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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
二章 人知の興は禁忌の罪
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二十四話 対忌竜

ノアの咄嗟の判断で忌竜アルべリアウォカナスの突進から潜水艦を守り切った。

だが、攻撃を受けた舟はほぼ大破している。


「損傷率76% ノアの方舟、再展開するね?」


ノアは損傷個所を修繕していく。

その最中、アルべリアウォカナスは近距離で大口を開けた。

周囲の海水を大量に吸い込み、口から圧縮した水のレーザーを凄まじい速さで放つ。

あの水量と水圧なら山も軽々と消し飛ばせるだろう。

バカデカいウォーターカッターみたいなもの。

しかし、その圧倒的な威力を持つであろう破壊の海水をくらっても

ノアの方舟はものともしていない。


「あれが私の奥の手。そして私の自身の能力。《ノアの方舟》。

水に関係する攻撃全てを防ぐ完全防御移動要塞船。

アルべリアウォカナス、お前の攻撃は私の船には敵わないよ?」


破海水が効かないとすぐに理解し、こちらに対象を定める。

どうやら、凶暴化しても理性と知性は残っているらしい。


「まずいぞ。こっちにあれをぶっ放されれば、全員消し飛ぶ」


「とにかく方舟まで行って? あそこに行けば安全だよ?」


「あいつが安全にあそこまで行かせてくれると思うか?」


「次はあなたが奥の手を使う番だよ? 隠してるよね?」


「ちっ……」


指を鳴らし風で足場を作り、風壁を解除する。

それと同時に、先程と同じくアルべリアウォカナスは周囲の海水を吸い込んだ。

俺に奴の攻撃を受けきれるほどの守りの術はない。

唯一全員を退避させれるのは《八雷神(はちらいじん)》のみ。

今の魔力と雷電池を合わせて八雷神を呼べるのは六回が限度か。


「狂い咲け、無常の眼!」


左目に手を当て、稲妻が弾ける。

手を離すと紫陽花の様な紫青ピンクの鮮やかな眼に変化。

手を天に(かざ)し唱える。


「現れよ、我が“八雷神”が一柱。天を駆け巡れ、伏雷神!ライトニング!」


空は瞬く間に曇天に覆われて暗くなり、右手を天に突き出すと目前に落雷。

蒼雲から現れたのは、蒼黒の馬。

脚に黒い雷雲を(まと)い、角からは蒼い雷を放電している。


「全員こいつに触れろ!」


声を張ると全員その指示に従う。

同時にアルべリアウォカナスは破海水を放つ。

その速さは三百kmを優に超えていた。

巨大な破海水が当たる寸前、全員は一瞬にしてノアの方舟の上にいた。

その隣でアルべリアウォカナスは空中に向けて破海水を放っている。


「なに!? なにが起きたの!?」


朔桜は自分の身に起きた事に気が付いていない。

他の面々からも動揺が(うかが)える。

まあ無理もないだろう。当然の反応だ。

だが、説明してる暇はない。


「朔桜!」


役目を終えたライトニングをすぐに(かえ)し、朔桜を呼ぶ。


「はい! 回復了解!」


なにを言われるでもなく、雷電池で俺の魔力を全回復させた。

本当に適応力の高い奴だ。


「随分と回復役がさまになってきたな」


万全の魔力。これなら新たに八雷神を二柱呼べる。


「現れよ、我が“八雷神”が一柱。天から地に放て、土雷神!ネザー!」

「現れよ、我が“八雷神”が一柱。万物を引き裂く裂雷神!クリムゾン!」


曇天から雷鳴が轟き、現れる四つ腕の赤鬼が顕現(けんげん)


「八雷神を二体同時に!?」


朔桜が驚くのも無理はない。

以前の戦いはクリムゾンを呼び出してすぐにバテた。

だが、魔界の“十二貴族(じゅうにきぞく)”であるステンは俺と同等の魔力量を持っており、

それを吸収したことで魔力値も向上。辛うじて二柱を同時に呼べる。


「でも、もう一体はどこ??」


「問題ない。ちゃんと顕現(けんげん)している」


落雷に気づいたアルべリアウォカナスは破海水を止め、身を固めようと身を海中に沈める。

クリムゾンは逃がすまいと剛腕を振るが

突如、海水が巻き上がり空を隠すほどの巨大な水壁となり拳を防いだ。

水壁はクリムゾンの能力で二分されたが、その奥に更に分厚い水壁が張ってある。

そのうえすぐに再生するので裂いても裂いてもきりがない。かなり用心深い魚だ。


充電(チャージ)!」


天に手を伸ばす。


「ロード。まだいけるか?」


クリムゾンは俺の様子を心配そうに窺う。情けないが、正直かなり厳しい。

魔力をごっそり持ってかれやがる。


「問題……ない。だが、早めに頼む!」


「ウム……そう言われてもなぁ……」


掛け合いの最中、クリムゾンめがけ破海水が放たれ、直撃。


「クリムゾン!!」


「この程度何でもないわい。ああ!! しかし、くそめんどくさい魚じゃなぁ!!」


四本の腕でなんとか防ぎ切ったようだ。

あのビームの様ような水激をくらっても消し飛ばないとは、流石は“神”を名乗るだけはあるな。

だが、このまま防戦一方じゃ勝ち目は無い。

このままクリムゾンを出していても魔力を消費する一方で、奴はどんどん巨大化しちまう。

どうしたもんか。

攻めあぐねているとノアが(そば)に来る。


「ロードくん、そろそろ電気頂戴?」


「ああ!? こっちも今魔力切れ寸前なんだよ!」


この状況下でノアに電気を分ける余裕なんてない。

こっちは既に魔力が枯渇気味だ。


「でも、電気くれないとノアの方舟消えちゃうよ? みんな死ぬよ?」


確かにノアの方舟があるからこそ攻撃に専念できる。

これが無ければ足場は無いし、かなり戦いは不利だ。

仕方ない。必要経費だ。


「くっ……朔桜! 雷電池を!」


「あっ! うんっ!」


朔桜の宝具で俺の魔力を完全に回復し、ノアに指を咥えさせ、魔力の三割ほどを電気にして給電。

それに加え、クリムゾンとネザーにも魔力を割いている。

無常の眼にも体力を大分もってかれている状況。

クリムゾンは何度も水壁を破ろうと四苦八苦しているが、見た感じ突破できそうにない。

俺は天を仰ぐ。


「後、三分は必要か……」


「何が?」


ノアが俺の言葉に首を傾げる。


「あいつを倒すのに必要な時間だ」


「三分あれば勝てるんだね?」


それを聞きノアは方舟の先端部分まで身軽に飛んでいく。


「面舵一杯?」


一回転し舟先はアルべリアウォカナスの真反対側。


「三分間、逃げ回るよ?」


「いいだろう! (かえ)れ! クリムゾン!」


魔力節約のためクリムゾンを天に還すしかない。

今はノアの戦法に乗るのが一番だ。

突進で方舟を破壊させず、三分間持たせる。


「なになに? 急にどうしたの????」


朔桜は突然の事に動揺している。


「飛ばすよ? みんなしっかり捕まっててね?」


舟は敵を背に全力前進。

方舟が激しく揺れると、朔桜の高い悲鳴が広い大空に響いた。

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