九話 運命共同体
ロードとカウルは“高天原”を出て
元の世界に戻るためについに手を組んだ。
「さて、出たいか、出たくないかの決断はした。
次に出れるか、出れないかの話をしようぜ」
神殿の机を囲み、椅子に座って顔を突き合わせる。
カウルは精神的問題から、現実的問題に目を向けた。
「お前ほどの力を持ってしても、上席には勝てないのか?」
「そーだな。まず、力の基準が違う。俺程度の力じゃだ。
上席の奴らは、正真正銘の神位だ。俺ら神域とは訳が違う。
あいつらとまともにやり合っても、億に一つも勝ち目は無いぜ」
「それほどまでとはな……」
ロードと同等以上のカウルが断言している事に重きを置く。
早々に出る事を考えていたロードだが、今一度考えを改め始めた。
そこにツグミが口を挟む。
「大体、ロード。貴方、ルシファーを見たでしょ? アレに勝てるとでも思ったの?」
「いや、まるで勝てる気がしなかった。攻撃を当てる事さえ出来ないだろう」
「でしょうね」
ツグミはちゃんと客観的に正しい評価を出来ている事に安心する。
頬杖を付いたまま、呆れ気味に息を吐くとロードは言葉を続けた。
「だが、一生勝てないとは思わなかった。アレは俺の手の届く範囲の神位だ」
ロードは堂々と言い切る。
それを聞いたツグミは、誰かの影を重ねて頭を抱えて、再び深く息を吐き
カウルは、机を叩き盛大に笑った。
「はぁ……血は争えないわね……」
「はっはっは! ロード、お前大物だよっ!
あいつを見て怖気づかないとはな!」
十分に笑い終わるとカウルは真剣にロードに向き合う。
「だが、もしも五十回戦ったとして百二十回は負ける。
良案も無しに挑んでも、現状無意味だ。
しくじれば、城の中に永久に閉じ込められる可能性だってある」
「そんな罰則もあるのか?」
「あるぜ。理由は知らないが、Ⅱ席とⅫ席は絶賛封印中だ」
「“戒律”のⅡ席城、Ⅻ席城への侵入を禁ズ。はそれに何か関係してるのか?」
「さぁな。俺がここに来る前からあの二つの席の城は封印されたし」
「私はカウルより後だから勿論知らない」
「色々と情報が足りなすぎるな……」
ロードは頭を悩ませる。
「なら、他の調停者に聞きに行けば?
ついでにここを出たい調停者の勧誘も出来るし」
ツグミが横から助言する。
「お前、調停者は変わり者ばかりだとか言ってなかったか?」
「言ったしその通り。貧乏性で、堅物で、自己中で、狂気で、気まぐれで、傲慢で、偏屈な連中。
でも、“高天原”から出ようとしている貴方たちほどじゃない」
ロードとカウルは笑い合い
言葉を合わせる。
「違いない」
「まぁ、そんな貴方たちに協力しようとしている私もその一人だけれど」
「ツグミ、正気か!?」
カウルは盛大に驚く。
ツグミはこんな分の悪い方に加担するような性格じゃないと知っているからだ。
「なに? 私の力は不要?」
「俺らにとってはその申し出は願ったりだが、お前もここ出たかったのか?」
「当たり前よ。永遠の時を過ごすなんて最高の退屈でしょ。
それに地上に置いてきた私の唯一の心残りをロードは解決してくれた……。
それだけで十分力を貸す理由に足りえる」
ツグミは驚くほどにロードへの尽力に前向きだ。
迷いや不安は一切無い。
ロードはツグミの席に回ると手を差し伸べた。
「よろしく頼む、ツグミ」
「し、仕方ない。貴方の“教育係”として手伝ってあげる」
急に恥ずかしくなったのかそっぽを向いたツグミは
透き通るような白く細い手で流れるようにロードの手を取った。
「ツグミがいれば心強いぜ!」
カウルも手を重ね合わせる。
「今から俺ら三人は運命共同体だ。死んでも裏切るなよ」
「無論よ」
「当然だ!」
三人は顔を見合わせ笑みを浮かべる。
こうして三人の同盟が結成したのだった。
「なんか、青春ぽいな!」
カウルの言葉で柄にも無い事をして恥ずかしくなったツグミは
顔を赤くして二人の手を振り解く。
「――――っ! な、なら、ととっとと行きましょうっ!
偏屈だけど、話が分かる男を知っているから!」
先陣を切って歩き出したツグミ。
ロードとカウルは互いの顔を見合わせる。
二人はその反応を面白がりながら彼女の背を追うのだった。




