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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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九十一話 天衣無縫

朔桜はロードの黒体に蹴り飛ばされたティナとノアを庇い

無謀かつ無策にも黒体の前に飛び出していた。

一歩間違えれば、死んでいた行為にティナが大声を張り上げる。


「バカッ!」


ノアを雑に放り投げ、朔桜の腕を強く引っ張って地の魔術で黒体を攻撃。

上空に投げ飛ばされたノアも『雨の羽衣』ですかさず追撃する。

攻撃されたロードの黒体は素早く後退して回避。

距離を取り三人の様子を窺う。


「おととっ!」


よろけた朔桜はティナの懐にすっぽりと収まった。

ティナは朔桜の肩を強く掴み、軽率な行動を怒鳴り散らす。


「こんのアホッ! 死にたいの!?」


「い、生きてたからセーフ!!」


朔桜は親指を立て無事をアピールした。


「そういう問題じゃないでしょ!! あんたはいつもいつも!」


ティナは朔桜を口酸っぱく叱りつけていると

ロードの動きを見逃さぬよう警戒しているノアが重要な事に気が付く。


「ノアもティナちゃんの意見には賛成だけどさ。

あのロードくん朔ちゃん串刺しにする寸前で攻撃止めてたよね?」


ノアの言葉にティナは何かを察し、表情を変えた。


「もしかしてアレもそういう事?」


「たぶん」


「アレもそういう事とは??」


朔桜は主語の無い二人の会話に首を傾げた。


「つまり、あの土人形も本物と同様、朔桜にくそ甘い過保護シスコンだって事よ」


「過保護シスコンだなんてそんな~」


朔桜は自然に笑みが溢れ嬉しそうだ。

ティナはそんな朔桜を冷めた死んだ目で見つめる。

視線に気づいた朔桜は慌てて取り繕う。


「そ、それが何か関係あるの??」


「ある。この状況を打破出来る」


ティナが確信を持った言葉を放ち

ロードの黒体に視線を移すとノアも笑みを浮かべた。


「作戦は――――」


ティナが朔桜とノアに作戦を伝えている間

他の面々は無数に湧き出るノアの黒体と戦っていた。

ノアの黒体は朔桜の黒体を守るようにしてジリジリと押して来ている。

皆はカシャが樹の精霊術で作った木製の武器や武装を使い、物理的に黒体を破壊して対処していた。

ノアの分身がカシャ、メティニ、ラヴェイン、リョクエン、デガロ、清陵が居るところに

作戦を伝えに駆け付ける。


「お~い」


「ちびっ子か! すまない目を掛けていたつもりだったが

いつの間にか桜髪がそちら側に駆け出して行ってしまった」


「問題ないよ~。そっちの状況はどう?」


「芳しくはない。このままだと時間の問題で押し負けるだろう」


「そんなみんなにティナちゃんが考えた作戦持ってきた~」


「作戦?」


「うん! みんなで朔ちゃんを狙うの!」


「桜髪を……狙う?」


「うん! って言っても本物の朔ちゃんじゃないよ?

朔ちゃんの分身を集中攻撃するの!」


ノアの言葉でカシャは大体の察しがついたようだ。


「なるほど。()()()()()()という事だな」


「そゆこと」


「了解したゾ! みんな聞いていたか!?」


「応!」


各々が返事するとカシャは両拳の木製グローブでノアの黒体を派手に破壊すると

一気に朔桜の黒体へと駆け寄る。

その動きに早々に対応したのはロードの黒体。

予想通りの動きにティナは拳を胸元でガッツポーズ決める。


「掛かった! メティニ!」


状況を理解していないメティニだが

自分が何を求められているのか即座に理解した。


「《指定方向(ディズイグネイション)》!」


眼を見開き、ロードの黒体を視認。

黒体の動きを完全に支配するメティニにノアの黒体が奇襲を仕掛ける。


「させないよ~」


二の足を踏まないようノアがメティニを徹底的に護衛。

衣で強固なノアの黒体をバッサバッサと両断していく。


「あれ?」


ノアが周囲の異変に気付いた。


「なんかノアの偽物の数減ってない?」


言葉の通りノアの黒体の無限湧きが止まっている。

その理由はレオが丁度レオとキーフの黒体を破壊し、キリエが現実を見た事に起因していた。


「レオ君が上手くやったのかも!」


朔桜が希望的観測を口にすると黒体の減少を追い風に捉えたティナは

両手で朔桜を抱えたまま『八つ脚の捕食者』で跳び、皆と合流。


「今が好機! 押し込め!!」


桜髪を下ろし、地面に手を当て

地の魔術で生成した無数の石槍で周囲のノアの黒体を一掃。

各々も黒体を退けてゆく。

これで奇襲の脅威はなくなった。

ロードの拘束を解こうと最後の抵抗でメティニを視界を奪おうとする朔桜の黒体。

それよりも早くティナが朔桜の黒体の前に立ち塞がった。


「これ……持って帰っちゃダメ?」


「いや、ダメに決まってるでしょ!」


朔桜が早く破壊してと叫ぶもティナはなかなか攻撃しない。


「くっ……ダメ! 私には勿体なくて壊せない!!」


葛藤するもどうしても黒体を破壊出来ないでいた。

しかし、一瞬にして朔桜の黒体の首が飛ぶ。


「ティナちゃん遅いよ」


容赦なく首を刎ねたのはノアの衣の一撃だった。


「壊せないのもアレだけど、一切躊躇ないのもなんだかなぁ……」


朔桜としては複雑な心情だ。


「くっ!!!!」


ティナは黒体を持ち帰れなかったやり場のない怒りをロードの黒体へと向ける。


「土地槍―北百塔(ほくびゃくとう)!!」


天を衝いて限りなく伸びる二次元曲線の百メートルの塔が黒体の腹部に直撃。

普通の生物なら容易に半身が裂ける。

強固なロードの黒体は腹部に(ひび)すら入らない。


「これで無傷とか冗談でしょ!?」


ティナがその耐久性に驚く。


「平気!」


風の魔術を使い飛び上がっていたノアが天空で待機していた。


「切れ味試させてね」


ノアは懐からいつも使っている『天の羽衣』ではない

それよりももっと薄く、透き通り輝くような衣を手にする。


「あれはっ!」


ティナにはそれに覚えがあった。

ティナの持つ『絡め捕る糸(アラクネー)』はそれの副産物のようなモノ。

Dr.が親心でノアのために作り出した専用装備。

その名も


「天衣無縫」


衣はノアが手に持つ部分から白く輝き、太刀のように長く伸び

上級魔術ですら破壊出来なかったロードの黒体を溶かすかのように両断した。

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