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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
二章 人知の興は禁忌の罪
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二十三話 ノアの方舟

浮上中、Dr.Jから色々と情報を聞き出した。

子供たちを逃がした後、ノアを連れて逃げるため玉手箱を手にした時

突然、玉手箱から瘴気(しょうき)が溢れ、そのまま瘴気に呑まれてしまったらしい。

そして、忌竜アルべリアウォカナス。

見た目は魚だが、空中でも浮遊して移動が可能。

用心深く臆病な性格だが、ひとたび水を見ると性格は豹変。

凶暴な魔獣へと姿を変容させる。だが、本質はそこじゃない。

あれは海水を浴びると途端に成長を始め、数分単位でどんどん海水を体内に吸収。

永遠と巨大になっていく。

その性質は、七割が水で構成されている人間界との相性は抜群。

七日あれば、人間界を完全に滅ぼせるということ。

Drに玉手箱を渡したのは、実体が無く陽炎(かげろう)のように揺らめいた赤黒い影。

この世のものとは思えないオーラを放っていたらしい。

その影が魔界で封じられていたものを、どうやって引っ張り出したのかは不明。

だが、忌竜を箱に詰め持って別世界に持ち込むなんて、只者(ただもの)では無い事は分かった。

影の存在も考慮しなければならないが、まずはあの忌竜が最優先だ。

ロードが思考しているとノアが黒鴉の衣を弱々しく、少し遠慮気味に引っ張る。


「あの……ロードくんって言ったっけ? あなたに頼みがあるんだけどいい……?」


顔を赤らめ、少し恥ずかしそうな表情。


「なんだ?」


「あなたのが……欲しいの……ダメかなぁ……?」


その言葉に一同がギョっとする。

ノアはもじもじして恥ずかしそうにねだっている。


「なななな、なにを言ってるのぉ!?」


朔桜は顔を赤らめ目を丸くしている。


「いひひひひ、罪な男だねぇ」


Dr.はニヤニヤして笑う。


「私はいいと思うわよ?」


ティナは冷静に肯定した。

ロードは顎に手を当て少し考える。


「まあ、多少は戦力になるだろうし、裏切られても海上に出ればこいつに負ける事は

万に一つも無い。いいだろう。だが、面倒事はゴメンだ。変な気は起こすなよ」


「ん、大丈夫だよ?」


「じゃあ、(くわ)えろ」


「ちょっちょちょ! ロード!?!?」


朔桜が顔を真っ赤にして間に割って入るが、俺は人差し指を突き出す。


「えっ?」


「邪魔だ、どけ」


朔桜の頭をを押しのけると、ノアは躊躇なく指根まで深く咥える。


「いくぞ」


「ひいお?」


合図とともにノアがビクビクと震え、声を漏らす。


「しゅごい……、おいひいお?」


その光景を前に朔桜は錯乱。


「ななななにをしているの!?」


「見て分かるだろ。()()だ」


「へ……? 給電?」


想像していたであろう考えとは違う返答に呆気に取られマヌケ面を(さら)す朔桜。


「今回はお前を守ってる暇はない。だから、こいつも十分な戦力として使う。

そいつは賛同していたが、何か問題があるか?」


「盾役は多いに越したことはないからね。朔桜は何を想像していたのかしら?」


いたずら顔で笑うティナに「もーっ」と顔を真っ赤にして反撃してじゃれ合っている。


「微笑ましい光景だね、いひひ」


「吞気に笑ってる場合か。アルべリアウォカナスが逃げてから十分は経つ。そろそろだな?」


「ああ、もう十分な大きさになっているはずだ。そろそろ攻撃を仕掛けてくるかもね」


ノアの給電を終え、朔桜の宝具で魔力を完全に回復した。

全員の準備は万端だ。


「人工宝具、お前何回宝具を使える?」


「呼び方ノアでいいよ。ものによりけりだけど宝具はね~……後、4回はいけるかな?」


「いいだろう。蜘蛛女は朔桜の保護だ」


「お前に言われるまでもない」


ティナは毅然(きぜん)とした態度で命令するなと言わんばかりにロードを(にら)む。


「ならいい。朔桜、お前の宝具は後何回使える?」


ペンダントの光量を見て大体で判断する。


「ん~~っと多分だけど、フル充電三回くらいはできるよ!」


「十分だ。浮上するぞ! 全員、手筈(てはず)通り行動しろ!」


時刻は夕方十六時頃。海中から見る水面は赤く染まっている。

世界の裏側に移るように境界線が飛沫を上げ広大な夕焼け空が迎える。

そのまま上空に上がり、高い位置から全員で周辺を見渡す。


「あった! あそこだよ?」


ノアが指差す先には、大きな潜水艦(せんすいかん)があった。

外傷は無く、無傷で健在だ。


「良かった! 無事みたい!」


朔桜はホッと胸を撫で下ろす。

しかし、それは束の間。


「……待って! その右奥! なんか見えるわ!」


ティナの言った方向に巨大な魚影が見える。


「いひひ……まさか……あれ……」


「あれが忌竜アルべリアウォカナスか」


子供四十人が乗れるほどの大きな潜水艦。

それを優に超える魚影が海中を縦横無尽(じゅうおうむじん)に動き回る。

その大きさは、潜水艦の二十倍近い。


「またバカでかいのを相手にしなきゃいけないのかよ」


ロードが文句を言っていると、巨大な魚影はどんどん潜水艦に近づいていく。

あまりの速さに水面は激しく波打つ。

潜っていたアルべリアウォカナスは徐々に浮上し、その巨大な白い一角を露わにした。

巨体はもう船の目前に迫っている。もう間に合いそうにはない。


「ダメっ! ぶつかっちゃう!」


朔桜は咄嗟(とっさ)に顔を背けるが、Dr.は血相を変えて大声で合図する。


「ノア!」


「分かってるよ?」


腕をピンと伸ばして掌を合わせ、右手を擦り上げる。

激突寸前にノアは己の力を叫ぶ。


「生命を守りし、大いなる器! 出現せよ! ノ ア の 方 舟!!」


詠唱後、突如潜水艦を囲う形で現れた巨大な木舟。

まるで蜃気楼が実体化したかの様にごく自然に世界に馴染んだ。

白い大木で組まれた簡素な造りの船は

現れた途端に荒ぶるアルべリアウォカナスの突進をもろに受ける。

しかし、船は破壊される事もなく、外装に傷一つ無い。


「あの一撃を防いだのか?」


上級魔術でも打ち負ける威力と速度の高速突進。

それをいとも容易く防ぎ切ったのだ。

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