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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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百話 神熊 キムンカムイ

ドクレスの世界滅亡級の超極大精霊術を打ち破り、自身の失態を拭って人間界の危機を救ったキリエ。

世界滅亡級のぶつかり合いを目の当たりにした直後、すぐに身体が動いたのは朔桜とレオの二人だった。


「キリエッ!!」


フラフラで倒れる寸前だったキリエをレオは一足で跳んで両手で支える。


「レオ。。。」


「凄かったぜ、キリエ」


「うん。。。頑張った。。。」


レオはキリエを優しく地に座らせる。

身の丈に合わず無理に酷使した“黒”の力の反動でキリエの右腕の血管は破裂。

大量に流血していたが、幸い致死量ではない。

少し遅れて朔桜も駆け寄り、手にした宝具でキリエの損傷を早々に癒す。


「キリエちゃん、人間界を救ってくれてありがとう……!」


「こちこそ……ありがとう。。。ございます。。。朔桜様。。。」


「それやめてね!?」


「ふふっ分かりました。。。じゃあ今まで通り朔桜ちゃんで。。。」


世界滅亡の危機は去った。

しかし、まだ一段落とはいかない。


錬金核(アルケミーコア)五月雨(さみだれ)!」


朔桜、レオ、キリエを狙って再び上空から無数の錬金核の雨が降り注ぐ。


「っ!」


攻撃に気づいたレオが大の字になって二人の盾になろうとすると

後方に控えていた“人魔調査団”と“五色雲(ごしきぐも)”が気術で防いでくれる。

メティニが錬金核を視界に収め能力《指定方向(ディズイグネイション)》でまとめて吹き飛ばす。


「若爺のエナジードは無尽蔵かよ!」


ドクレスの逸脱したしぶとさにリョクエンが小言を漏らす。


「そんなわけないじゃない。滴の量が全然少ない。あいつ大分ガタがキてるみたいよ」


メティニの言葉の通り、ドクレスは激しく息を切らしていた。

いくら莫大な量のエナを得たとはいえ、強者たちとの連戦で精霊術を乱発している。

それに加えて世界滅亡級まで使えば、残りのエナは極わずかしかない。


「はぁ……はぁ……全盛期の儂がこんな有象無象共に負けるなど……あり得ない!」


ドクレスは朔桜の宝具を目掛けて飛び出す。

皆が駆け寄るも、錬金核―五月雨が永遠と降り注ぐ。


「これほどの量を上空に潜ましていたの!?」


メティニの眼に負える量ではない。

ドクレスはこの精霊術にほぼ全てのエナを注いでいた。

一同はまんまと策にハマり、耐え凌ぐ事しか出来ず、足止めを食らう。

ノアが横目で玖寧の動きを窺うも、朔桜の命の危機にも関わらず傍観したまま動こうとしない。


「その力を寄越せぇ!!」


死に物狂いの鬼の形相で迫るドクレス。

だが、朔桜は臆さない。

心を静め、冷静に狙いを定めて指を向けた。


「精霊魔術―サンダディーラ!」


完全にノーマークだった朔桜から放たれた一閃の電撃がドクレスを穿つ。


「がっ!」


魔獣バグラエガをも一撃で気絶させた上級精霊術の直撃を受けたドクレスは空中で失神し、そのまま地面に落ちてゆく。


「やったっ!」


攻撃が直撃した事に安堵した朔桜。

だが、膨大なエナを取り込み底上げされたエナ値で若返ったドクレスは

肉体強度も精神力も跳ね上がっていた。


「まだだぁ!」


瞬時に意識を取り戻し、地面への激突寸前で一足で地を蹴り再び朔桜へと迫る。

レオとキリエが迎え撃ち立ち塞がるも、肉弾戦ではドクレスに全く及ばず、軽くあしらわれる。

稼げたのはほんの数十秒程度だ。


「貰った!!」


皆の距離ではもう対応できない。

ドクレスが伸ばす魔の手に朔桜は宝具を差し出して自ら当てる。

その瞬間、“拒絶の力”がドクレスの手を激しく弾く。


「なにぃ!」


予想外の行動と現象にドクレスの表情が歪む。

同時にその光景を目の当たりにした玖寧は笑みを浮かべた。


「よもや、そんなところに神璽(しんじ)がお隠れなさっていたとは」


澄み切った声で小言を呟くと猛獣のようなドクレスの背後に目を向ける。


「どうやら私の出番はないらしい」


ドクレスは怒りに満ちた表情で抵抗する朔桜を睨むと両手を(かざ)す。


「死ね!! 小娘ぇ!!」


近距離で精霊術が放たれるその刹那。


「現れよ、北地を守りし一柱。喰らい裂け! 神熊! キムンカムイ!」


突如として閃光のように顕現した金色の神熊が背後からドクレスの首元に喰らいつき遥か上空へと運ぶ。

鋭い牙が首に深々と突き刺さり、“狩る”対象であったドクレスを鋭い爪が切り裂く。


「くはは……! 神に喰われてこの生終えるのならば……本望!」


最後の最後満足した言葉と表情のを残し

ドクレスは北の地の上空でバラバラに引き裂かれエナとなり散った。

情け容赦ない“覚悟”をしかと目の当たりにしたノアが笑みを浮かべると

ドクレスの後方から現れたのは重傷のユプケを背負ったイラマンテ。


「頼みがある」


第一声で述べた彼の言葉に朔桜は感謝の気持ちを交えて一声で応えるのだった。

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