百二話 船上交流②
世界の危機を救った三つのグループは船上で交流を深めていた。
「キリエ。お帰り」
レオは改めてキリエを笑顔で迎える。
「ただいまレオ。。。それにありがとう。。。」
キリエも正面から向かい感謝の言葉を述べた。
「気にすんな、俺たち仲間だろ!」
「仲間。。。」
レオの言葉に一瞬複雑な表情を浮かべる。
「え、違うのか!?」
不安になり焦るレオ。
だが、もちろん仲間ではないという意味合いではない。
「違くないけど。。。」
「けど?」
「…………むぅ。。。」
鈍感なレオにキリエは口を尖らせ拗ねる。
「そう言えばレオ。。。! 気を失う前になんて言おうとしたの。。。」
「えっ!?」
「ほら、あの気を失う前。。。!」
強めな口調で詰め寄る。
「え、な、なんだったかな~~」
レオは言おうとした事を思い出し、耳まで赤くして目を逸らす。
だが、キリエの追撃は止まらない。
前のめりのままジリジリと詰め寄って来る。
もう以前の奥ゆかしく一歩引いたキリエではない。
自分に自信を持ち、自分の力もレオとの関係も一歩進んだキリエに成長していた。
そのままキリエはレオへともたれ掛かる。
「これからもずっと傍に居てね。。。」
キリエの突然の言葉にレオは動揺しながらも彼女の肩を寄せた。
「お、おう! 任せろ!」
二人は顔を真っ赤にし、互いの大切さを改めて認識し合ったのだった。
そんな二人の様子を遠目で見ていたピリカが腑に落ちないという表情を浮かべる。
「ユプケいいの? あの黒い女を見逃して。
私たちの北の地はおろか世界を滅ぼそうとしたんだよ」
「構わない。奴はもう悪性ではない」
ユプケは端的に一言だけ述べた。
「でもさ――――」
ピリカが小言を言おうとするとエプンキネが口を挟んだ。
「今更野暮な事は言うものではない」
「…………」
ピリカは言葉を呑み込み大人しく
二人のイチャイチャぶりを見守る事にしたのだった。
「俺ら成り行きで生き残ったけどこれからどうする?」
管制室の影に座り込み掃除をサボるリョクエンが仮面にされていたデガロと清陵に問い掛ける。
「がはは、儂はこのまま奴らに付いて行くぞ! 退屈しなくて済みそうだ!」
「僕は能力を持っている以外はただの普通の人間なんだ……。
だから願わくば普通の生活に戻りたい……」
精霊界の精霊人デガロは同行。
人間界の人間清陵は日常を望んでいた。
「お前さんはどうする?」
デガロに問いを返され魔界の魔人リョクエンは神妙な面持ちで悩む。
「俺は……どうしよっかな~~」
考えるのを放棄して青々とした快晴の空を眺めた。
「あの~メイプルさん」
肩を竦めた朔桜が恐る恐るメイプルに話しかける。
「この後、私たちの処遇はどうなっちゃうんでしょうか?」
手を擦り合わせてすり寄って行く。
朔桜が心配しているのは世界の門を開けた事による影響だ。
「どうも何もないわ。襲撃を受けた私たちは貴女たちの助力を受けて北の地で世界で危機を回避した。
これが起きた出来事の全て。あったままを話すわ」
「えっとそれは……?」
「安心して。貴女たちには感謝してもしきれない多くの恩を受けすぎたわ。
今回の件もこの先も貴女が関与した門の件は全て上手く誤魔化してあげるから」
「本当ですかっ!? 助かりますっ!
ついでに兄のロード・フォン・ディオスも見逃してくれると~~~」
「兄妹なのに苗字が違うのね」
「色々と訳アリでして……」
「しょうがないわね。まけにまけて譲歩しましょう!
ていうか、聞いてくれる!? そもそも気に入らないのよね! 上の連中!
私たちより弱いくせにあれこれ上から指図してきて!
やれ食費が多いやら、維持費がどうの難癖付けてきて!
だったら自分たちで乗船してみろって話じゃない!?」
「あ、あはは~」
この後も止まらないメイプルの愚痴に付き合う朔桜なのだった。
こうして朔桜たち、“人魔調査団”“五色雲”は団結を深め、死線をくぐり抜けた者たちの協力関係が築かれたのだった。
「ではそろそろ我々は失礼する」
昼を前に“五色雲”は北の地へと帰った。
朔桜たちもオスプレイに次々と乗り込んだ。
最後にティナが乗る前に忠告を残す。
「“人魔調査団”、これに懲りたら金輪際私たちに関わらない事ね」
「どうしようかしら。考えておくわね」
「あっそ。忠告はしたからね」
プロペラが回り飛び出す様子を船員一同が敬礼で見送る。
その様子を見たノアが窓から手を振った。
「ばいば~い」
こうして精霊界と人間界を股に掛けた長い長い波乱の旅は一段落するのであった。




