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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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六十九話 五色雲 ポロオッカヨ

全裸の男に連れられ、山下へと消えた

元“顔の無い集団(ノーフェイス)”ラヴェインと“人魔調査団”スモーク。


「うおおおおおお!!」


「おおおおおおっ!!」


「うがーーーーー!!!!」


三人の男たちは己が肉体と拳で激しく! 熱く! 語り合っていたッ!

夜の山中に男たちの叫び声が響く。

周囲の温度にも影響を及ぼしていそうな熱気。

玉の汗が弾けるむさ苦しい空間。

二人は何度も全裸男に拳を撃ち込んでいるが、効果は皆無。

まるでびくともしていない。


「全然攻撃が効いていないZE」


「くっ……これならばどうだ! マッコウパンチ!!」


ラヴェインは真正面からの正拳を放つが

全裸男は巨大な掌でラヴェインの猛烈な拳を受け止めた。


「うがーーーーーーーーーーーー!!!!」


雄叫びを上げるとラヴェインの拳を握ったまま拳を打ち込む。


「なっ――――」


そのままラヴェインはそのまま地面に激しく叩きつけられ

地面は拳の形のクレーターができた。


「ぐっは!」


スモークが気術を腕に纏わせ、背後から全裸男を殴りつけるも傷一つ付かない。


「怪物ME!」


「うがーーー!!」


全裸男が地面に手を向けると

周囲の草木がスモークの全身を絡め捕り、絞り上げる。


「うぐっ!」


苦しそうに藻掻くも逃れる術はない。

二人は絶体絶命の窮地。

そんな中、夜闇の森から何かが歩いて来る。


「うが?」


全裸男も足音に気付き、木の根を伸ばしてその正体を捕らえようとするが

根が対象に触れた瞬間エナを一瞬で奪われ根を操る力を失う。

それに同期して、スモークを捉えていた根の呪縛も解けた。

全裸男はその正体不明の何かだけを一点に警戒している。

隙をついてスモークはラヴェインを回収。木の裏へと姿を隠した。

ラヴェインは深手を負っており、すぐに自力歩行するのは困難だ。

森の中から姿を現したのは、イシデムの鍛錬場で暮らしていた少年イツツの姿を模した黒体。

この場に居る誰もが面識のない人物。


「なんだあの少年HA?」


スモークは異様な黒体に困惑していると

黒体が瞬時に全裸男との距離を詰めて拳を握る。

全裸男は振り翳された拳を真っ向から掌で受け止めた。


「うがっ!?」


その瞬間、全裸男の掌からごっそりとエナが奪い取られ

受け止めた右腕が鬱血したかのように冷たくなり、自分の腕だと認識出来ないほどに神経感覚が通わなくなっていた。

腕だけではない。肩から首筋、右腰の辺りまで麻酔をかけられたかのように麻痺している。


「うがっ!」


エナの異常な吸収力を感じ、全裸男は即座に身を退く。

血の巡りと同じで徐々に心臓がエナを消耗した部分へと

身体中のエナが分配され、なんとか感覚を取り戻した。

七割ほどのエナを黒体に持っていかれた全裸男は、黒体を危険な相手だと認識。

即座に本気の戦闘態勢を取る。

彼の名はポロオッカヨ。

エプンキネと同じく“五色雲(ごしきぐも)”の一人。神の御使いである。


「現れよ、北地を守りし一柱。我らが大地の侵略者に粛清を与えよ! 大地神! シランパカムイ!」


周囲の樹木を何重にも自身に纏わせ、樹根を神聖な力で強固な装甲へと変える。

全身樹根に包んだその巨大な姿は、まるで人を閉じ込める“人型の樹檻(ウィッカーマン)”。

ポロオッカヨが居る胴体の中心、心臓部は黄色く光り

命の灯火のように燃えながら御使いのエナを削り動く人型要塞が顕現。

“人型の樹檻”が間髪入れず、イツツの黒体目掛けて巨大な拳を振り下ろした。

黒体は慢心しているのか、その場を動く事はせず、あっさりと押し潰される。


「なんて威力DA……」


スモークが固唾を呑んでその動向を見守っていると巨大な拳がゆっくりと上がり始めた。

隕石が落ちた後かのような巨大なクレーターの下には、人型の原型を留めないほどに砕かれた黒体の破片が地に溶けてゆく。

同時にエナを使い果たしポロオッカヨの“人型の樹檻”も崩れ始めた。

中心部から出て来たポロオッカヨが地面に着地。

神を呼び出し疲弊している様子だが、ラヴェインとスモークを見逃す気は更々ないらしい。

ギョロっとした巨大な目で二人を見つけると雄叫びを上げた。

それは虚勢の咆哮。もうポロオッカヨに戦う力は無い。


「こんなにも静かな森で、そんなに粗雑な大きな声を出すものではない」


一言一言綺麗な発音で(たしな)める男の凛とした声が大声の後にの森に通る。

その存在が目の前に現れるまで、その場の三人はまるで気づく事が出来なかった。


「何を驚く。ただ、大きな声が耳障りだと言っただけだが?」


何事も無かったかのようにその場を通り過ぎようとする僧侶のような坊主頭の男。

尾が二つに別れた眉。

翡翠のように澄んだ鮮やかな瞳。

細い首には一粒一粒の大きなブティックレッドの辰砂(しんしゃ)の数珠が並ぶ。

肩周りには分厚い白フード。

東アジア大陸の赤香(あかこう)のローブで首下全身を覆っている。

端の生地は金や赤色の細やかな柄装飾が施されていた。

今の衝撃的な出来事になんの興味も抱かず

無の表情で目の前を通り過ぎようとする男をポロオッカヨの大きな手が制した。


「うがっ!!」


「……邪魔だ」


ハッキリとした口調と嫌悪の態度を示した瞬間

肉弾戦を得意とするラヴェインとスモークですら

傷一つ与えられなかった全裸男の剛腕を、いとも容易く吹き飛ばした。


「――――っ!!」


絶句したポロオッカヨが身を退くと

害した事すら眼中にない男はそのまま森の奥へと歩みを進める。

その場の誰も男が何をしたのかまるで理解出来なかった。


「ば……化け物……っ!」


今までほとんど叫び声しか上げなかったポロオッカヨがついに人語を話すと男が足を止めた。


「その見た目の者に言われるとは心外だ。私はお前と同じ列記とした人間だよ」


「人……間……?」


「ああ、そうとも。ただの人間だ。

私はあの城で起こる出来事を観察しなければならない。

それが私の仕事だ。邪魔をするのであればこの場で退場を願うまで。

邪魔しないのであれば、参加する事を許そう」


「おでの仕事……誰も城へ行かせない事……」


「そうか。ならば職務を全うするため私を阻むか?」


「おでじゃ……お前止められない……」


「当然だ」


「だから……通れ」


「賢明な判断だ。右腕は勉強代として貰おう。

“四世界の終焉(しゅうえん)”まで命を大事にするといい」


男は物音一つ立てずその場を去る。

仲間たちの背後に危機が忍び寄っているにも関わらず

ラヴェインとスモークは格上二人の会話に割込む事が出来なかった。

その後、ポロオッカヨは自信を無くし、長い髪の中から包帯を取り出し止血。

そして、気も心もどこかも小さくなってしまったのか

髪の中にしまっていたズボンを大人しく履いたのだった。

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