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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 裁き 十二神域なりし時
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二十九話 粛清の大天使

Ⅹ席(テック)チンロウトウへのリベンジを果たしたロードはツグミに視線を移す。

ツグミが背負った布から取り出したのは、神殿から外し背負っていた“正常盤”。

ロードは自身と立ったまま意識を失っていたチンロウトウを正常に戻し、彼を復元された地面へと寝かせる。

そして、少しの暇を過ごした。


「――――」


「――――ロード、ロード!」


「ん、あぁ……ツグミか」


「随分と暇を使ったわね」


「暇って……神を複数けしかけても互角に戦ってた化け物相手だぞ。無茶言うな」


「どうや|成()()()みたいね。急ぐよ」


ツグミが先に駆け出すとロードもその後を追い並走する。


「なんの話だ?」


「こっちの話」


「?」


ツグミは周囲に気配を広げ、戦況を推し量る。


「多分だけどあいつら二人の戦いはもう終わってる」


「どいつが勝ち残った!?」


「カウル。と、不快ながらゼルノ・アーフェリン」


「よし!」


ツグミの報告を聞きロードは腰元でガッツポーズを決める。


「神域の“裁きの調停者(テスタメント)”って言っても結局は能力の相性勝負だ。ここまでは俺の計画通りだ」


「でも彼らもかなり際どい戦いだったはずよ。私たちは回復出来る“正常盤”があるけど、彼らは負傷という予断を許さない。

最悪、戦闘不能になっている可能性もある」


「だからこそ俺らがわざわざ外れくじを引いてんだろうが」


「それもそうね。特大の大外れくじ」


「最悪な事は考えるな。そもそもこの作戦自体が不確定要素満載の最低最悪の作戦だ」


「今となっては本当になんで私はこの作戦に乗ったのかが不思議でしょうがないわ」


「んなもん単純だ。お前も高天原を出てやるべき事があるからだろ?」


ロードが含んだ笑みでツグミの顔を見るとツグミも含んだ笑みで返す。


「そうね」


「互いにここからが真の正念場だ。特にツグミ。お前は力入れろよ」


「そうは言われても、ここから先の展開はそれこそ神頼み。

どうなるかは運次第。《八雷神》様に祈っておいて」


「何を祈るというんだ?」


突如、空から男の問いが響くと

ロードとツグミは瞬時に身を(ひるがえ)す。


「――――っ」


二人が天を見上げると白い羽を舞い散らせ、ロード・フォン・ディオスに戦わずして敗北を理解させた大天使。

神に値する神位。上席のⅢ席(サネル)ルシファーが降臨した。


「私たちに少しでもツキがありますように些細な頼み事よ」


「残念だが、そんな願いは届かない。それが現実だ」


「わざわざそんな嫌味を言いに来たの?」


唐突な出現に同様しながらも、ツグミは会話でこの場の状況を整える。

その間にロードは惜しみなく《無常の眼》を開眼した。


「そう思うか?」


「いいえ。秩序を乱した者たちを粛清に来たのかしら?」


「理解が早くて助かる」


ルシファーは聖剣をロードたちへと翳す。白いオーラ放つ異常な神々しさ。

初代六大天使を三体も斬り裂いた悪魔よりも悪魔的な聖剣。

名を『粛天(アテュラソーン)』。


「省みろ、これは貴様らへの天罰だ」


振り翳された聖剣から放たれた周囲一帯を跡形も無く浄化する“白”の斬撃。

言葉の通りの別格の威力であり、天罰と言うに等しい粛清の閃光。

触れた瞬間、その身は無に帰す。常識の域では決して耐えきれる威力ではない。

ルシファーは斬撃で浄化され、何もかもが消し飛んだ荒野の地を見下ろし感心の声を漏らした。


「ほう……」


そこには八雷神ライトニングに跨り、光と化し神速でルシファーの攻撃を凌いだロードとツグミの姿があった。


「発動が少し遅いわ。間一髪だったわよ?」


「ぐちぐちと文句を言うな! 俺が全力でバックアップする! お前はとっとと奴を攻め落とす事に集中しろ!!」


「やれやれ頼りにならない騎士様だわ」


ツグミはライトニングの背から一足で天空のルシファーへと迫り刀を振るう。

ルシファーはその太刀筋をしっかりと見据え完全に攻撃をかわす。

ロードとライトニングが降下するツグミを拾い地面へと降りると

高天原の再生が始まり、周囲は元通りの楽園の風景に戻った。


「神使いの魔人と降神の巫女か。不足ない相手だ」


ルシファーは二人を力を振るう敵と認め見下ろす。


「まずはあいつから制空権を奪う!」


ツグミは綺麗な柱のように真っすぐに立ち、両手をしっかりと組み合わせて神々へと祈る。


「八百万の神々よ。我が呼び掛けに応え、我が身を依代にその力を貸し与えたまえ」


“八百万”存在する神々の一柱を自身の身に一時的に降ろす能力《神降(かみおろし)》。

縁が深い神ほど降ろしに応じてくれる可能性が上がる。

神の力を得たツグミはまさに神そのものと化し、その神由来の圧倒的な能力を行使できる。


「降神―タケミカヅチ!」 


天から光柱が落ち、ツグミの全身を包み込んだ。

彼女の黒点のような真っ黒な瞳孔は白月のように真っ白に変わり

全身に帯電した電撃が、激しく音を立てて(ほとばし)り、膨大なエナが溢れ出す。

神域の少女は、神位の神へと昇華した。


「さあ、再度堕ちてもらいましょうか。堕天の大天使様」


今まで表情一つ変えなかったルシファーは、ツグミの言葉で僅かに表情を歪ませるのであった。

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