表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
327/396

七十五話 助太刀

黒城にて巨大な太刀の不意打ちを受け

落下したティナは妖精のような少女と対峙し、意識を失う。

少女は無抵抗なティナを見下ろし、装備『マキリ』を振り(かざ)した。


「ばいばい」


命を奪うその刹那、大きな黒体が少女の背後から拳を打つ。


「おっとっ!」


身を軽快に捻り、拳をかわす。


「背後を取られているのに全然気が付かなかった」


少女が異質な見た目の黒体と対峙して無言の時が数十秒経過する。

少女は異変が起こらない事に異変を感じ痺れを切らして口を開いた。


「あなた、生物? なんで私の力効かないの?」


疑問を問いかけるも黒体からの返答はない。


「無視? 別にいいけど」


少女は指を黒体に向けて気術を展開。


「気攻―(オッケ)!」


一点に凝縮された鋭いエナが黒体の身体の芯を突くが

黒地で造られた黒体は気術を何事もなかったかのように吸収する。


「うそ、気術を吸うの!?」


動揺する少女と対照的に、黒体は余裕からか行動を起こさない。


「これならっ!」


少女は勢い良く『マキリ』を心臓部分に突き立てた。

だが、その黒体は肉体の強さをベースに造られたカシャの黒体。

少女が打つ些細な小刀の一撃など効くはずもない。

黒体の容赦の無い拳が少女を打つ。


「気盾!」


拳に反応して防壁を張るも、巨大な拳はエナを吸収し、気盾を貫通。

少女の顔を容赦なく殴り飛ばす。


「がっ!」


一発の攻撃で少女のエナは八割持っていかれたうえ

気術の浮遊が解け、黒城のエナ吸収が襲い掛かる。


「まずい……逃げなきゃ……」


次第に衰弱していく少女。

拳の衝撃で脳震盪(のうしんとう)を起こし、視界がまともに定まらない。

覚束ない感覚でなんとか這いつくばり、立ち上がるも

カシャの黒体は容赦なく襲い掛かる。

少女の頭目掛け両手を組んで腕を振り上げた。

剛腕の鉄槌が繰り出される寸前で男の声が響く。


「トミカムイッ!!」


カシャの黒体の背後に巨大な太刀が顕現。

黒体が背後から伸びる影で異変を察した時には事は既に終わっていた。

鮮やかで無駄の無い一閃が黒体を真っ二つに両断。

原型を保たなくなった黒体は塵となって跡形も無く消えてゆく。


「無事か、ピリカ」


気術で浮遊し、駆け付けたのは

赤い模様の入った巻貝のような白い帽子。

黒い短髪に爬虫類のような黄色い眼。

両耳には黒いピアス。

濃い青のアンダーウェアの上から

赤い模様の入った白い民族衣装を着用し

左手首には籠手が装備されている。

白い足袋に草鞋を履いた少年だった。


「ユプケッ!!」


泣きそうな声で“五色雲(ごしきぐも)”ピリカは“五色雲”のリーダーユプケに縋り付く。


「やめろ。離せ」


「無理……もうまともに使える気が無い」


「やれやれ、仕方のない奴だ」


ユプケは溜め息を吐きピリカを背負う。


「今の何だったの?」


「知らん。知る必要もなかろう。もう消え失せたのだから」


彼の言葉と同時に巨大な太刀も消滅する。


「なんか降って来たコレどうする?」


「エプンキネたちには何人もここへと入れるなと言ってある。

即ち――――悪性だ」


ユプケは普通の大きさの太刀を手元に顕現させた。

そのままティナへと斬りかかるのかと思いきや、別の塔の上の視線へと意識を向けた。


「何者だ!」


ユプケが塔の上から様子を窺っていたモノへと呼びかけると

気術で階段状の足場を作り、意気揚々と降りてくる狐の仮面を着けたセーラ服の少女。


「へぇ~好きな大きさの太刀を出せるんやぁ~面白そうな能力使うなぁ~」


七ヵ国航空母艦“ヒュージア・ブロード”で朔桜たちが一戦交え逃走した

“九邪候補”一文字 咲が楽しそうにユプケを見下ろす。

敵味方判別付かない快楽的な空気感。

そして表情を隠す仮面も相まって慎重なユプケは、より一層警戒を強める。


「あれはヤバい。私の神を――――」


ピリカが戦闘の意志を見せるもユプケが手で制す。


「いい。お前はエプンキネたちと合流し、休んでいろ。俺がアレを片づける」


カシャの黒体の一撃を受けエナの残量がほぼ無い彼女の身を案じていた。


「大丈夫……? 気の量からして強敵だよ?」


「俺が負けるなどと思うか?」


「全然思わない」


「なら任せて退け」


「うん……」


「あのあの、うちと死合うのは全然ええんやけど、場所変えてもいいですかぁ~?

ここじゃあまともに戦えんわぁ~」


咲がうんざりだというトーンで提案を持ち掛ける。


「いいだろう、乗ってやる。その前にピリカ、そっちの雑魚共の処理はお前に任せるぞ」


ユプケはピリカを背から降ろし、ピリカが自力で浮遊すると

話は済んだと咲に目で合図を送った。


「じゃ、そういうことで。後はせいぜい頑張ってなぁ~()()


咲は言葉を残し、流星の如く気術で宙を駆けるとユプケも同様にその後を追って行く。

二人の行方を見送ったピリカは意識を切り替えて『マキリ』を手に持つ。


「こっちも手早く終わらせなきゃ」


小刀を逆手に持ち構えると同時に眠り姫を少年が(さら)う。


「……意外と速度あるね」


城の門から猛烈な速度で飛び出したレオの速度を見てピリカは感心する。

レオはピリカに背を向け、一目散に城の門へと戻って行く。


「くっそしんどいなこれ!」


足から持続的にエナが吸われていく。

黒城接した箇所からエナが吸われるため、足にはランニング後のような妙な疲労感が溜まってゆく。

レオは危機感を抱き、ティナを抱えたまま門へと駆け出す。

敵に背を向けている状況だが、不思議と追撃はない。

城外へ出ると気を失ったティナを木陰に休ませて(きびす)を返した。


「城外に出てくれて助かるわ。無駄なエナを使わなくて済むもの」


浮遊しながらレオを追って来ていたピリカは地に足を着くと小刀を構えた。


「その人を運んだところで、あなたたちが死ぬって結果は何も変わらないけどね」


「フラフラな状態でよく大口が叩けるぜ」


「あなた程度なら省エネで十分だから」


「上等だっ!!」


レオは両拳を構えピリカと対峙するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ