表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
326/396

七十四話 黒城

朔桜の指示で神との戦いを避け、一足先に黒城へと向かったティナとレオ。

二人の間に会話は一切なく、黙々と黒城へと向かい、既に巨大な外壁の前に到着していた。

黒岩の煉瓦(レンガ)で造られた世界滅亡級の攻撃すらも防ぐ堅牢(けんろう)な城壁。

高さもあり越えるには難儀しそうなものだが、分厚い門扉(もんぴ)はどうぞ入ってくださいと言わんばかりの全開状態。

入口からは数える気もなくなるほどの長い階段が城へと伸びている。


「近くで見るとかなりでっかいっすね……」


レオが黒城の全容を見て呟くもティナは会話を弾ませる気なく開放されている門から正面突破。

一足先に黒城へと侵入する。階段を四つ飛ばしにして一歩踏み込んだ瞬間、明かな違和感がティナを襲った。


「っ!」


即座に足を階段から離し、後方へと退く。


「どうしたんですか!?」


ティナの猫のような素早い動きにレオは何事かと戸惑うと

レオに進むなと手で制止した。


「待てっ! この城……入ったモノのエナを吸うぞ!」


検証のため、今度は魔装『八つ脚の捕食者(スパイダー)』の脚を使って階段に踏み込むも

今度は魔装のエナが吸われていく。


「なるほど……。城に触れてるエナを持つモノ全ては、エナを奪われ続けるらしい」


「そんなっ! こんなバカでかい城でエナジードを吸われながら散策しなきゃならないんですか!?」


「は、する訳ないだろ。この吸収力、十五分(じゅうごふん)足らずでエナが枯渇(こかつ)して死ぬ」


ティナは『八つ脚の捕食者』の脚で階段を突き刺す。

しかし、階段に脚が食い込むどころか脚の先端が欠けた。

ティナは欠けた爪先を見て唖然とする。


「マジ? 何なのこの硬さ……。生半可な攻撃じゃ壊せそうにない」


「じゃあ、俺の拳なら――――」


「余計な事はするな! 私は朔桜からお前を目的の相手まで安全に先導しろって言われてるの!」


「はいぃ……」


攻撃的なティナの口調を受け、しょんぼりとするレオ。

ティナはポケットから糸の塊を出す。


「もうこれだけしかない……。あの金の化け物に切られたのが痛いわね……」


ティナは『絡め捕る糸(アラクネー)』を切られた事を愚痴る。

仕方なく『八つ脚の捕食者』を使い、黒城の壁の隙間に爪を掛け、器用によじ登ってゆく。


「私が先に見てくるからお前はここで小さくなって隠れていろ」


レオの返事を待たず早々にティナは駆け上がった。


「居城に潜入するのはあの時以来ね」


嫌な記憶を思い出しつつ、入り口から一番近い塔の屋根へと登りきり辺りを見渡す。

ティナの乗っている塔の他に八塔あり、一番怪しいのは入り口の一番奥にして一番高い塔。


「バカはあーゆう高い所が好きって相場が決まってるのよね」


ティナがどうにかレオを向こう側まで効率的に送り届ける手段を考えていると

突如、月明かりが巨大な影に覆われた。

ティナの目に映るのは、天から振り翳される巨大な太刀。


「――――っ!」


間一髪で直撃はかわしたが、膨大な質力の一撃で

塔は真っ二つに両断。

半壊した城の残骸に巻き込まれ、ティナは黒城の内側へと落下し、土煙に呑まれた。


「ゴホゴホッ……何よ今の……」


幻術と見紛うほど突如として現れた巨大な太刀にティナは混乱する。

立っていた塔を見て衝撃的な光景を前に唖然とする。


「冗談でしょ……?」


『八つ脚の捕食者』でも破壊できなかった

世界滅亡級をも凌ぐ黒城が綺麗な断面で両断され、半塔になっていた。


「ユプケしくじったね。こんな邪悪な相手は即殺すべきだったのに」


空中を浮遊して歩く花の妖精のような少女。

白藍(しらあい)のショートヘアに澄んだ水色の瞳。

身長はノアと同等ほどで、頭部の両側面には羽のような髪飾り。

首にはシンプルなチョーカー。

胸元から膝下までを覆う白い生地に烏帽子(えぼし)の花が無数に着いた衣服。

白いタイツを履き、右足の(くるぶし)辺りには可愛らしいリボン。

靴はローヒールのパンプス。

装飾と衣服は全て紫青色で統一されている。

ティナは不意に現れた少女に敵意を向けたその瞬間


「ゐ――っ!」


口唇、舌、手足が痺れ、言葉も喋れず、身体も動かせなくなる。


「――――っ!!」


それに加え、吐き気と腹痛が襲い、異常な速度不整脈が打ち、動悸、息切れ、眩暈も付加。


「――――っ!!!」


痙攣(けいれん)と呼吸不全までも起こし、水を離れた魚のように藻掻(もが)いている。


「出会って早々過剰な敵意。あなた、かなり危ない人だね」


少女はティナを敵対認定すると

衣服の中から小刀の装備『マキリ』を取り出して静かに迫る。

一歩、一歩と進むに連れてティナは少女に強い敵意を示すが、それは逆効果。

ティナの症状は悪化し、そしてついには完全に沈黙した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ