表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 裁き 十二神域なりし時
371/397

十三話 精霊界に愛されし少女

Ⅺ席(イーバ)の魔剣職人 ランドルト・ベーゼン居城を去った後

ロード、カウル、ツグミの三人は次なる“裁きの調停者(テスタメント)”の居城前に来ていた。

周囲は背の高い太い鉄格子に囲われている。

だが、入り口の門に鍵は掛かっておらず、難なく入る事に成功した。

屋敷の庭園のように色とりどりの花が咲き誇り

足元は芝が敷き詰められた自然豊かな空間。

不思議と空気も美味しく感じる。


「ランドルト・ベーゼンの居城周辺とは随分風景が違うな。まるで箱庭だ」


ロードが周囲を見渡し感想を述べた。


「居城周辺も自分の好みに改装出来るの。ここの子は自然が好きだから」


「話が分かる相手か?」


「さぁ? 彼女気まぐれだから日によるかな」


ロードとツグミが話しているとカウルは足を止め

異空間から剣を取り出した。


「残念。どうやら、今日は遊びたい日らしいぜ!」


その瞬間、正面から白と青紫の混じり合った大狼が鋭い爪と牙を剥き出して飛び掛かって来た。

カウルが大狼の奇襲を剣で弾き返す。


「うらぁ!!」


大狼は身軽に芝に着地すると、牙を向けたまま喉を唸らせ三人を威嚇する。


「へネス、侵入者? だぁれ?」


花々の中から地を這う岩竜に乗って現れたのは、小さく華奢な少女。

明るい白緑(びゃくろく)色の柔らかな髪には、可愛らしい澄んだ赤色のリボンが二つ付いている。

橙色の大きな瞳。

水着のような紺色の衣服とニーソだけを身に纏っている。


「あら、ツグミとカウルが二人でなんて珍しい。

それにそちらの子は見た事無いお顔ね。

審判でシエラに勝ったご挨拶かしら?」


子供とは思えない凛とした口調と

妖精のような美しい顔立ちでロードに目を向けた。


「何だこのロリは」


「あら、随分な物言いね。貴方より()()()もお姉さんなんだけどな」


「じゃあロリババアだな」


「むっ」


少女は可愛らしく顔を(しか)め頬を膨らます。


「ヴィザム、ネルタファ……殺っちゃって」


拗ねた口調で命令するとどこからともなく

武装した鳥人と全身に鎧を纏った二体の神霊級の精霊が出現。

ロードの不意を衝き一瞬で命を狙う。


「っ――――!」


ヴィザムの刃のような爪をカウルが剣で受け止め

ネルタファの剣をツグミが刀で受け止める。

そのおかげで、ロードは九死に一生を得た。


「“戒律(かいりつ)”を破ったら、お前もただじゃ済まないんだぞ!」


「落ち着いて、ラミュ! こいつには後でちゃんと(しつけ)をしとくから!」


カウルとツグミが必死で少女を説得する。


「みゅう……。貴方たちがそこまで言うなら……今回は一撃だけで許してあげる」


不満そうな声を出した後、人差し指を軽く上に動かすと

ロードの足元から無色透明な拳の精霊が飛び出した。

瞬時に風壁を張ろうとするも、間に合わず腹部に重い一撃がめり込む。


「ぐっ……」


ロードは咄嗟に重心を移動させ

宙を回転し、ダメージを最低限に抑えた。


「へぇ~」


咄嗟の判断にラミュは感心した声を漏らす。

今のをまともに受けていたら、腹部に大穴が空いていた。

手加減の無い。死の危険すらあった一撃。


「さっきの失言は今ので許してあげる。けど、次は無いからね?」


その笑顔の言葉には確かな圧が(こも)っていた。


「この……くそロ――――」


ロードの言葉を阻むように、ツグミの右手がロードの首を絞める。


「何度も言うけど、言葉遣いには気を付けなさい!!

あの人、あんな容姿だけど、私やカウルよりも遥かに前からこの高天原に居る大大、大先輩。

“裁きの調停者” Ⅸ席(ナディラ) ラミュ・ラミュレット。

()()()()()にして、七百四十八体の精霊、精霊獣、神霊。

そして、最強の精霊神獣を従える精霊界に愛されし少女よ」


「なっ――――」


あまりにも常軌を逸脱した使役数を聞いて

ロードはツグミの手を振り解きつつ驚く。


「これからよろしくね。生意気なクソガキくん」


称賛の紹介で満足気なラミュは手を後ろで組み

ロードを見下ろし、笑顔で挨拶したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ