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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 裁き 十二神域なりし時
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十六話 弱さを知り強さを知る

ロードは神殿の“正常盤(せいじょうばん)”の上で目を覚ます。


「はっ!」


すぐさま飛び起き、周囲を見渡す。

そこには、退屈そうに机に両脚を乗せるカウルと頬杖を付くツグミが居た。


「やっと起きたか」


「随分と掛かったわね」


目覚めたばかりのロードは今の状況が掴めない。


「俺はなんでここに?」


目を(つむ)り、自分の記憶を辿る。

 

「そうだ。ラミュの居城を出て、あの変なトカゲ男に決闘(タイマン)を挑まれて……

そんで……そっから思い出せねぇ……」


更に記憶を掘り起こそうと右手で頭を抱える。


「お前はチンロウトウに負けたんだぜ」


先に答えを出したのはカウルだった。

ロードは(いぶか)しげにカウルを(にら)む。


「俺が負けた?」


「ああ、酷い有様だったぞ」


「ええ、それはもう。開始数秒でぐしゃぐしゃになるまで殴られていたわ」


「この俺が秒殺だと?」


「あぁ、ほぼ原形を留めてなかったし、エナになりかけてたぜ。

ありゃ俺ら二人が止めなきゃ完全に死んでたな」


「た、質の悪い冗談だろ……?」


「私たちがそんなつまらない冗談、言うと思う?」


ツグミの真っ直ぐな眼を見てその言葉が事実だと悟る。


「私、先に言ったよね。決闘じゃ勝ち目は無い。全員で潰しましょって」


ロードは首を傾げる。


「あいつに一()()()()()()()()()()()()()()()()()。まあ、そういう能力なんだ」


「なんだよそのぶっ壊れたくそ能力!!」


「暇になると突然現れて、決闘を挑んで来る厄介な奴だから今後は気を付ける事」


「あいつ、手加減て言葉知らないからなぁ~」


カウルの言葉を聞いてロードは唇を力強く噛む。

唇から真っ赤な血が溢れるが、すぐに傷は癒えた。

ロードは強く拳を握り締める。

自身の至らなさ。他の“裁きの調停者(テスタメント)”との力の差を酷く思い知らされた。

その悔しさと怒りが抑えられない。


「ベーゼンの神速の一撃をカウルに助けられ

ラミュの神霊からは二人に守られ

チンロウトウには記憶が飛ぶほどに打ちのめされた。

俺は……俺は、そんなに弱いのか……?」


神域に至る数々を強敵を前にして

ロードは心が折れかけていた。

そんな傷心のロードにツグミが静かに近づく。


「慢心と油断。貴方にはそれがみえる。

それに基礎能力も知識も私たちより劣っているのは確か。

でも、お前は弱くなんかない。

シエラを倒し、神域の席に着く実力を持っている強者。

自分の磨いてきた力を、自分の持つ能力をもっと誇りなさい」


「ツグミ……」


「そそ、俺と同等に殺り合えるお前は全然弱くなんかないぜ。

それにロード、お前ここに来てから一回も本気出してないだろ?」


当然の如く、見透かされていた。


「そりゃお前も一緒だろうが」


“裁きの調停者”は互いに力の底を見せていない。

“戒律”で殺しが禁止されている以上

本気を発揮する機会など存在しない。

殺してしまってはコトだからだ。


「俺ら三人、他の奴らに負けず劣らず強い。

だが、Ⅴ席(ファイド)から上席は別格だ。

強いなんて言葉で収まらない。神域越えの神位。

そんな奴らに敵対しなきゃならない。

だが、俺たちは同じ目的を共有する仲間だ。

お前が何度死にかけても、俺らが何度でも補ってやる。

だから、俺らがピンチな時はお前が補ってくれ」


「カウル……」


「そんな不安そうな顔すんなよ。

俺らを焚き付けたのはお前だぜ、ロード。

言い出しっぺがそんなに弱腰じゃ困る」


ロードは自分がどれだけ無謀な事を言ったのかを理解する。

同時にカウルとツグミがどれだけ無謀な事に力を貸してくれたのかを理解した。


「そうだな……。すまない。

提案者としての責務は必ず果たす。

そのためにも、頼む! カウル、ツグミ。

俺を鍛えてくれ。仲間としてお前らの足を引っ張りたくない」


ロードは深々と頭を下げた。

カウルは目を輝かせ、楽しそうに笑みを浮かべる。


「俺の修行は厳しいからな! 覚悟しろ!」


ツグミは優しい目でロードを見て笑みを溢す。


「貴女たちの子供は立派に育ったみたいね……」


ツグミは感慨深く小さな呟きを漏らすのだった。

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