い話だ。

だが、外の連中とさっきの奴らを含め、ざっと五十人ちょっとは倒した。

後、十とそこらで壊滅だろう。

俺とキーフは男を足元に転がっていた太い縄で縛り、広場へと向かった。

通路の先に一際大きな部屋。

中を覗くが人はいないみたいだ。

机と椅子が何個も置いてある。

きっとここで食事をしているのだろう。

さっきの汚い部屋と比べ、こちらは綺麗に保たれているみたいだ。


「この先が賊長の部屋だ! もういいだろう! 俺を解放しろ!」


男は賊長の部屋の前に来て突然暴れ出す。

縄から手を離すと一目散に広場の入り口に向かった。

すると、後ろからさっきボコボコにした連中が剣や斧の大きな武器を手にして戻ってきた。


「懲りねえ連中だなぁー」


「半殺しじゃ甘かったみたいだ。今度は確実に仕留める」


俺たちも覚悟を決め、戦闘態勢に入る。


「うおおおおおおおおお!!!」


連中は目が完全にキマっている。

ボコったのが相当効いてるみたいだ。


「精霊拳!」


ガントレットに宿る火の精霊が俺のエナに反応し、発火。


「炎の拳の出来上がり!」


「あいつ、精霊使いか!」


「怯むな! 行け! 行け!」


俺を警戒しつつも武器を頼りに突っ込んできた。

大振りの武器をかわしつつ、炎の拳を男のどてっ腹に叩きこむ。

拳の入った腹部は炭のように真っ黒に焼き焦げる。

圧倒的な力の差。こいつらに全く負ける気がしない。


「精霊脚!」


キーフの足の装備にバチバチと弾ける雷が纏う。

その足で男の頭を蹴り飛ばすと感電したように

身体から煙を吹き出し動かなくなった。


俺らの使っているのは精霊装備という精霊界の武装品。

装備に自分の属性精霊を宿らせる事によってその力を発揮できる。

俺は火、キーフは雷の属性だ。


「こいつら……普通の精霊使いじゃないぞ!」


気づくのが遅い。

俺たちもそこそこ腕に自信がある。

だからこそ勇者カウルに憧れ、この世界に害為す“精霊女王の忘れ形見”を

この精霊界から消し去るという目的で旅をしているんだ。


「一気に行くぜ! 相棒!」


俺らは精霊装備で圧倒する。

剣や斧なんかじゃ俺らを止められない。

向こうの攻撃を一度も受けず、無傷で男達を捻じ伏せた。

あらかた片付いたと一息つく間も無く、奥の部屋から一人の男が出てくる。


「なんだぁ? これは?」


現れたのは鉄鎧を着た大柄の短髪男。

頭の右半分は酷い火傷が目立つ。

右目には黒い眼帯。


「おーおー。人ん家で随分と派手に暴れてくれたな」


男は壊れた机と椅子を見て嘆く。

部下が死んで倒れているのを見ても、そっちにはなんの感情も抱いていないみたいだ。


「ジオラさん!」


賊の一人が男の名前を呼ぶ。

今、ジオラと言ったな。

それはここの賊長の名前だ。


「あいつがジオラか」


「みたいだな。随分と良い鎧を着てやがる。さぞ、景気が良いんだろうな」


よく見るとその質の良い鎧の左肩には、王都リフィンデル騎士団の紋章が刻まれていた。


「なっ! お前、それ」


俺がその紋章を指さすと男は得意げに語る。


「あーこれか? これはぶち殺した奴から奪ったのよ。

立派な鎧だろ? この俺様にぴったりだ!」


「賊がリフィンデルの紋章を身に付けるなんて、すげー冒涜(ぼうとく)


「何とでも言ってくれや。で? お前らなんなわけ?

人ん家荒らしまくって。部下達も随分と殺られたみたいだしよぉ」


首を抑え、バキバキと音を鳴らす。

その感情は苛立ちと面倒ってところだろう。


「ここに捕らえた女性たちを解放しろ!!」


キーフの声が広場に木霊す。


「あーあれ。使いたきゃ使えよ」 


ジオラが鍵を指で回し、部下に投げる。

顎で開けろと合図し、広場横の鉄製の頑丈な扉が開く。

そこ中は目を覆いたくなる地獄のような光景が広がっていた。

ぱっと見十人以上は居るだろうか。

全員一糸纏わぬ姿で身体は傷だらけ、髪、唇、爪は砂漠を歩いてきたのかというくらいボロボロだ。

あばらがくっきり分かるほどやせ細り、目は虚ろのままどこを見ているのかも分からない。

瀕死寸前の人だっている。

俺より背丈の小さい子までいる。

半数以上はもう性別がどちらか分からないほど(やつ)れ変貌してしまっている。

その光景を目にした俺は怒りを越し、理性が飛んだ。

気付いた時にはもう、ジオラに飛び掛かり顔面を殴り飛ばしていた。

ジオラは派手に回転しながら奥の部屋まで吹き飛んでいく。

不意の一撃。手加減無しの一撃。

首がぶっ飛んでもおかしくない。

しかし、繋がった首は声を放つ。


「躊躇ねえなあ、おい。今のは効いたぜぇ」


鋼鉄のガントレットで精霊拳を全力で当てたにもかかわらず、

ジオラの首は飛ぶはおろか顔にすら傷一つもついてはいなかった。


「嘘……だろ?」


「どけ、レオ! 精霊脚!!」


キーフが追撃立ち上がろうとしたジオラの頭上から精霊脚を叩き込む。

全体重を乗せ叩き込んだ踵落とし。

衝撃波が広場全体に響き床が重圧で砕け散る。

頭が潰れ真っ二つになっていたっておかしくはない。

鉄鎧を着ていようと頭は剥き出しだ。

流石に生きているわけがない。

土埃を舞わせ、床岩が崩れる。

しかし、その中から無傷の男が立ち上がった。


「お前らさ。舐めてんの?」


男は首を鳴らし、立ち上がる。


身体を捻り異常の無さを確認する。


その男、賊長ジオラは無傷で健在だった。

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