表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
三章 多種多様精霊界巡会記
76/396

十二話 オーガの襲撃

翌朝、四人は旅の準備を整えて次の目的地シネト村へと向かう。

シンシア曰く、徒歩だと一週間はかかるらしい。

ロードの風壁―球で全員で移動する事もできるが、

商業道という事もあり、流石に目立つので馬車を購入。

それもただの荷馬車ではない。

馬四頭に屋根付きの一番高い馬車という金にものを言わせた駅馬車だ。

これなら三日くらいでシネト村に着くだろう。


「うおぉ~馬車だ~!!」


「お馬さんって目綺麗だね~」


朔桜とノアは見慣れない代物に目を輝かせている。


「御者は私がするわ。

朔桜ちゃん、ノアちゃんは乗り込んで頂戴。

ロードは荷物をお願い」


ロードは指を鳴らして風を操り、皆の荷物を馬車に入れる。


「出発だ」


シンシアは馬に合図を送り、馬車を動かした。

馬四頭は勢いよく馬車道を駆ける。


「うわわ! 朔ちゃんこれすっごい揺れる」


「ほんと、酔っちゃいそう……」


「ふふふ……これ全然揺れない方よ?

安い馬車と馬一頭とかだとこれの数倍揺れるわ」


二人は顔を青くしてロードの手を握る。


「ロードが家庭内泥棒で良かったよ!!」


「ロード君万歳!」


「お前らほんと現金だな」


数時間すると朔桜はぐったりとし始める。

流石に初めてで長時間の馬車移動はつらいものがあったようだ。


「シンシア休憩だ。馬車を止めてくれ」


ロードの合図でシンシアは馬車を止める。


「ノア、朔桜に水を飲ませて外の風に当ててやれ」


「ほ~い。朔ちゃん飲める?」


「うん……」


ゆっくりと水を飲んだ朔桜は

ノアに支えられながらよろよろと馬車の外に出る。

そしてそのまま芝生の上に仰向けに倒れた。


「あう~~ぐるぐるする」


いつもは血色の良い顔も今は青ざめている。

かなり乗り物酔いしたみたいだ。


「初馬車きつかったかな……」


シンシアも心配そうに朔桜の様子を眺める。


「少し休めば問題ないだろう。シンシアも休んでくれ」


荷台から果実水の入った小樽をシンシアに投げ渡す。


「ありがとう。私、これ好きなの」


止め木を外し、喉を鳴らし飲む。


「はぁ~~生き返った!」


シンシアはビールを飲んだおじさんの様にハツラツとしている。


「ねーねー! ノアにもちょーだい!」


ノアは甘えた声を出し、ロードに向かって小さな口を開けた。

ロードはその小さな口に指を捻じ込むと指先から電気を流す。

ノアは小刻みにビクビクと小さく震えている。

シンシアはその様子を見て、口に含んだ果実水を盛大に吹いた。


「おい、汚いだろ! なにやってんだ!」


「いや! 貴方がなにやってるの!?!?」


「あー……そういや説明してなかったな。

ノアはかくかくしかじかで――」


仲間になった経緯やノアが人工宝具の造られた存在という事を説明する。

話している途中で朔桜はすやすやと寝息をたてて寝てしまった。


「ふふっ……やっぱり、貴方たち面白いわ!


シンシアはキャラに似合わず目を輝かせる。


「私も面白い話がたっくさんあるの!

聞いてもらってもいいかしら?」


「聞きたいっ!」


ノアは目を輝かせ、食い入るように身を乗り出す。


「うふふ……じゃあ、話すわね。

あれは――――」


シンシアが話し出す直前、邪魔が入る。


「蒼雷― 一閃(いっせん)!」


目にも留まらぬ閃光は、一撃で近づいてきた生物の頭を貫く。


「うわ! びっくりした!?」


ノアは飛び跳ねて驚く。


「っ! いつの間に……ごめんなさい! 気がつかなかった!」


シンシアは即座に立ち上がり、弓を構える。

周囲にはぞろぞろと多くの巨体が集まっていた。

退紅色(たいこうしょく)の肌に紅の二本の角と眼。下から突き上がった二つの牙。

下半身は大型精霊獣の皮のようなモノでしっかり覆い隠している

筋肉の塊のような無駄の無い肉体は大木のようなこん棒を握りしめ、

ロードたちを一直線に目指して進行する。


「なんだこのデカブツ共は?」


ロードがシンシアに問う。


「これは……山奥に住む人型の大型精霊 オーガよ!」


「オーガ……ねぇ。魔界にもいたっけな、こんな人の成り損ないがな!」


周囲に爆雷を放ち、オーガの巨体をも一瞬で消し飛ばす。

六体ほどは瞬殺したが、数はどんどんと増す一方だ。


「きゃあ! なにこの巨人たち!」


今の騒ぎで朔桜が起きたようだ。

寝起きオーガのご対面にかなりビビっている。


「ノア、朔桜を拾って馬車で守れ。あの黒い奴の差し金かもしれん」


「おっけ!」


ロードは指示しつつも、軽々と電撃でオーガを蹴散らしてゆく。

シンシアも白い弓に矢を番えて放つ。


星槍(せいそう)!」


か細い手から放たれた質素な矢は矢じりから小さな星光が舞う。

一体のオーガの身体を貫いても、勢いを落とす事はなく、次々と後続のオーガを貫いた。

矢の放たれた後には、天の川と見紛うほどの星々の線が出来ている。


「面白い術を使う」


「ありがと。綺麗でしょ? 私の自慢の精霊術よ」


何発も連続で矢を射る。

そのどれもが的確に心臓を射抜く。

しかし、同胞がやられてもオーガたちは

怒りも、悲しみもせず、ただひたすらに向かってくる。


「なんだ、こいつら。まるで人形だ」


「いくらなんでもおかしいわ! こんな量のオーガなんて……はっ! まさか……!」


シンシアはこの原因に心当たりがあった。


「なにか知ってるのか?」


「精霊女王の忘れ形見にいるのよ。無限に増殖させる能力を持つ精霊獣が!」


「また忘れ形見とやらか。

その話は後だ、先にこいつらを一層する」


宙へ飛び上がり対象の数を捕らえる。

その数七十六。


「消え果てろ、木偶(でく)!  蒼雷―天罰(てんばつ)!」


天に黒い雷雲が出現し、そこから落ちる七十六の蒼雷がオーガの群れを一瞬で裁いた。

オーガの焦げた死体の臭いが鼻を衝く。

死体はすぐに極少量のエナとなり宙へ舞う。

ロードは些か不満そうにエナを吸収し

大きく吸った息を吐いた後、手をパンパンと払う。


「さて、聞こうか。その忘れ形見って奴の話を」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ