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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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八十話 仮面の弱点

一同は少しの休息の後、黒城の対策をまとめ、黒城へと向かっていた。

先導するのは“五色雲(ごしきぐも)”続いて朔桜たち一行とその他

最後に“人魔調査団”が連なり、夜の森の中を進んでゆく。

朔桜の前方にカシャ。右後方にノア。左後方にティナが控える。


「桜髪、少しいいか?」


「どうしたんですか? カシャさん?」


「道中、こいつの話を聞いてほしい」


カシャが前方から紹介したのは、赤茶髪ツインテールの少女。


「こいつは、以前私が所属していた“金有場(カナリバ)”のメンバー。メティニだ」


「どうも」


メティニは小さく会釈するとスッと朔桜の横に並ぶ。

暗殺を得意とする彼女に染み付いたごく自然体な動き。


「おっと失礼」


その動きに不快の念を抱いたティナが二人の間に即座に割り込む。


「さ、話を聞きましょうか?」


なんだこの女という顔でティナの引きつった顔を見た後、カシャに視線を移すと

カシャ両手を広げ肩を(すく)めていた。


「はぁ……。まあ、話というのはあのエルフ……シンシアといったかしら?

私が彼女に負けた後の話よ。あの黒い影に関係する話」


「是非、聞かせてください」


ティナの背後から朔桜が真剣な表情を覗かせる。


「まず、私たち“金有場”はメサ・イングレイザに金で雇われ、貴方たちを殺す依頼を受けた」


「は?」


「どうどう(てぃな)! それはもう終わった話! 話が進まないからっ!」 


唸り暴れる獣のようなティナを朔桜が羽交い絞めにして押さえつける。


「……続きを話しても?」


「ど、どうぞ!」


詰まった後方に謝り、再び道中を進む。


「依頼を受けた結果、私たちは貴女たちに惨敗」


「当然ね」


ティナが茶々を入れるも、メティニは無視して話を進める。


「カシャは敵前逃亡。私は敗北。オーヌは死んで、ヌエは貴方たちに捕縛された。

私はその後、メサに回収されて異空間でカシャと合流し

そこでメサに脳の要領の上限解放の話を持ち掛けられてカシャは受諾し、私は拒んだ。

結果、カシャはそのままメサに連れられ、私の前にはパーフェクト=フェイスが現れた。

奴の呼び掛けに答え、不意に奴の目を見た時だった。

全身が深淵のような闇に呑まれたかと思ったら私の身体は変形し

身動き一つ出来ない仮面となっていたの」


朔桜たちはその話を聞いて息を吞む。


「仮面にされた私はパーフェクト=フェイスの体内に格納され

リョクエンとかいう魔人の仮面として装着された。

後の事情は知っていると思うけど、結果この人間界まで来ちゃったって訳」


メティニはこれまでの経緯を告げた。

だが、重要な疑問が残る。


「あのっ! メティニさんはどうやって元の身体に戻れたんですか?」


皆が思う一番の疑問を朔桜が口に出した。


「さぁ? あの男が水中に落ちたら自然と乖離(かいり)して元の姿に戻っていたわ」


「水中に落ちた?」


その言葉を聞き、ティナの中で何か引っ掛かった。


「あのパーフェクト=フェイスって奴、自分で船床を破壊して吹き上げた水を異様に避けていた」


「じゃあ、仮面の解除方法は水に浸す事?」


朔桜が可能性を口にすると聞き耳を立てていたリョクエンが口を挟む。


「ちげえな。俺は仮面付けたままバシャバシャ顔洗った事もあったけど、取れる気配は全然なかったぜ」


「その節は世話になったわね。他にも色々と嫌なモノを見せられたわ」


「おいおいっ! そんな事言われたって仮面が生物だなんてこっちも知らなかったんだっつーの!」


リョクエンの仮面にされていたメティニは随分と嫌な思いをしてきたらしい。


「おうおう、仮面の話で盛り上がっとるのぉ!」


仮面の話題を聞きつけて仮面にされていた被害者でもあるデガロが参入してくる。


「そういえば、儂がラヴェインから剥がれた時も水に浸かっとったわい。

お前らが全員ノされて気絶してた時じゃな」


「私も水に浸かったら解けました」


デガロに続いて見知らぬ男が会話に入って来る。


「誰? お前?」


尻すぼみのか細い声にで会話に入って来た虚弱そうな男を怪訝(けげん)な目でティナは(にら)む。


「あ、あの僕小井 清陵(こい せいりょう) です。能力は《(スクリーム)》。貴方に負けた化け物の仮面にされてました……」


「お前っ! ナロゥに着いてた仮面かっ!?」 


「ナロゥっていうんですかあの紙みたいな――――」


「死にたくなければ君の能力の話はやめたほうがいいよ?」


ノアは衣で清陵の口を閉じた。

“人魔調査団”の船員のほとんどはナロゥが《叫》を使って殺戮(さつりく)した。

彼らにこの事実を知られるという事は、彼の死に直結すると瞬間的に判断したのだ。

鼻も口も塞がれ呼吸の出来ない誠陵は必死で何度も頷く。


「ぷはっ」


解放され何度も呼吸を繰り返すとティナが疑問を問う。


「で? 何故そのお前がここに居る?」


「貴女がその……倒した後、彼が仮面の僕を懐に入れたので」


そう言ってリョクエンの顔を見る。


「あぁ! そういえば、どさくさに紛れて仮面懐に入れてたな」


完全に忘れていたとあっけらかんと笑う。


「ならさ、仮面から戻る条件は海水なんじゃない?」


ノアがポロっと溢した言葉に朔桜とティナは好感の反応を示す。


「確かに! ノアちゃんそれあるかも! 清めの塩的な!」


「塩水……いい線いってるかもしれないわね」


皆もその意見に同意している様子だ。


「なら今後“顔の無い集団(ノーフェイス)”が現れたら殺さず捕獲し

水、海水、塩水。水の量、塩分の濃度を人体実験してみましょう。

もしもそれが本当に弱点であれば、あのチート能力にだって対抗出来るはずよ」


ティナの意見に皆賛成し、今後の“顔の無い集団”への対策は纏まった。

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