二十一話 有益な情報
ロード、カウル、ツグミに加え、ゼルノも“高天原”脱出組に加わった。
「これで四人。単純に考えて相手にするのは、その倍の八席だが
先にお前の持っているいい情報ってのを聞かせろ」
「了解さぁ~。まずは質問だ、ロード・フォン・ディオス。
お前はこの秩序の空間“高天原”の“戒律”を覚えているか?」
「“戒律”
・部外者への情報開示を禁ズ。
・自害を禁ズ。
・調停者の殺害を禁ズ。
・二席城、十二席城への侵入を禁ズ。
・破りしモノは永久の死を。だろ?」
ロードはツグミから一度聞かされていたものを完全に暗記していた。
「完璧さぁ。この一から三項まではざっくりとした“高天原”での禁止事項だ。
そして、最後の文言は恐らく、上記の法を犯したモノへの永遠の罰だろう。
注目するのは、四項目・二席城、十二席城への侵入を禁ズ。だ。
禁止するなら、そもそも十二席の必要は無いだろう?」
「まあ、確かにな」
「そんで、俺は興味本位でこの二つの城に侵入してきたワケさぁ」
「はぁ!?」
「はぁ!?!?」
カウルとツグミの声が綺麗に重なる。
「お前、イカれてんのか……?」
「あんた何考えてるの?」
「まあまあ、落ち着いてほしいさぁ。
俺は“戒律”を破った。でもこの通り、永久の死は訪れていないだろう?
つまり、四項目は後から追加された偽りの法だとこの身で証明したって訳さぁ」
「だからなんだってんだ」
「まあまあ、急ぎなさるな。本題はここから。
Ⅻ席の居城の中は物が何も無く
本人だけが中央で直立していて無数の光の糸みたいなモノが全身を地面に縛り付けていた。
あれは多分、封印か拘束をされている感じだったさぁ」
「Ⅻ席の姿を見たのか!? 俺長年ここに居るけど一回も見た事ないぞ!」
この場で最も永く“高天原”に居るカウルも驚いている。
「見た、見たぁ! あれは恐らく、天界の天使。
そして、能力は《一定範囲に近づく生物を殺す》能力だろうと推察したさぁ」
「天使? 殺す能力? 何故そう思う?」
「天使の根拠は奴の素材、極鋼。
能力については俺の能力に関係するので詳細は言わない。
だが、ほぼ確定だと思っていいさぁ」
「《一定範囲に近づく生物を殺す》能力の天使か……」
ロードは顎に手を当て何か利用出来ないかと考え込む。
「まだ思考するには早いさぁ。最も重要なのはここから。
Ⅻ席の城の内部には、“高天ヶ原”の核がある」
「っ!? おい、それは確かか!?」
「ああ、もちろん。こっちは断言出来る」
ゼルノはロードの言葉に自信を持って頷く。
「恐らくあの天使に核を守らせているんだろうさぁ」
「核ってからには、それを壊せば“高天ヶ原”が崩れるのか?」
「さあなぁ。流石に、そこまでは分からないさぁ」
「だが、有益すぎる情報には違いない」
新たな攻略の可能性にロードに希望が生まれる。
「そうだ、もう一体のⅡ席の情報ってのはなんなんだ?」
「あ~Ⅱ席の情報は、奴の名と状況さぁ」
「お前、Ⅱ席の名も知ってるのかよ!」
カウルが再び驚く。
「ああ、知っているとも。一目見た瞬間理解した。
ロード・フォン・ディオス。お前もその名を聞けば、分かるはずさぁ~キキッ」
ゼルノは顔を顰めるロードの表情を面白そうに窺い、悠長に笑っている。
「勿体ぶらずにさっさと言え」
ツグミは強い口調でゼルノを冷たく急かした。
「やれやれ、余裕の無い女さぁ~。ごほん、いいか? よく聞け?
Ⅱ席は居城の地上から地下まで余すところなく、ぎっちりと詰められている全長千メートルはある巨大な黒竜。
奴は巨大な槍で脳天から尾まで貫かれ、生きながらにして殺され続け、封印されている
魔界六国の火国、水国、雷国、風国、樹国、地国の“初代十二貴族”
計、七十二の悪魔が集い、造り出した歴代最悪の負の遺産にして、争いの黒種火」
「おい……それってまさか――――」
そこまで言われロードも理解した。
魔界の貴族で知らぬ者など存在しない。
「そう。与えられし名は……“魔神竜”ソロモン。
その莫大な力により世界に顕現したと同時に世界に裁かれた欠陥にして欠落した災悪の魔神さぁ」




