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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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八十二話 太刀vs刀

レオが城門を破壊した同刻。

黒城でピリカと別れてから三つの集団が情報交換を終わらせた後も

依然として“五色雲(ごしきぐも)”ユプケは

木々の晴れた河原で“九邪候補”一文字 咲と激しい戦闘を続けていた。

咲は岩々の突き刺した刀に体重を掛け息を切らす。

対照的にユプケは平然とした表情で息一つ切らしていない。


「はぁ……はぁ……あんた、人間やろぉ? めっちゃ強いなぁ~驚いたわぁ~」


咲の称賛の声を無視してユプケは正面から浮遊する太刀を操り斬りかかると甲高く鋭い金属音が響く。


「無口なお人やなぁ~少しくらいお話してくれてもええんとちゃう?」


太刀の一撃を刀で受け止めた咲が会話を続ける。

だが、ユプケは沈黙を貫く。


「大小様々な太刀を創造し、自由自在に操る能力ってところやろ?」


咲は巧妙(こうみょう)に手首を捻り、太刀をかわし、ユプケの懐に飛び込んだ。


「も~らいっ」


鋭い一撃がユプケの首元に迫る。

だが、突如として顕現した太刀が攻撃を防ぐ。


「太刀を盾みたいに使うんずるないっ!?」


一向に閉じない口にユプケは痺れを切らす。


「騒々しい女だっ!」


ユプケの爬虫類のような瞳が勢い良く見開かれると

強力な気術受け、咲は川の対岸まで吹き飛ばされた。

常人なら体内の臓器が破裂して死んでいる。

だが、咲は即座に自身の気術を展開し、ユプケの放った気術の大半をほとんどを打ち消していた。


「痛っ~随分と練度の高い気術やなぁ~。

黙って気術に集中していたなんて狡猾(こうかつ)なお人や」


咲は手で乱れた服装を軽く正す。

その様子も、口調も、余裕そのもの。

練っていた気術を即席の気術で相殺したその卓越した技術は只者ではない証だ。


「あの黒い城。お前の仕業か?」


「ちゃうちゃう。もう一人の候補さんやろ」


「候補? どういう意味だ」


「まあ、あんたには関係あらへん事やって!

そんなどうでもいい事より、今は戦い楽しみましょ!」


咲は鋭い気攻を放つも、ユプケは身軽に攻撃をかわす。


「も~らい!」


ついさっきまで対岸に居た咲は一瞬でユプケの間合いに存在していた。


「抜刀―清代水(きよみず)


「っ!」


ユプケが咲に対応するよりも速く、黒い刀がユプケの左肩から胸の辺りまでを

深く斬り裂き鮮血を飛び散らす。


「おえっ」


咲は嗚咽を漏らしながら覚束(おぼつか)ない足取りで着地。


「うっぷっ……惜しいなぁ~浅かったかぁ~」


気だるそうな咲の嘆きと共にドクドクと溢れる血が白い衣装を赤く染めてゆく。

ユプケは気術で無理やり身体を後方に押し出し致命傷をなんとか回避。

しかし、左肩の傷は深く血が止まらない。


「それが……お前の能力か……」


ユプケは傷口を抑え、気術で傷口を圧迫する。


「うちの能力やないで。この仮面の能力《余剰行動(よじょうこうどう)》や。

RPGゲームとかのコマンドでよくあるやろ二回行動。

うちの脳の容量が許す限り二つの動作を同時に出来るんや。

行動量と時間に応じてめっちゃ酔うんが傷やけどな」


咲が一振りで二振り出せたり

攻撃と移動同時に移動していたりその原理が明かされた。


「うちだけタネ話して不公平やん!

そっちの能力も教えて~ほしいんやけど!」


咲が不服そうに文句を言うと朦朧(もうろう)とした意識の中

最後の力振り絞り、ユプケが右手を天に(かざ)す。


「いいだろう……刮目(かつもく)せよ。これが我が神の力だ。

現れよ、北地を守りし一柱。悪性を打ち断て! 神太刀! トミカムイ!」


ユプケの頭上に夜空を埋め尽くすほどの大量の太刀が突如として顕現する。

総数は十万本。その全てが神格の太刀。

手を振り下ろすと無数の太刀が雨の如く降り注ぐ。


「数が多いだけやろ! 当たらな意味ないやんっ!」


咲は《余剰行動》を使い、攻撃と移動を同時に処理。

気盾で攻撃を防ぎつつ、一気にユプケの懐目掛けて駆け込む。


「無駄だ!」


ユプケの意志により通常の太刀が倍の大きさの大太刀へと変容。

大きさが変わると無論、質量も変わる。

威力も増し、咲の気盾に(ほころ)びが生じた。


「くっ! 抜刀―矢坂(やさか)!」


腰に携えた刀を抜き、その風圧で降り注ぐ大太刀を全て天へと打ち返す。

遠距離の投擲武器を重力に逆らい、原理に逆らい、反射する抜刀術。

矢のように放たれた大太刀は投擲武器と“四界の法”に認定されたらしい。

ユプケは即座に無数の大太刀を消し、力を一つに集約。

一本の超巨大な太刀を顕現させた。

その大きさたるや山と山と繋ぐ大橋の如き大きさ。

振り翳された時の威力は想像に(かた)くない。

この巨大な太刀こそがトミカムイ本来の姿である。


「おもろいやん! うちの本気の一撃受けてみ!!」 


刀を収め、鞘に溜め込んだ莫大な気を抜刀すると同時に

刀身に全て乗せ、山をも崩す爆発的超破壊力を放つ抜刀術。


「抜刀―掃山(はくさん)!!」 


黒刀から放たれた巨大な斬撃と超巨大な太刀が真っ正面からぶつかり合う。

両者の攻撃は均衡してると見える。

が、まるで違う。


「お前は人間に留めておくにはあまりにも強い……だがっ!!」


圧倒的な世界に許された権能で巨大な太刀が咲の斬撃を断ち斬った。


「我がトミカムイの権能は()()()()()!!」


「っ――――」


振り下ろされた太刀は河原を両断し、咲を一撃で吹き飛ばしたのだった。

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