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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
三章 多種多様精霊界巡会記
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四話 世界の門

京都旅行から藤沢町に戻った私は急いで退学届を職員室に持って行き

担任教師の驚愕した顔を見納めて、高校生活を終了させた。

という経緯のもと、私たちは今この門の前に居るのだ。


「さあ、無駄話は終わりだ。そろそろ行くぞ」


ロードの号令で精霊界の門へ向かう。

ロックが解除されたドアを通り、向かった先にあるのは大きな門。

ステンと戦った場所にあった魔界への門と見た目は全く同じ。

違うのは、こちらの門は人工的に管理されているという事。

一度通ったら簡単には戻って来られないかもしれない。


「遅いよ~みんな~」


ノアちゃんは唇を尖らせ、ジト目でこちらを見る。


「ノア、あの門に一度触れて戻ってこい」


「なんで?」


「いいから早くしろ」


ロードは手を払い早く行けと急かす。


「は~い」


ノアちゃんはよく状況を理解していない様子のまま、

ロードの言う通りに門に触れて、何事もなく戻ってくる。


「これでいいの?」


意味も分からず、首を傾げている。かわいい。


「やはりな。ノア、お前も精霊界に連れていく」


「えっ!? ノアも行くの? だって、行けるのはロードくんと朔ちゃんだけって……」


ノアちゃんは自分で言った言葉で、自分のコトを理解する。


「そっか、ノア生き物じゃないから門の結界を通れるんだ」


「そういうことだ」


複雑な表情を浮かべるノアちゃん。

同情からなのか、私の眠る母性からなのか彼女をそっと抱き寄せた。


「じゃあなに。留守番は私とこの男だけって事かしら?」


(てぃな)の声色から不満が漏れ出ている。


「そうだ」


「ふざけんなっ! なんとかしなさい」


全開の殺意を向けてロードを(にら)む明。

しかし、ロードはその突き刺さる視線を無視して私の背中を押した。


「知った事か」


ロードと私は、なぜか門の結界を通る事ができ、生き物ではないノアちゃんも通る事ができる。

しかし、宝具【無事象(むじしょう)】を使って来た明と

普通の人間であるDr.は、結界を通る事は出来ない。

明はついにキレて何度も結界に攻撃する。

だけど、全ての攻撃は結界によって阻まれていた。

力及ばぬ事を理解してしまったのか、彼女は膝から崩れ落ちた。

私が明に駆け寄ろうとするとロードが手で阻止する。


「かけるのは言葉だけで十分だ」


これ以上彼女を苦しめるなという意味だろうか。

時間が無いから急いでいるという意味だろうか。

ロードの言葉の意図は理解できないまま、私はその場で明に声を掛ける。

少し考えた末、最初に浮かんだ言葉はこれだった。


「あなたーー名前はーー?」


突然の言葉にみんなは呆然とする。

その意味を理解できる一人を除いては。


月星(つきほし)……(てぃな)


「綺麗な名前! 私は並木朔桜! また……また、会えるといいねっ!」


その言葉は、初めて明と出会った時の言葉。

彼女とは昔に一度出会った事がある。

そして、再び出会う事ができた。

この言葉は、三度会うための約束の言葉だ。


「朔桜……あなたって子は……」


良かった。ちゃんと意味は通じたようだ。

さすが、私の親友。

明は目元に涙を浮かばせ、声を震わせている。


「絶対に、絶対に、絶対に、必ずまた会おっ!」


「……分かったわ。約束よ、朔桜」


私たちは互いに小指を突き出し、約束を結んだ。

別れを見届けるやいなや、ロードが声を張る。


「Dr.、魔界の門の事は頼んだぞ!」


「かしこまりました。我が君主」


Dr.は右膝を地面に着け深々と頭を下げた。


「ノア、君主に迷惑をかけるんじゃないぞ」


「は~い」


ノアちゃんは吞気に返事を返す。


「どうか、うちのノアをよろしくお願い致します」


Dr.は親戚に子を預ける親のように

再び深々と頭を下げていた。


「ああ、分かった」


Dr.の意を()んだロードは確かに首を縦に振る。


「じゃあ、門を開くぞ」


ロードが門を押すと重厚な音をたてながら扉が勝手に開いていく。

門の中は黒と紫が入り混じった不気味な異空間が広がっていた。


「空間内ではぐれないように固まれ」


ロードの言葉に少し、怖気づいて私は黒鴉の衣を掴む。

ノアちゃんも同様に衣を掴んでいた。


「よし、行くぞ!」


掛け声とともに門の中に踏み込む。

この先にはあの影のような者が待っているのだろうという不安がある。恐怖もある。

だけど、この先には見た事も、聞いた事もないものがあるという期待と興味も同時に存在していた。


そして、私たちは人間界を去り、門に隔たれた別の世界

精霊界へと渡ったのだった。

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