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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
二章 人知の興は禁忌の罪
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十八話 姦しい戦い

ロードが二階で戦っていると同刻、朔桜は発電所を守り吸電を続けるノアと対峙していた。


「よくもまあノコノコとノアの前に出てこれるね?

逃げたら殺すって言ったの忘れたのかなぁ?

……まあいいや、あなたが来たところでどうせ何も出来ないしね?」


呆れたように欠伸(あくび)をして気だるげに首を傾けるノア。


「それはどうかな? 流石になんの策も無しにはこんな所まで来ないよ?」


ノアがここに居るのは、当初の予定とは異なる。

だが、朔桜は含みを持った言い方をして、精一杯自信あり気に話す。


「まさか……ここを壊す道具を持っている……?

あの魔人と一度合流したなら、その可能性もあり得る……?」


独り言を呟きながら、視線を私も首元に移す。

服の下に微かに覗かせたピンクゴールドのペンダントチェーンの存在に気が付くと

傾げた首を戻し、目の色を変えた。


「ふーん、先に研究室に行ってそれを取り戻していたんだ?」


「そうだよ! これのペンダントがあればそんな機械一撃で壊せるんだから!」


自信に満ちた大きな声を張り上げて言い放つ。

しかし、それは虚勢。真っ赤な嘘だ。

もしノアと対峙してしまった時はプランBへと変更される。

事前の作戦で決まったプランBの朔桜の役目は、発電所を壊す事でも、ノアを倒す事でもない。

()()()()()()()()()()()


今回は一人一人が作戦の要を担っている。

一人でも役割をこなせなければ、吸電して力を取り戻したノアに全滅させられて終わりだ。

当初決めた作戦とは違うが、ノアはペンダントを危険なものだと勘違いしている。

朔桜はそれに便乗し、その方向性で作戦を進める事にした。

朔桜は左手の人差し指を前に突き出し、彼女の反応を見てすぐに別の動作に入る。


「了解っと……」


両方の頬を両手で二回叩く。

そんな私の行動をノアは不審そうに見ていた。


「ふざけているの?」


腕に巻いていた透き通るようなきめ細かい布が、空を切り一直線でこちらに迫る。


「っと!」


唐突な攻撃を身を転がし、慌ててかわす。


「ひ~あっぶなかった。でも大丈夫!」


元気さをアピールするように軽くジャンプして見せる。


「ノアを(あお)っているの?」


「えっ……いや、そんなつもりはないけど……」


「なら喧嘩を売っているのね?」


ノアは少し怒りの混じった口調になり、布を捻じって先端を鋭利に尖らせた。


「串刺しになって?」


両手両足の四枚の尖った布が朔桜を襲う。

流石に命の危機を感じた朔桜は、天井に向かって頭の上で両手で×マークを作り

ヘルプの合図を出す。

そのサインに応え、天井から突如現れた八本の黒い槍。


八つ脚の捕食者(スパイダー)!」


鋭い八本の脚は、一本ずつでノアの四枚の布を突き刺し、その勢いを封殺する。

そして残った四本の脚は、ノアの後ろにある発電所に真直ぐ向かう。


「よし、もらったわ!」


脚が発電所に刺さる寸前、空間が歪んだかのように見えない何かが動き、素早く叩き落された。


「バカなっ!?」


その異変を察知し、妖艶(ようえん)で上品な黒いドレスを着た少女が

宙で(ひるがえ)り、朔桜の前に姿を現す。


(てぃな)大丈夫!?」


「朔桜、私の後ろから離れないで」


朔桜はすぐにティナの後ろに身を隠す。


「へー、侵入者もう一人居たんだぁ?」


ノアはティナを見ても冷静のまま。

後ろの発電所は夏のアスファルトにできる陽炎のように揺らめいている。


「熱? いや、何かがおかしい」


ティナがそう感じた瞬間、空間を揺らめかせ大きな根の様なものが

二人に向かって伸びてくる。

ティナは咄嗟に脚でそれを防いだが、反動によろめく。


「くっ! なに? さっきといい、見えない攻撃?」


動揺するティナを見て、ノアはただ静かに笑みを浮かべて佇んでいる。


「朔桜、作戦失敗よ。フォン・ディオスに伝えて」


「わっ……分かった!」


慌てて黒鏡を取り出し、ロードに通信する。


「ロードっ!? こちら作戦失敗!」


「知っている! 俺の前に居る忌々(いまいま)しいガキから今、聞いた!

作戦を変更、プランCだ!」


「プランC……えーっと……なんだっけ?」


「そこのしくじった蜘蛛女から聞け! こっちは忙しいんだっ……くっ……!」

 

声の後ろから荒々しくぶつかる音が聞こえる。

向こうはノアの分身と絶賛戦闘中。

この場はどうにか朔桜とティナ、二人で切り抜けるしかないのだ。


「了解! ロード気を付けてね!」


「お前らもな」


それだけ言い残すと、すぐさま通信を切ってしまった。


「あいつ、なんだって?」


「えーっとプランCに変更だって!」


「プランC!? あいつ、戻ったら殺してやるわ!」


ティナは鬼のような形相に変わる。


「なんでそんなに怒ってるの?」


「プランCは朔桜、()()()()()()()()()()()()


「……え、私がぁ!?」


無茶苦茶な作戦無いように朔桜は遅れて驚く。


「でも大丈夫。私が全部殺す。朔桜は発電所を手早く壊せそうな方法だけ考えて。

そしたら私がその方法で破壊するから」


「でも、それだと明の負担が……」


「大丈夫よ、朔桜に危ないことはさせられないわ」


「明……」


二人で作戦会議をしていると不意にノアが口を(はさ)む。


「魔人はノアの相手で忙しいからね? 助けを期待しないほうがいいよ?」


「期待? 元々、あいつをあてになんてしていないわ。あなたなんて私で十分」


強い口調でノアを威圧するが、ノアは引けを取らない。


「奇襲を失敗したあなた程度が、ノアを倒せる訳ないよ?」


「クソガキ、少々お口が過ぎるようね。お姉さんが(しつけ)てあげるわ」


魔装『八つ脚の捕食者』を大きく広げ、戦闘態勢に入るティナ。

それに応えるように、ノアは布を漂わせる。

そして、女同士の戦いが始まった。

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