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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
二章 人知の興は禁忌の罪
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二十話 優れモノの弱点

朔桜とティナの活躍により発電機は破壊された。

その影響で照明が落ちたが、真っ暗だった先程とは違い

短時間で改良したのか非常電源が点灯。薄っすらと緑色の明かりが灯るようになった。

しかし、その非常電源は最低限の微々たるもの。ノアの力を(まかな)える程の量ではない。

ノアはもう給電出来なくなり、溜めた分の力しか出すことが出来なくなっていた。


「あいつらが上手くやったようだな。どうする?

これでお前は、残り(わず)かの力で俺を倒す事になった訳だが」


ロードはまだまだ余裕の様子。

だが、対照的にノアの身体はどんどん弱ってきていた。


「後、数回だけ宝具は使えるよ? それで十分だけど?」


「そうか、なら見せてみろ」


風衝を放ち、ノアを壁まで吹き飛ばす。

壁に体を強く打ち付けるもまだ意識はあるようだ。

弱ったノア相手に有利に事運ぶも、ロードの表情は暗い。

するとあろうことか、ロードがノアに電撃を放つ。

ノアは電撃を吸収し、みるみるうちに力を取り戻していく。


「なんのつもり?」


怪訝(けげん)な顔でロードの顔を(にら)みつけた。

しかし、問いには答えず、電撃を放ち続ける。


「これで対等くらいだろう」


ロードは自分の半分ほどのエナを使いノアに電気を与えていた。


「何がしたいの?」


ノアは理解不能だと首を傾げている。


「弱った相手を倒しても勝った気がしない。

対等な条件でキッチリとお前を()じ伏せたいだけだ」


「あなた……バカなの?」


「最初に戦った時、何故だかお前は俺の力を知っていたな?

だが、俺はお前の能力を知らなかった」


「確かに。そうだね?」


「情報量的に俺が圧倒不利だった。なら負けてもしゃーない。だが、今は違う。

俺もお前に雷が効かないと分かり、宝具の能力も分かった。これでやっと対等だ」


「それだけノアに負けたのが悔しかったんだね?

でも、まだ私には隠している奥の手あるけど?」


「黙れ。俺にもまだ奥の手はある。

だから対等だ。この条件でもう一度戦え」


最初に負けた事を相当、根に持っていた。

ロードが勝った相手は指で数える量を遥かに超えている。

だが、負けた数は片手で数えられる程度。年下に負けたのはこれが初めてだ。

それが極度に負けず嫌いの魔人に闘争心に火を付けた。


「あなた、面白いね?

いいよ、これでノアも負ける訳にはいかないし?」


「行くぞ!」


両者互いに駆け出し、二人のぶつかり合った拳から火花が散る。

ノアは一度退くとロードに変化。

本物と遜色(そんしょく)ない速さで迫り、体術を繰り出す。

ロードもそれに付き合い、拳と蹴りで打ち合う。

まるで鏡を前に演舞しているかの様だ。

ロードは一度後退し、遠距離から紫電を放つ。

広範囲に広がる電撃を、ノアはいとも容易く風壁で防ぐ。

ロードは電撃で視界を眩ませた一瞬の隙に

剛雷拳―兜割(かぶとわり)で風壁を叩き割り、そのままノアに打ち込む。

しかし、拳が当たる寸前、ノアは小さな二枚貝に姿を変え、攻撃をかわす。

貝は突如、ロードと同じくらいの大きさになり、二枚の貝殻でロードを挟み込む。

ロードは風壁―球を出し、貝の攻撃から身を守った。

すると薄暗い貝の奥から分身したノアが現れた。


「君、成長しないね?」


最初の戦いと同じ展開を繰り返す事を嘲笑(あざ)う。

しかし、それはロードの想定通り。


「さて、それはどうだかな」


すぐに風壁を解き、貝の挟みをかわして数歩後ろに下がる。


「逃がさないよっ?」


それを追う形で、貝から出たノアをまんまと誘い出す事に成功。

ロードは黒鴉の衣で目を隠し、術を唱えた。


「閃雷!」


放った雷光は至近距離で直視すると、網膜(もうまく)が焼けるほどの熱を放つ。

ノアは咄嗟に目を()らすも、人工宝具『鵜の目鷹の目』『敏感感覚』があり

鳥より優れた目と常人よりも五感が二十倍になっているため

目玉に酸をかけられながら、ドリルで抉られるているかの様な想像を絶する激痛が襲う。

目を抑えながら地面で(うずくま)るノア。


「お前を倒すのに強力な魔術や優れた道具は必要ない。

優れた力。それこそがお前の美点であり、弱点だ。

視力や五感が優れすぎなのも考えものだな」


ロードの言葉は一切彼女の耳に届いていない。今彼女の脳を支配しているのは激痛だけだ。


「消えろ」


四本の指先をピッタリと合わせ突き刺した手は、(うずくま)るノアの背中を綺麗に貫いた。

ノアは口から赤い液体を吐き、徐々に透けて静かに消えていく。


「さて、貝。お前は……」


どうすると続けようとしたが、それまで静かにしていた二枚貝は変身を解き、ノアの姿に戻った。

かと思えば、そのまま地面に倒れる。

近づいて様子をみると、どうやら気絶しているみたいだ。

宝具の力を使い果たした電池切れなのか、それとも痛覚がリンクしていたのかは定かではないが

このリベンジマッチは見事、ロードの勝利で収まった。

普段なら情け容赦なく殺すところだが、恐らく今の戦いで戦えるエネルギーをほぼ使い切っている。もう脅威ではない。

人工宝具というのなら、まだ利用価値がある。早急に処分するのは軽率だ。

いつ起きても対応できる距離を保ったまま、気絶したノアを風の術で浮かして運ぶ。

スクラップ場へ続く階段の扉を開けようと近づいた瞬間

異様な殺気を放つ何かが、ドアを激しく吹き飛ばす。

ロードは身を後ろに退き、それを瞬時にかわした。


「虫けらの分際で……無駄な力を使わせるな」


呆れた顔でその相手を見る。


「あら、いたのね? 気がつかなかったわ」


出会い頭すぐに一触即発寸前の二人の真ん中に慌てて少女が止めに入る。


「ちょっと! ロードも(てぃな)もストップ! ストップ~~~!」


階段から現れたのはティナと朔桜。

二人とも服は(すす)だらけだが、とくに目立った外傷は無い。

朔桜はぐったりと浮いているノアを見て状況を理解する。


「ロード、勝ったんだね!」


飛び跳ねそうな勢いで嬉しさを表現する朔桜。


「当たり前だ」


「でも、ノアちゃんは死んじゃったの?」


「いや、気を失っているだけだ。こいつには利用価値がある。このまま拾っていく」


「あなたが機械人形好きのロリコンだったとはね。魔界に帰った時、いい話のネタになるわ」


「帰った時? お前はこのままここに置いていく。精々、鉄くずと一緒に海底で良い余生を過ごせ」


「なら最後にここでケリをつけましょ? なあなあで終わるのは私の沽券(こけん)に関わるわ」


「いいだろう、かかってこい蜘蛛女」


朔桜が一度止めたにも関わらず、またも喧嘩が始まってしまった。


「二人共! まだ子供たちを救出してないよ! 喧嘩はその後にして!!!」


大きく張り上げた朔桜の声で二人は拳を収める。


「まあ、いいだろう。話は後だ。とりあえずエナの回復を」


ロードの差し出した手に朔桜がペンダントを当て宝具『雷電池』の力で、

失ったエナを完全に回復させる。


「多分、子供たちはこの階か、一個上の階だと思う! 早く助けに行こう!」


上の階に行こうとしたロードたちの行く手を一人の男が阻んだ。


「それは無理だよ」


くすんだ眼鏡に濁った目。

髪はボサボサで目に深いクマも出来ている。

病的に白い肌と痩せた身体。

歳は三十代くらいの薄汚れた白衣が似合うここ竜宮城の主。

ノアを作り出した天才、Dr.Jの姿がそこにはあった。

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