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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
三章 多種多様精霊界巡会記
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十七話 下劣な賊と力量差

透き通った水面がキラキラと輝く。

ロード一行はラーゾ川沿いの馬車道を進んでいく。

今後の目的は、一度旅の休息と情報集めのためシネト村に向かう事。

そして、その先にあるキジュ村でロードとシンシアが黒い影と呼ぶ存在。

この辺だと“ワザワイ”と呼ぶ存在の手がかりを探す事だ。

黒い影は、魔界の“忌竜”アルべリアウォカナスを使い人間界を滅ぼそうとしたり

人間界の宝具を根こそぎ集めていたりしていた。

精霊界では黒い影が現れて始めてから“精霊女王の忘れ形見”が活発になったり

村が襲われたりと不幸が続いている。

関連性は分からないが、とにかくあの黒い影を探すのが目的となっている。


「あっ! 今、魚が跳ねたよ!」


「ノアちゃん! あっちも今出た! 真っ黄色の魚だったよ!」


「それはたぶんダポリ。。。白身が肉厚で美味しい川魚。。。」


ノアと朔桜は馬車から顔を出し外を眺め目新しいものがあるときゃっきゃと騒ぐ。

そして、それをキリエが丁寧に解説してくれていた。


「なんかいいなこういうの」


三人を眺め、しみじみと頷くレオ。


「キリエが楽しそうで何よりだ」


キリエは表情を変えず、淡々と解説しているようにみえるが

兄のキーフの目からは楽しんでいると一目で分かる。


「綺麗な川ね。目的がなければゆっくり川遊びしたいくらい」


シンシアは御者をしながら馬車の屋根上に座るロードに話しかける。


「電撃を流せば大漁だろうな」


シンシアの遊びとロードの遊びには解釈の違いがあるみたいだ。


途中、休憩に丁度良さそうな川近くの岩場を見つけ一休みすることにした。

朔桜とノアは元気良く川に飛び出す。


「この辺りは縦穴が多くて、急に深くなったりするから

底が見えないところまで行ってはダメよー!」


はーいと返事をして朔桜とノアは岩場で水遊びを始める。


「キリエも行ってこい」


キーフに促され、キリエは恐る恐る二人に近づく。


「キリエちゃんこの魚美味しい?」


ノアは雨の羽衣で捕まえた魚をキリエに見せる。


「これはあまり美味しくない。。。

身も少ないし骨も多くて食べにくい。。。」


「そっかー。じゃあこっちは?」


魚を捕まえる度にキリエに見せに行く。

なんだかんだ楽しんでいるらしい。

シンシアは馬に川の水を与えていた。

するとレオが寄ってくる。


「ずっと気になってたんすけど、シンシアさんはなんでずっとフード被ってんすか?

暑くないっすか?」


シンシアが言いづらそうにしているとキーフが慌てて止めに入る。


「おい、やめとけ!

すまない。こいつデリカシーないんだ」


「いいえ、大丈夫よ」


「え~美人なのにもったいないっすよ」


「ふふ、ありがとう」


レオは分かっていない様子だが、キーフは薄々事情を察していた。

シンシアが頑なにフードを被る理由を。


「ロード見て! 綺麗な石!」


朔桜も岸で拾ったオレンジの石を見せにくる。


「ああ、そうだな。石だな」


「ほしい?」


「いらない」


「あげなーい!」


「そうか」


この二人も一応楽しんでいるらしい。

そんな和気藹々とした空間の中、水を差す無粋な者が現れる。

草陰からぞろぞろと身なりの悪い男達が出てきた。


「おうおう、女が四人も居るじゃねーか。

一人はまだガキだが、いいツラ揃いだ。

今日は楽しく過ごせそうだぜ!」


「久しぶりの新しい女だなぁ」


「前の女たちは川に捨てちまうか」


「バラして使えば、いい魚が釣れそうだぜ!ハハハッ!」


下劣な話で盛り上がる男たち。一同はどの層の人種か判断した。

衣服は小汚く、戦うための武装をしている。

ここ近隣を縄張りにしている山賊だろう。

ロードは怯える朔桜を呼び、自分の後ろに下げて侮蔑(ぶべつ)の目で男達を(にら)む。


「ふぅ……。ここは川は綺麗でも、些か小汚い川虫が多いな」


「あ? ガキが! 口の利き――――」


男がナイフを持ちロードを襲おうとした瞬間、男は弾けた。


「虫よけの効き目は絶大だな」


あらかじめ張っておいた風嵐の範囲に入り、男は一瞬で肉塊へと変わる。


「川で水風船遊びも一興か?」


男達は怒号を上げ、ロードと朔桜に襲い掛かる。


「ロードっ!」


不安そうにロードの衣を握る朔桜。


「問題ない。そこで跳ねてる川の魚でも見てろ」


ロードに襲い掛かった者は

ミキサーに飛び込むように次々とバラされていく。


「なんだこいつ!? バケモノか!?」


「こ、この真っ黒なガキは後だ! 他の男から殺せ!」


男達はあの惨状を目の前にしても諦め悪くレオとキーフに目を付け

ロードから逃げるように二人に襲い掛かる。


「あーあー俺ら舐められてんなぁ。

まあ、ロードさんに比べりゃ俺らは弱っちいけどさ」


ボクシングの選手のように軽い身のこなしでナイフをかわし

ガラガラの腹部に一撃を叩き込む。


「おえっ!!!」


背中から衝撃波が突き抜け、男は吐血して地に転がる。


「こいつらどうする? 生かしておいても迷惑しかかけなそうだぞ」


会話しながら身軽な足さばきでナイフを蹴り飛ばし

男達の顎に衝撃を与え、脳震盪(のうしんとう)させてゆく。


「確かに。でも、悪人とはいえ、同じ精霊人を殺すのはちょっと抵抗あるよな」


会話をしながら襲って来た男達を軽々と倒していく。

ロード、レオ、キーフで二十人ほどを蹴散らした。

数名は肉塊へと変わり、エナとなり霧散。

数名は嘔吐や吐血し、地面を這いずる。

数名は脳震盪と打撲で気絶している。

残りは三人だけとなった。


「おっ……女を狙え! 人質にするぞ!」


目標を変え、川で遊んでいたノアとキリエに襲いかかる。


「おい! 汚ねぇぞ!」


レオが食い止めようとするもロードは至って冷静だ。


「お嬢ちゃんたち少し大人しくしてもらおうか」


「やだよ! 弐枚太刀(ニマイダチ)


ノアの羽衣が綺麗な断面で二人の男の首を跳ねた。

飛んだ首は川に落ち流れ、残った胴体は噴水のように

血を吹き川を赤く汚してゆく。


「あ~羽衣汚れちゃった」


ばしゃばしゃと川の水で衣を洗うノア。

殺した事の罪悪感など感情の起伏は一切ない。


「あなたも。。。来ますか。。。?」


キリエはノアの対応に驚きながらも杖を向け、対峙した男を威圧する。


「ひいっ!」


男は後ろに尻もちを着き、尻がびしょびしょのまま山の中に逃げ戻っていく。


「賊のアジトはあっちだなー」


「バカな奴。自分から教えてくれるのか」


「ロードさん! 俺ら奴を追ってもいいっすか?

あいつらの口調的に人が捕まってそうなんで」


「構わないが、今日中にシネト村に着きたい。それまでには帰ってこい」


「了解っす! いこうぜ、相棒!」


「妹は任せた」


レオとキーフは二人で男の後を追って行った。


「朔桜、キリエ。お前らは馬車に戻れ。

シンシアは二人の警護。

ノアは俺とゴミの処理とついでこの川の主釣りだ」


「ゴミ処理は理解したけど釣りもするの?」


「ああ、ただあいつらを待つのも暇だしな。それにこの川の底……いるぜ、大物が」


こうしてレオとキーフは賊を追いアジトを突き止めに。

ロードとノアは釣りを始めるのだった。

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