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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 裁き 十二神域なりし時
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十五話 決闘

ラミュの居城に押し掛けたロード、カウル、ツグミ。

ロードは茶を啜り、カウルは一口で饅頭を頬張る。


「美味いなこの茶」


「饅頭もいけるぜ」


二人は食べ物に夢中でラミュの問い掛けに答えない。


「単刀直入聞くわ。ラミュ、貴女“高天原(たかまがはら)”を出る気はない?」


ラミュの問いかけにまともに答えたのはツグミだった。


「“高天原(ここ)”を出る?」


ラミュは目を丸くし首を傾げる。

その反応を見て、三人は答えを言葉で聞く前に瞬時に理解した。


「出る訳ないじゃん! ここはラミュの理想郷(りそうきょう)! 

衣食住、時間や死の概念に縛られず

何不自由なく永遠にこの子たちと遊んでいられる。まさに天国だもん!

たま~~に十二決議とかいう(わずら)わしい会議があるけど

それを差し引いても、こんな最高の幸せ空間他にないよ!」


その答えを聞いて三人は返す言葉が無かった。

現世に(うれ)いのある三人は今すぐにでも帰りたい気持ちがある。

しかし、現世に何の愁いも無いラミュからしてみれば、ここが理想の終着点。

出てもなんの利点も無いのだ。


「三人はこの永久の楽園から出たいの?」


ラミュは理解に苦しむという表情で問いかける。


「俺は出たい。妹に戻ると約束した」


「俺も。大切な仲間との約束を一緒に果たしたい」


「私も大切な友達に会いたい。そして、一人ぶん殴りたい相手がいる」


三人それぞれの想いの籠った言葉を聞き

ラミュはつまらなそうな表情を浮かべる。


「そ。今の話、ルシファーには黙っててあげる。

ま、どんなに頑張ってもここを出るなんて事は不可能だろうけどね」


ラミュは当然の如く断言する。

同時にカウルとツグミは(うつむ)き、目を伏せた。

二人も理解している。

ほぼ不可能である空虚な理想論であると。

だが、一人は大真面目に言い返した。


「この世に不可能なんて事はねぇ。

俺らは絶対この“高天原”を出て、帰るべき場所に戻る」


ロードの熱意とは対照的にラミュの態度は冷ややかだ。


「そう。まあ、ラミュには関係無いから頑張って~」


笑顔で力無く雑に手を振る。

そして、ふと手を止めた。


「でも、私たちの幸せを脅かすなら……三人とも覚悟してね」


可愛らしい笑顔とは裏腹に異常な殺意が溢れ出る。

ランドルト・ベーゼンと同じく協力も邪魔もしないが

自身を脅かすのなら容赦しないという事だ。


「肝に銘じておくわ。お邪魔したわね、ラミュ」


ラミュの意思を確認した三人は同時に席から立つ。


「え、もうみんな行くの?」


「邪魔したな」


「御馳走さん! 饅頭美味かった!」


「お茶御馳走様。今度は手土産でも持って来るわ」


「また、お茶しようね~~」


さっきとはうって変わって

笑顔で元気に手を振り送り出すラミュを背に

三人は居城を後にした。


神殿へ戻る途中でツグミは今回の成果をまとめる。


「ベーゼンとラミュの立ち場は中立。

邪魔はしないし、強力もしない。

でも、永遠の安寧を脅かすのならば、敵対するってのが結論ね」


「中立寄りの敵対だな」


「やっぱりなー。この永遠を好意的に受け入れるあいつらも異端だけど

ここから出ようなんて考える俺らはもっと異端だぜ」


三人は落ち込みながら神殿までの帰路を辿る。


「ははっ! そりゃそうだ! ここを出れる訳ねぇんだからよぉ!」


男の大きな声がどこからともなく響く。


「面倒くさいのが来たわね……」


「三人ならどうにか撃退出来るぜ」


二人は呆れながら当然のように武器を抜く。

既に万全の戦闘態勢だ。


「どこのどいつだ!」


「それはこっちの台詞だぜっ!」


ロード目掛けて真上から何かが隕石の如く突っ込んで来る。


「っ!」


ロードは狂雷で肉体を強化し衝撃に備える。

次の瞬間、衝撃で地面は大破。

周囲一帯は吹き飛び、地面が深く(くぼ)む。


「ほぅ。やるじゃねぇか新入り」


男の頭上からの蹴りを受け止めたロード。

襲撃してきた無礼な男の姿を間近で窺う。

光で色を変える青い炎のような硬い髪から

伸びる白く長い四本の毛がゆらゆらとたなびく。

黄色い爬虫類のような瞳。

口角を上げた口からは鋭い牙がちらりと見える。

服装はシンプルな白いシャツに黒いズボン。

指先は鋭く硬い。肘からは棘のようなモノが生えていた。


「上から目線で挨拶とは無礼だな、古参」


ロードは激しく電撃を迸らせ、男を弾き飛ばす。


「新入り! まずはてめぇから名乗れ!」


「ちっ……俺はロード。ロード・フォン・ディオスだ」


「俺様は“裁きの調停者(テスタメント)Ⅹ席(テック) チンロントウ!

新入り! てめぇはシエラに勝ったんだってな!

俺様とどっちが強ぇか決闘(タイマン)しろ!」


チンロウトウは名前を覚える気はないらしく

ロードを指を差し指名する。


「相手にしなくていいぜ、ロード」


「決闘じゃ勝ち目は無い。全員で潰しましょ」


二人はロードの前に出て剣を構える。

だが、ロードは二人を掻き分け、更に前に出た。


「上等だ。その喧嘩。受けてやるよ」


ロードはチンロウトウの決闘を受け入れた。

二人は頭を抑え、深々と溜息を吐く。


「あのバッカ……」


「まあ、神殿も近いし問題ないだろ……」


「お前ら俺が負ける前提で話すな!」


チンロウトウの足元から白と黒の陰陽太極陣が広がる。


「さあ、新入り! 決闘開始だ!」


「上等だ。蹴散らしてやる!」


こうして二人のタイマンは数秒足らずで決着が着いた。

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