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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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六十一話 亡き船員に思いを馳せ


皆で管制塔に戻り、情報の共有をするためアートとスノーマンと合流を果たす。

朔桜が宝具で瀕死(ひんし)だった“人魔調査団”を治した事は

メイプルが上手くはぐらかしてくれたが

朔桜の宝具の事を知っている者たちは、心の中で深く感謝した。

そんな中、スモークが何かに気が付き、キョロキョロと周囲を窺う。


「エンジェルはどうしTA?」


皆に問うも誰一人も行方を知らない。


「そういえば、リョクエンくんとあのおじいさんも居ないね」


朔桜が思い出したかのように二人の名前を口にすると背後から返事が返って来る。


「儂はここにおるぞ」


「うわっビックリしたぁ!」


いつの間にか管制塔の中に入り込んでいたドクレスの声に驚く朔桜。


「しかし、残念ながらリョクエンは金髪の女に襲撃され、諸共(もろとも)海原へと消えてしまった」


「なんだTO!?」


金髪の女という言葉に“人魔調査団”は反応する。

その容姿はこの場に居ないエンジェルの特徴に当てはまっていた。

(うつむ)き話すドクレスにラヴェイン強い口調に問いかける。


「リョクエンを見殺しにしたのか、ドクレス」


ドクレスは鋭い言葉の発言者を睨む。


「お前は……ラヴェインか。そんな訳なかろう。

相手はなかなかの強者であった。片方が生き延びただけでも奇跡的だ」


「…………」


ラヴェインはドクレスの言葉を半信半疑で受け止め、口を閉ざす。


「そんな、エンジェル……」


“人魔調査団”の面々は仲間の死に深い悲しみに暮れる。

乱戦であった以上、敵味方の判断がつかなかったのは

仕方のない事ではあるが、互いに許容するにはあまりにも大きな出来事。

だが、双方はそれを言葉にせず、今後のため、互いのために呑み込んだ。


「それよりも、何故この場にラヴェインが居る?

貴様はこの船を襲った“顔の無い集団(ノーフェイス)”のはずであろう?」


ドクレスは話を逸らすかのようにラヴェインを標的にした。

その効果は大きく命からがら生き残った船員からは疑念の視線が送られる。


「カシャさん。説明、お願いします」


朔桜が冷静に呼び掛けるとカシャは真摯(しんし)に頷く。


「我が師ラヴェインは、途中でこの船に現れ、すぐに我々と戦闘になった。

故にこの船の者を一人として殺してはいない。

そして対峙した際、茶髪が我が師ラヴェインを下し、こちら側に取り込んだのだ」


「レオ君が倒したの!?」


朔桜が凄いと驚きの真ん丸い瞳で見ると

レオは満面の笑顔で誇る。


「はいっ! リベンジ成功です!」


「この仮面男の拳が無ければ、満身創痍(まんしんそうい)のミーたちはあの場でやられていただろU」


フェイスを殴り飛ばす現場を見ていたスモークがラヴェインの信頼を上乗せしてくれる。

その言葉を聞いた船員は彼が言うならとラヴェインとカシャへの敵対心を解いてくれた。


「それで、もうこの船に仮面連中は存在しないのかしら?」


メイプルが敵の所在を問う。


「ナロゥって奴は私が殺した。甲板で殺戮してたのはそいつね」


直接倒したティナが報告する。


「ウ、ウォーゾーンっていうのは僕がた、倒した」


身体を丸く縮こまらせ、ブルブルと震えたボーノがおどろおどろしく報告する。


「一文字 咲って子は僕の能力の中に閉じ込めているよ」


アートが頭を人差し指トントンと叩き報告する。


「そして、“九邪候補”アルレイア・インベルトと“九邪”パーフェクト=フェイスは異空間に消えたわ」


一部始終を見ていたティナが最後に報告を終えた。


「先にここに向かったのはナロゥ。ウォーゾーン。一文字 咲。アルレイア・インベルトの四体。

そして、私と来たパーフェクト=フェイスで全てだ」


ラヴェインの回答で船内に敵がいない事を知り、船員が安堵(あんど)の声を漏らす。

それに釣られるように皆も安堵の声を漏らした。


「そもそも、彼らはこの船になんの用だったの?」


メイプルがラヴェインに直接問う。


「それは――――」


「待て」


ラヴェインが答えようとするとウェポンが割り込んだ。


「俺が話さなきゃならない事だ」


今回の騒動の標的である宝具【奪命(だつめい)】を所持していたウェポンが

“九邪候補”の狙いを包み隠さず皆に明かした。


「俺が宝具を持っていたのがこの惨劇の原因だ。ここの被害の責任は全て俺にある」


全ての責を一身に負い、ウェポンは自身が宝具を所持していた事を悔いて深々と頭を下げた。


「巻き込んで……すまない」


その言葉を発した瞬間、メイプルが溜息を吐く。


「……違うでしょ。悪いのは宝具を持っていた貴方じゃない……。

宝具を奪うためだけに……多くの船員の命を奪ったあいつらでしょ!!」


沢山の犠牲者を思い出し感情が溢れたメイプルが

目尻に涙を浮かばせウェポンの胸ぐらを強く掴む。


「…………すまない」


ウェポンは再び小さな声で謝罪をするとメイプルの手から力が抜けると

ウェポンの前にしゃがみ込み、溜まってたものが一気に噴き出したのか、声を殺して泣き始めた。

その光景を見た“人魔調査団”の船員たちは我慢の糸が切れたかのように

亡き船員たちに手を合わせ、思いを()せるのであった。

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