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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 裁き 十二神域なりし時
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十七話 教育係の指導

時の概念が無い永遠が約束された浮遊する広大な島、高天原。

その中心部にある神々が集う神殿に隣接した広場でロードとツグミが真剣な面持ちで対峙する。

精霊界を救った英雄 勇者カウルは地面に胡坐(あぐら)をかき二人の様子を見学していた。


「ロード、まずはお前の“教育係(サペリア)”として正しいエナの使い方を教えよう」


人差し指と中指を合わせ、胸の前で忍者のように構える。


「ロード、私に何か魔術を撃ってみて」


ツグミの指示に従いロードは手を前に構え魔術を唱えた。


「爆雷」


手から稲妻(ほとば)る電撃がツグミ目掛けて放たれる。

しかし、攻撃はツグミに届くより遥か手前で爆発した。

爆風は何かに阻まれたように後方にのみ吹き荒れる。


「これがエナを凝縮し具現化させた無色透明の盾。気盾(きだて)


「気盾……そういえば、師匠が使ってたな」


師匠とは精霊界のイシデムで出会ったポテの事だ。

一週間の鍛錬の時、ロード相手に使う事もしばしばあった。


「これは人間界由来の気術。エナを持ち卓越した技術があれば使えるようになる」


気盾を使える者は優れし者の証。

一長一短で使えるような術ではない。


「それにこんな事も」


ツグミが左手で持っていた胡桃を弾くと、構えた指先を動かして胡桃を宙に浮かす。

空をなぞるように指を素早く動かすと胡桃を羽根付きのように数回弾く。

胡桃が地面に落ちると上から気盾を落とし、固い胡桃の殻は粉々に潰した。


「応用でモノを空中に浮かせたり、弾いたり、押し潰したり出来る」


初めて対峙した時ロードを吹き飛ばし

正常盤(せいじょうばん)”で目覚めたロードを抑制した攻撃の正体だ。


「気盾の対となる気攻(きこう)っていう攻撃特化の気術もあるわ。

とりあえず、気術は何かにおいて便利だから覚えておいて損は無い。

私の後に続いてやってみて」


ツグミは懐から胡桃(くるみ)を一つ取り出し、ロードに向かって投げた。


「気盾ってのはこれか?」


ロードは当然のように胡桃を気盾で受け止めて空中に留める。

何度か弾き上から圧を加え、粉々に押し潰すところまで再現してみせた。


「貴方……気盾使えたの?」


ツグミはロードの呑み込みの早さに驚きを隠せない。


「いや、今のが初めてだ。だが、要領は風の魔術と同じ。

むしろ、風術の方がエナに風を加える事で使用するエナを抑えられるからコスパがいいまである」


毅然(きぜん)と語るロードにツグミは険しい表情を浮かべ眉毛をヒクつかせる。

続いて気攻も同様、当然のごとくやってのけた。


「まさかこんな早く会得するなんて……ホント嫌な血をしてる……」


ツグミは優秀過ぎる血統に小言を漏らす。


「次はなんだ?」


「ふむ。この分なら気攻も使えそうだし

逆に、何か覚えたい事はある?」


「ある。防五段階一と攻五段階一だ」


ロードは迷わず即答する。

感覚で攻撃をかわし、感覚で攻撃を当てる。最強に等しい力だ。


「ちなみに貴方の今の段階は?」


「攻五段階二。防五段階三を会得している」


「お、攻五二は俺らと同じだな」


カウルが出番とばかりに立ち上がり会話に加わってきた。


「攻五一へは私たちも現在進行形系で修行中。

教えられるのは、防五一の方法だけね」


「頼む、その方法を教えてくれ」


「……いいでしょう。カウル」


「おう」


カウルがロードの後ろに回り込み黒い布で目隠しをする。


「最強の回避術。防五段階一への方法。それは……」


「それは……?」


「とにかく()()()()()()()()それに尽きる」


「感覚を覚える?」


「そう。もちろん、エナに頼るのもなし」


「その状態のお前を俺とツグミの二人で本気で狙う。

百回連続で攻撃を避けれたら無事、防五一の完成ってわけだ」


鋭く長い金属音が響く。

これはツグミが刀を抜いた音だ。


「な、内容は理解した。途中休憩は?」


「んなもんあるわけないでしょ」


何を甘えていると言わんばかりに冷たく言い放つ。


「ちなみに滅茶苦茶痛い攻撃ほど生存本能が活発化して効果が上がるんだ!

だから、死なない程度に本気で殺るぜ!」


ロードの耳にはパキパキと指を鳴らす音が聞こえてくる。


「幸いここには“正常盤”もある。

なに、三万回くらい死にかければ“死”の感覚を覚えるさ」


「精神が壊れそうになったらちゃんと言えよな?」


「おい、開始前から物騒な事を言うな!」


「幸い時間は無限にある。いくらでもでも付き合うから根気よくいきましょう」


「ちょ、ちょっと待てお前らぁー!」


「問答、無用っ!」


ツグミの正々堂々真正面からの不意の一撃は

ロードの腕を吹き飛ばしたのだった。

前編完

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