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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 裁き 十二神域なりし時
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二十四話 疫病神と精霊の主

カウルとベーゼンが放った二つの斬撃が周囲一帯を薙ぎ払い崩壊させた。

その様子を他人の居城のてっぺんから傍観する者が一人。


「キキッ……マジで始めちまったよ」


ゼルノがギザギザの歯を出して楽しそうに笑う。


「人の居城で“裁きの調停者(テスタメント)”同士の殺し合いを傍観しているなんて、随分といい趣味してるね」


「そんな褒められても、大したものは出ないさぁ~」


現れたのは居城の主。Ⅸ席(ナディラ)ラミュ・ラミュレット。

自身の傍らには、すでに武装した鳥人の精霊ヴィザムと全身に鎧を纏ったネタルファ神霊級の精霊二体が控えている。


「確か、ゼルノ・アーフェリンだっけ? 何か私に御用かしら?」


「おぉ~怖い怖い~。そんな敵意を剥き出しにしないでほしいさぁ~」


ゼルノは両手を上げて害はないとアピールする。


「私の勘がね。何か大きな事が起きるっていっているの。

それを起こすのは貴方? それとも彼ら?」


「さぁ? 何の話をしているのか全く分からないさぁ~」


ゼルノはわざとわざとらしく(とぼ)ける。

だが、言葉とは裏腹に歯を?き出して笑っていた。


「そう。お暇なら少しこの子たちのお遊びに付き合ってもらってもいいかしら?」


「もちろん。レディのお誘いを無下にしたりはしないさぁ」


「みゅう。じゃあ遠慮なく。反逆者」


ラミュが手を前に伸ばすと一瞬で二体の精霊がゼルノに襲い掛かる。

遊びの次元ではない。正真正銘、真っ当な処刑だ。

だが、ゼルノは動く素振りなど見せずその場で佇んでいた。


「キキッ」


ゼルノが笑うと二体の精霊はゼルノに触れる寸前で止まっていた。


「神霊級とはいえ、所詮はただの生物。この俺に敵うはずがないさぁ」


「貴方の能力……確か……《感染爆発(パンデミック)》!」


「そうさぁ! どんな生物もこの俺には敵わない!

どんな菌も即座に培養出来る万能の細菌兵器さぁ!」


「ヴィザム、ネタルファ戻って!」


ラミュは動けなくなった二体をエナへと変え、強制的に戻す。


「岩の化身ならどう!? 来て、プリガン!」


大岩の大男が地面を突き上げ出現した。

その大きさはラミュの居城にも匹敵する。

その硬度は天界最硬の鉱石極鋼(アルティメイト)とほぼ同等。

神霊級の精霊だ。


「これまた凄いのが出て来たさぁ~」


目線同じくして巨大な瞳に睨み付けられるゼルノだが余裕は消えていない。


「解析。培養」


ゼルノはその鋭い眼で睨み返し、プリガンを即座に観察。

プリガンに対応した菌を練り上げて培養する。


「劣化。岩溶化。崩壊。散布」


空っぽの手のひらを開き何かを撒く仕草をすると

プリガンの身体は突如として劣化し罅割れてゆく。

それに加え、岩の強固な身体は泥のように溶け始め、砂のように崩壊を始めた。


「嘘でしょ……神霊級の岩の精霊よ!? 無機物の身体なのにどうして……」


「無機物、有機物は関係ないさぁ。最初に言っただろ?

“どんな生物も”って。“命あるモノ”は全てが俺の菌の餌さぁ」


「戻って! プリガン!」


ラミュはプリガンが死に至る寸前でエナへと変え

プリガンはギリギリ一命を取り留めた。


「さぁ。神霊格を使役する精霊に愛されし少女ラミュ・ラミュレット。

次は何を出す? 燃え盛る炎の精霊? それとも自由自在な水の精霊か? 

それとも命を刈り取る死霊なんかもいるのかさぁ? 

七百以上使役するその物量でゴリ押すか? それとも最強の精霊神獣で勝負を掛けるかぁ?」


ゼルノはラミュの次の手を楽しみにギザギザの歯を出して笑う。

出て来た生物を即座に解析し、対応した菌を作る事を楽む。

まるで問題を解くかのように生物を蝕み殺す。

それが“人魔戦争”の最大の殺戮者。ゼルノ・アーフェリンという存在。

“疫病神”と一言で表すのが最も適切だ。

一体一体の精霊を愛し、情を注ぐラミュには最大の難敵である。


「ダメ、抑えてみんなっ! みんなを失いたくないのっ!」


ラミュは内なる精霊たちと揉めている。

ラミュを守るため多くの精霊が自身が犠牲になる事を厭わず

ゼルノ・アーフェリンという疫病を払おうとしていた。


「キキッ! 何が何体出てこようと構わないさぁ~。

ほら、早くしないと主が死んでしまうさぁ~」


鋭い斬撃の菌がラミュを襲う。

その速度は常人には捉えられない。


「っ!」


斬撃からラミュを庇ったのは、小さなカビの精霊だった。


「カビマルーッ!」


ラミュがその名を口にすると同時に

大切な家族の一人カビマルは満足した笑顔で主を危機を救い、その命を終えた。


「――――」


ラミュは絶句する。

最強故に負けず、最強故に守り抜いてきた家族を初めて失った。


「キキッ! 目、覚めたか?」


ラミュの目は光を失い、既に感情は消えていた。


「来て。黄龍」


淡々と発したその言葉により

周囲に轟く雷鳴が響き、広大な“高天原”の空を覆うほどの

無尽蔵な根が天に張り巡らされ、金色に輝く龍が顕現した。


「“戒律”なんてもうどうでもいいや……。お前、殺すね」


その刹那、天に張り巡らされた根から無数の神速の閃光が放たれ周囲は白に染まる。

有無を言わさず、ゼルノ・アーフェリンを一瞬で蒸発させたのだった。

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