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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 裁き 十二神域なりし時
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三十七話 二融精剣

三体の“冥呑(メイン)”にたった一人で立ち向かうカウル。

“冥呑”の一体である巨大蛙が生み出した

大量の御玉杓子が口から無数の爆発する粒を吐いて攻撃を仕掛ける。


「青帝!」


空間を湾曲させ、再び全ての攻撃を凌ぐ。

そして、今度はカウルがいち早く仕掛けた。

風の精霊術で空踏(そらぶ)みで空気を蹴り進み、一瞬で蛙との距離を詰める。

カウルは両手に『四精剣―青龍』と『四精剣―白虎』を取り出し

二本の四精剣を合わせると、二本の剣が眩い光を放って融合する。

古来から広大な精霊界の東西南北を守る四精剣は

互いの力に協調し、高みへと向上変化させる力を持つ。

それこそが“高天原”で永い暇を過ごしたカウルが得た力。

二本の四精剣を一本の青白い剣へと変化させると同時に四本の丸まった巨大な尾がカウルを襲う。


二融精剣(リャンユウセイケン)龍虎嵐ルコラン!」


鋭利な剣を目で追えないほど素早く振ると鋭い竜巻が発生。

迫り来る尻尾をバラバラに切り刻み、そのまま巨大な蛙をも一瞬で肉塊へと変えた。

細かな肉片はエナへと散る。

カウルの圧倒的な一撃に顔色を変えたのは、大型蝙蝠。

即座に不規則な動きを繰り返し、カウルの攻撃の射程距離から外れようと図る。

だが、カウルは空踏みで即座に追撃。逃げる暇を与えない。

一つに融合した剣を二つに分離させ、再び一つの剣へと融合させる。


二融精剣(リャンユウセイケン)虎龍吠コルボー!」


青白い獣のような荒々しい剣へと変化。

振るうと巨大な斬撃が放たれる。

蝙蝠は不規則な激しい動きでかわそうとするも、斬撃はその動きに完全に合わせて追撃。

逃げきれないと悟った蝙蝠は超音波を放ち、斬撃を打ち消そうとする。


「風旋衝!」


カウルの手から放たれた風が渦を巻き、山をも吹き飛ばす威力の超音波を掻き消す。


「もらった!」


追尾の斬撃が蝙蝠を片翼を切り落とし、カウルの剣が蝙蝠を腹部を深々と裂いた。


「次っ!」


最後の標的は地上でカウルの動きを静かに観察していた氷の騎士。

騎士は空気中の水分を一瞬で集め凝固。氷の剣を生成した。

カウルは二つの剣を分離させて異空間へと戻すと

新たに『四精剣―朱雀』と『四精剣―玄武』を取り出す。

氷の騎士は駆け出しつつ、地面から鋭い氷と空中から大きな氷撃を放つ。

迫り来る攻撃にカウルは怯む事なく前進。

地面から飛び出す氷を広範囲の聖なる炎で焼き払い、空中からの氷撃を玄帝で防ぐ。

カウルの猪突猛進の行動に怯んだ氷の騎士は少し迷うと氷撃を大量に撒き、カウルの足を止めさせた。

騎士は後方に身を退くとカウルの居た場所に狙いを定め、地面から氷を突き刺そうと構える。

煙が晴れる間際、カウルは飛び出した。

低姿勢で駆け出し、氷の騎士との距離を一気に詰める。


「これで終わりだ!」


『四精剣―朱雀』を振るうと、煌びやかな炎が氷の騎士をドロドロと溶かす。

勝ちを確信したカウルだったが、感覚で体重を前方に倒し

背後からの氷の剣の一振りを防五段階一でかわした。

溶かしたのは氷の騎士の氷の分身体。

本物は大気中に分散し、姿を消していたのだ。

カウルは身を回転させ、朱雀で具現化した騎士の腕を斬る。

騎士の背後から放たれた氷撃は『四精剣―玄武』で全て防ぐと

二本の剣を重ね合わせ融合させる。


二融精剣(リャンユウセイケン)武雀穿ブゥスゥセン


透過されたような赤緑のボウガンへと変化。装填されている金属製の豪華な矢に炎が灯る。

氷の騎士が具現化すると

両手で氷の騎士の頭部に狙いを定めて放つ。

全てを貫く凄まじい威力の矢は閃光のように一直線に飛び、騎士の頭部を易々と貫いた。

氷の騎士は爆散。矢は勢いを落とす事なく、後方で悠々とくつろぐ精霊女王へと迫る。

だが、彼女はかわす仕草すらしない。そもそも戦いを見ていない。

矢が直撃する寸前で何かに矢が弾き飛ばされた。


「主様、生まれたばかりとはいえ“冥呑”三体を一瞬で(ほふ)った男。少しは警戒してもよろしいかと」


「何故、(わらわ)が警戒しなければいけないの?

貴方が警戒すれば事足りる事でしょ? アルフ」


アルフと呼ばれるその存在が現れた瞬間

カウルの持つ『二融精剣―武雀穿』が激しく騒ぎ出す。


「なっ! どうした!?」


今までに一度も無かった剣の反応にカウルも戸惑いを隠せない。


「申し遅れました。“四精獣”の主」


突如として現れたのは、執事服を着た人型の大鷲。

手には白い分厚い手袋。上着の内から扇状に広がった尾が飛び出している。

雑音の一切ない二足歩行でカウルへと近づく。

芯の通ったブレない動きを見て、一目で只者ではないと察しが付く。


「精霊界を救った勇者カウル様に大変失礼を致しました」


大鷲は深々と頭を下げる。姿勢を正すと胸に手を当て、自身の存在を示す。


「私は精霊女王ティターニア様の私精霊御側付き(アルフレッド)

精霊界の守護者である“四精獣”青龍、朱雀、玄武、白虎をこの身一つで殺した者。

お気軽にアルフとでもお呼びくださいませ」


「――――」


カウルはその言葉を聞いて言葉を失う。

精霊界の安寧と均衡を根本から破壊した()()が突如として現れた。

四精剣が荒ぶるのも無理はない。目の前に自身の仇が姿を現したのだから。


「お前が……一人でこいつらを?」


「ええ。まさか、剣に転生しているとは思いもしませんでしたが。実に恐ろしい執念だ」


生前の“四精獣”たちは消滅する間際に最後の力を振り絞り、自身の肉体を再構築。

その身を剣へと変えて各地に散り、姿を隠すため自らを封印した。

彼らは精霊女王と産み落とされた災厄から精霊界を救う“勇者”が現れるのを永い間待った。

剣と一心同体のカウルに彼らの無念の感情が流れ込む。

今、選ばれし“勇者”と“四精剣”が共に過去の因縁と向かい合う。


『四精剣―白虎』と『四精剣―青龍』を取り出し『二融精剣―虎龍吠』へと融合させた。


「やってやろうぜ相棒たち! 俺らの運命を賭けた再戦だ!」


意気込むカウルは融合した四精剣を両手に力強く握る。


「どうぞお手柔らかに」


冷静沈着なアルフは精霊界の秩序を破壊した怪物は襟を正して一礼すると

鋭い眼光を輝かせ、静かに大きな拳を構えるのだった。

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