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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 裁き 十二神域なりし時
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十話 神速の斬撃

ロード、カウル、ツグミの三人は

高天原(たかまがはら)”に存在する十二城のうち一城。

Ⅺ席(イーバ)の住まう居城に来ていた。


「着いたわ。覚悟はいい?」


「ああ」


ツグミはロードに確認を取り巨大な扉を押し開ける。

明かりの無い暗い城内に後方から猛烈な風が吸い込まれてゆく。

その後感じたのは、唸るような熱気。

まるで溶岩地帯に彷徨い込んだかのような温度差。


「なんだここ……。喉が焼ける……」


あまりの空気の乾き具合にロードが咽る。


「この先はもっと熱いわよ」


そう言ったツグミは汗の一滴もかいていない。

ロードは三人を囲むように風壁を張り、水の魔術で加湿し温度を下げた。


「これで快適だ」


「お~流石、“六適者(エレメンタル)”。術の()()()高いな~」


「っ! いいかカウル! その汎用性って言葉、今後二度と使うなよ!」


「お、おう……」


突如切れたロードにカウルは気押(けお)された。


「他人の城で騒ぐのはやめなさい。ここの住人は繊細かつ偏屈なのよ」


ツグミに(たしな)められた二人はその後静かに進んでゆく。

城の構造上、普通は上に登っていくがここはその逆。

下へ下へと地下に進んでゆく。

数十分後、着いたのは空気が揺らぐほどに熱の(こも)った場所。

ロードの風壁が無ければ、常人なら気を失っている熱さ。


「多分ここに居るはず」


重厚な石扉の中からはゴーッと轟音が(とどろ)く。

そして、カンカンと金属同士がのぶつかり合う高い音が響いていた。


「この金属音……鍛冶師か?」


「正解」


ツグミは扉に触れず、自身の気で扉を弾く。

中には石の椅子に座った男が背を向けたまま

真っ赤に熱した剣を鉄槌(てっつい)で叩いていた。

叩く度に橙色の細かい鉄片があちこちに飛び散る。

すると突然、男の動きがピタリと止まった。


「こんの、馬鹿たれがぁーー!!!」


怒号が響くと同時に横一閃の橙色の斬撃が飛ぶ。

ツグミは軽やかに斬撃を飛んでかわし

カウルはロード頭を地に押し付けてかわした。

次の瞬間、地下にある城の背後の壁が

斬撃の中心部から滑るように二メートルほどずれた。


「――――っ」


それすなわち、“高天原”の地殻を切断。

だが、幻だったかのようにその景色は元に戻る。


「容赦ないわね。“戒律”を破る気?」


ツグミは凛とした態度で文句を言う。


「ドの付く素人が鍛冶師の工房を開けるなんぞ、殺されても文句は言えぬ行い。

見ろ、せっかくの傑作が霧散してもうた」


男も文句を言い、煤塗れの手をツグミに見せる。


「やっぱりわざわざ会いに来るものではないな」


後悔混じりの溜息をつく。


「それが大勢で不法侵入して来た者の態度か!」


男とツグミは文句の言い合いを始めてしまった。


「やれやれ、先が思いやられるぜ。ロード、無事か?」


カウルは呆れながら、ロードの様子を窺う。

顔を真っ青に染め、冷や汗を流すロードは茫然(ぼうぜん)と床を眺めたままだ。


「ああ……問題ない……。

一つ問うが……今、お前が咄嗟に庇ってくれなければ、俺はどうなっていた?」


「ん? 死んでたぜ?」


当然のようにカウルは口にした。

ロードが攻撃に気が付いたのは斬撃が放たれて数秒後。

腹部辺りから上半身と下半身が別れ落ちた頃合いに理解したであろう神速の斬撃。

ロードは戦慄した。初手からこの次元の攻撃を繰り出してくる事に。

そして、二人は驚きもせず、さも当然の如く振る舞っている事に。

同時に自身の無力さと足りなさを深々と痛感する。


「すまない……助かった、カウル」


「おう!」


二人が立ち上がると丁度、ツグミと男の言い合いも折り合いが付いたらしい。

ロードは鍛冶師の男と対峙する。

顔以外を覆う耐炎の黒いマント。

青緑色の不揃いな髪。

凝固した血液のような濃い赤色の瞳。

顔の左には縦一直線の切り傷。

ナイフのように尖った長い鼻が特に目立つ。

男はすぐに目新しいロードに目を向けた。


「紹介する。此度の審判にてシエラを下し、“裁きの調停者(テスタメント)”となったⅥ席(シスト) ロード・フォン・ディオス」


ツグミがロードを紹介すると男は険しい表情を大きく変えた。


「ほう……シエラユースを負かしたか……」


感心するかのように、ロードをじっくりと観察する。


「そして、こっちは“裁きの調停者”Ⅺ席(イーバ) ランドルト・ベーゼンよ」


「なっ――――!」


その名前を聞いた瞬間、ロードも大きく表情を変えるのであった。

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