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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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七十話 五色雲 イラマンテ

森の奥から強襲してきた黄金の熊の出処を適格に掴んでいたノアは

【鵜の目鷹の目】で夜闇をまるで気にせず、目的地点まで迷う事無く到着した。


「この辺のはずだけど~何処かなぁ~」


周囲を見渡すも人の気配はない。

だが、肌を焼くような敵意だけはヒシヒシと伝わっていた。

遠くの木上からノアの足元に銃弾が放たれる。


「すぐに去れ! お前のような子供が一人で足を踏み入れても良い場所ではない!」


森の奥から男の声が警告する。


「やっぱり~。そ~ゆ~タイプの人なんだね~」


ノアは警告に構わず声の場所へと直進。


「なっ――――」


銃弾のレンズ越しにノアの顔が迫り

急いでその場を移ろうとするも時すでに遅し。


「み~つけた」


逆さまのノアが既に男の正体を視界に収めていた。

前方が裂けた藁の帽子と黒い短髪。

額から目まで抉れた顔。

獣の皮で作られた羽織、マフラー、マント、手袋、腰袋。

背中には狩猟用のライフル銃。

大きな木製のヘラ。

柄の長い槍などが備えられている。

脛には紐が巻かれていて、草鞋を履いているその姿はまさに山に生きるマタギそのもの。


「お前、何者だ!? ただの子供じゃないな!?」


「ノアはノアだよ?」


「ノア? それがお前の名前か?」


「うん」


「俺は“五色雲(ごしきぐも)”のイラマンテ」


「ふ~ん。そーなんだ」


ノアはまるで興味が無さそうだ。


「で? なんでお前らは俺らの邪魔をする?」


「それ、あの半裸のおじさんにも言ったけどさ」


「半裸の……あぁ……エプンキネか」


「ノアたちはあの城に捕まった仲間を取り返しに来ただけだよ」


「気の毒な話だが、あの城は危険過ぎる。俺の仲間が今――――」


「先行してるんでしょ? それは聞いたよ。でも、一刻も早く助け出したいからそっちと敵対したって訳」


「あまり利口な考え方じゃないな。我らを敵に回す意味理解しているか?」


「そっちこそ。ノアたちを敵に回した事、後悔するよ?」


両者の意見は平行線。

どちらかが折れない限り解決する話じゃない。


「そんなにノアたちの事を止めたいんだったらさ。ノアの事殺してその意志を示してよ」


突如としてノアが気の狂ったような提案をする。


「お前何を――――」


「殺す覚悟もないのに。“九邪”と対峙するのは無理だよ。

あれはそんな甘い相手じゃないもん」


ノアの言葉の要所に理解出来ないイラマンテの前で

ノアは両手を広げて無抵抗の意を示す。


「さあ、どうぞ。君の覚悟見せて?」


イラマンテは年端も行かぬ丸腰少女の提案に戸惑いを隠せない。


「どうしたの? ノアを殺さないの?」


ノアは何度も呼びかけて煽るも、殺そうとする素振りすら示さない。


「バカな真似はやめろ!」


「そう。じゃあ、ノアが殺すね」


一足で飛び出したノアが鋭い衣をイラマンテの首目掛けて容赦なく振り下ろした。


「くっ!!」


イラマンテは木製のヘラに気術を流して強化。

ノアの衣をなんとか弾き返す。


「殺る気出た? それともまだ覚悟が決まらない?」


ノアはイラマンテの様子を丁寧に窺う。

それに気づいたイラマンテはノアに質問を投げかけた。


「逆に問う。お前は何故、俺を殺さない?

お前の実力ならば、今の俺を殺す事は容易いはずだ」


その言葉にノアは何度も頷く。


「ノアはすっごーく強いからね、殺すのは簡単だよ。

でもこれはティナちゃんを殺さないでくれた情け」


「情け……か……」


「銃を撃った時も、金のくまさんを出した時も、ティナちゃんを簡単に殺せたよね?

でも殺さなかった。それはそっちの情けだよね?」


「いや、違うな。あれは俺の……甘えだ」


「情けでも甘えでもどっちでもいいんだけどさ。こっちはそれで助かった。

あそこでティナちゃんを失ってたら、朔ちゃんは壊れちゃったと思うし。

だからこれはノアからの些細な温情だよ」


「なるほど。その口調で大体理解した。

お前は俺が殺す気ならば殺すし、殺す気がないならば殺す気は無いという腹か」


「ざっくり言うとそーだね」


「じゃあもしも……他に殺る気の奴が居るとしたら?」


「ノアとしては、そっちの相手をするかなっ!!」


二人は対話の途中、同時に森の中へと攻撃を仕掛ける。

だが、対象は攻撃を機敏にかわした。


「何者だ、出てこい!」


まるで気配のない異質な小さい身体。


「この人……ノア知ってる!」


ノアの目の前に現れた小さな黒体。

それはスネピハで“精天機獣”に敗れ、命を落としたはずのイシデムの師 ポテの姿であった。

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