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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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七十二話 亡霊たち

夜の森を滑るように駆けるドクレス。


「冗談ではない。神の相手なんぞしておれるか」


五色雲(ごしきぐも)”エプンキネの神魚 カムイチェプを目の当たりにし

早々に戦う相手ではないと見切りを付けて逃亡したのだ。


「奴らも儂に構っている暇はないはず。

ならば、今が逃げる絶好の好機というもの!」


ドクレスは今後の身の振り方を考えながら

悪い笑みを浮かべていると、背後から発砲音が響いた。


「っ!」


ドクレスは早々に地面を伸ばし防壁を形成。

無数に襲い掛かる弾丸の嵐を凌ぐ。


「何処に行こうってんだ? 城は真反対だぜ?」


ドクレスの遥か後方から銃を発砲したのは“人魔調査団”のウェポン。

その背後には同じく“人魔調査団”のメイプルも佇んでいた。


「敵前逃亡した儂を連れ戻しに来たか?」


「そう思うか?」


ドクレスの質問をウェポンが質問で返す。


「……いいや。仲間を殺された仇討ちをしに来たのだな」


ドクレスは二人の殺気を感じ取り、確信を持って口にする。


「さぁ。どうかしらね」


メイプルが(とぼ)けると人差し指と中指を揃えドクレスに向けた。


「樹液弾!」


メイプルが能力《樹液体》で指の先から硬化した樹液を放ち

それに合わせウェポンが気術を纏わせたマシンガンを放つ。


「ストーンウォール!」 


ドクレスが地面に手を(かざ)すと岩の壁が弾丸を阻む。


溶土沼(ようどぬま)


二人の足元の地面が溶けだし、底無し沼へと変化する。


「液壁!」


メイプルは即座に自分の腕を液状に変化させ

沼の上に液壁を撒いて足場に変換。

ウェポンは早々に飛び乗り、一足でドクレスの背後へと飛ぶと

ロケットランチャーを懐から取り出し、迷う余地なく放った。

ドクレスは死の危機にまるで動じる事なく冷静に精霊術を唱える。


水柔(すいなん)」 


柔軟な水玉を発生させるとロケットランチャーの弾を優しく包み込み、水圧で一気に押し潰した。


「アースウォルバ」


突如として地面から飛び出した鋭利な棘のある土柱がウェポンの脚を引き裂く。


「ウェポンッ!」


「ほれ、お前にはこれじゃ。ファイアバイツ」


強大な高温の炎の弾丸を放つ。


「液壁!!」


咄嗟に防壁を出すも、樹液で形成された壁は炎弾に成す術なく溶かされ貫通。

メイプルの片腕ごと溶かされた。


「くっ……こいつ……!」


「思った以上につええな……」


火、水、風、地の四属性を使える“四適者(リゾーマタ)”であり

適材適所で有効な能力を使い分ける芸達者なドクレスに“人魔調査団”の二人は苦戦を強いられている。


「所詮、人間などこの程度。“四適者”の相手ではないわ」


圧倒的な風格で二人を(さげす)む。


「二人殺そうと四人殺そうと変わるまい。ここで死ぬといい」


ドクレスが精霊術を唱えようとエナを高めた瞬間

上空から何かが猛烈スピ―ドで落下してくる。


「なんじゃ!」


ドクレスが異変に気付いたと同時に復讐の一撃が放たれた。


「気攻―天承(てんしょう)!」


掌から放たれた衝撃波がドクレスを容赦なく地面へと叩き潰す。


「がっ!」


鈍い声を上げ、ドクレスは地中で動かなくなった。


「ただいま。メイプル、ウェポン」


空から飛んで来たのは、ドクレス攻撃で海に叩き落されたはずのエンジェルだった。

そして、更に三人が樹木を乗り物代わりにして降りてくる。


「随分と良いザマじゃねぇか爺」


仮面をしていない素顔で地に伏せたドクレスを見下し

笑みを浮かべるのは、眼球の白目部分が黒く変色している男リョクエン。


「私はお前のおかげで解放されたから死ぬ前に感謝しておくわ」


やや上機嫌気味に声を上擦(うわず)らせたのはリョクエンが使っていた

能力《指定方向(ディズイグネイション)》の真の能力者であり、姿を消していたメティニ。

そして、何も口を開かない見知らぬ虚弱な男であった。

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