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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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八十四話 城外のボス戦

一同の前に現れたロードの黒体は一定の距離で足を止め、目下の者を見下す。

まるで倒す相手を順位付けしているかのように、一人ずつ深く観察しているようだ。


「何この個体……今までのと何か雰囲気が違う」


メイプルの言葉の通りその異質な立ち振る舞いから

“人魔調査団”と“五色雲(ごしきぐも)”も危機感を募らせる。


「あれが動いたら居残り組が全力で足止めします! お城対策組は先に行ってください!」


朔桜の言葉で他の居残り組であるティナ、ノア、カシャ、メティニ、ラヴェイン、リョクエン、デガロ、清陵はロードの黒体と敵対する。


「カシャさん!」


朔桜はロードから視線を逸らさぬままカシャに合図を送った。


「うむ! 樹造!」


カシャは樹の精霊術で周囲の枯木から全員分の木製グローブを作って木の根で皆に配る。


「気休め程度だが上手く使え」


術も効かず、直接触れる事の出来ない黒体対策の一つだ。

一同が対策を施している間もロードの黒体は動きを見せず、静観していた。


(てぃな)思いっきりいっちゃって!」


「もちろん! むしろ遠慮なく壊せるわ!」


ティナが地の魔術で先制攻撃を仕掛ける。


「土地槍―北方(ほっぽう)!」


北の大地から巨大な槍が飛び出し黒体を直撃。

しかし、その攻撃は片手で止められていた。


(つた)芽生え!」


カシャが樹の精霊術を唱えると、槍先に埋め込まれていた樹木から無数の蔦が生え、黒体を

槍と一緒に絡め捕る。間髪入れずノアが槍を駆け登り、衣を構えた。


捌羽切(ハバキリ)!」


両方から両断するように衣が迫りロードに直撃。

だが、手ごたえはまるでない。


「今っ!! 行ってっ!!」


ノアが叫ぶと同時に“人魔調査団”と“五色雲”は気術を使い、浮遊しながら黒城へと潜入する。


「行ってきます!!」


レオはエンジェルの能力《推進力》に補助してもらい靴の裏から空気を吹き出しながら宙を進む。

黒城攻略の(かなめ)を城内に送るという一仕事は終えた。

この場に残った居残り組の最重要の仕事は、この黒体をどうにか対処する事だ。

三人の連撃を物ともせず、攻撃を掻き分けロードの黒体は無傷で這い出てくるやいなや

高速でノアに蹴りを打ち込み、森の中まで蹴り飛ばす。

朔桜の背後にはへし折れた木々と立ち上る土煙だけが見える。


「ノアちゃんっ!」


朔桜がノアの身を案じている数秒の間に、ティナとカシャもあっけなく薙ぎ払われた。

地の魔術と樹の精霊術で黒体の直接攻撃はなんとか防いだ様子だが

黒体の放つ並外れた攻撃の威力で二人はすぐに動く事が出来ない。

ロードの黒体はカシャへの追撃を図り、拳を構える。

樹の精霊術で皆にグローブを配ったのが黒体の中で優先排除の決め手となったようだ。

間一髪のところで弟子に迫る拳を師であるラヴェインの拳が上に跳ね上げ、なんとか防ぐ。

だが、跳ね上げられた衝撃を利用し、黒体はラヴェインに蹴りを放つ。


「させない!」


ロケットのように戻って来たノアの『雨の羽衣』が蹴りを防ぐと

黒体の意識は再びノアに移った。

その瞬間、背後からティナの魔術が黒体を打つ。

仲間の危機を仲間が庇う一撃一撃が死に至るほどの攻防を数回繰り返し

やっとの思いで黒体から距離を離せた。


「はぁ……はぁ……マジでしんどいんだけど……」


「流石はロードくんだね。一撃一撃迷いなく殺しに来てる」


「師匠、さっきはありがとうございます」


「礼はいい。それよりも強固なグローブを量産しておいてくれ。

奴に一発打ち込むだけでもう使いモノにならなくなる」


「分かりました!」


ティナ、ノア、カシャ、ラヴェインが前衛で黒体の攻撃を何とかいなしてくれているおかげで

今のところ犠牲者は出ていない。

だが、それも時間の問題だ。一進一退のギリギリの攻防を行うにも限度がある。

前衛全員は既に息を切らしている。

まともに触れられればエナをごっそりと奪われ即戦闘不能に(おちい)

最悪死、運が良くても仲間の足手纏いになるこの状況が皆の精神の消耗を早めていた。

次の攻防もこんなにうまく行く保証もない。皆死と隣り合わせなのだ。

そこに追い打ちを掛けるかの如く、地面から複数のノアの黒体が再び生えて事態を悪化させる。


「おかわりはいっちゃったね……」


流石のノアもこの状況では焦りを隠せない。


「何これ。まだ城外なのにボス戦? ふざけろ」


ティナはこの絶望的な状況に悪態を悪態を()く。

強固でありながら術が効かず、触れるとエナを奪う無数の強黒体を相手に

朔桜たちは苦戦を強いられるのだった。

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