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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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四十八話 CN.ボーノ CN.ウェポン CN.スモーク

咲の妨害で大穴から一人叩き落とされたティナ。

地面と激突寸前で魔装『八つ脚の捕食者(スパイダー)』の脚を発条(バネ)のように使い

衝撃を吸収してなんとか難を逃れていた。

ティナが落ちた場所は船の最下層のF6エンジン施設。

船の心臓部といっても過言ではない場所。

巨大な母艦を動かすエンジン四機が搭載されている。

冷却処理をしていても平均の温度は40℃近くあり、とにかく暑い。


「大分深いとこまで落とされたわね」


見上げても甲板に空いた穴が遠い。

朔桜たちの元へ早々と戻ろうとした瞬間

爆発音とともに、何かが吹き飛んで来る。


「っ――――!」


ティナは見事な反射神経でその物質をかわし、正体を確かめる。

その物体はエナを持つ生きた男。

ティナはその男の名前を知っていた。


「貴方、ボーノ?」


吹き飛んできたのは“人魔調査団”の一人。

М字の生え際も相まって顔はハートのような形を彷彿とさせる。

右上から伸びる黒く鋭い角のような固まった髪。

後ろ髪も同様、角のような髪が左右に跳ねている。

辛うじて開いた垂れた目からエメラルドの瞳が輝く。

口の周りを囲う黒く濃い髭。

首に緑色の清潔なバンダナ巻いており

上下の白のコック服は血に塗れていた。


「君は……ティナ……ちゃん?」


「気安く名前を呼ぶな」


「はは……ごめんね……」


「一体、何があった?」


爆発音の先を見つめるが、暗くて先が見通せない。


「突然、敵襲を受けたんだ。

この先でウェポンとスモークが仮面の男と戦っている……」


「ふーん、エナの量だとそんなに強い相手に感じないけど」


「この気の量はまやかしだよ……。多分、それ以上に秘めている。

戦闘力も能力も桁違いだ」


「そう。面白そうね」


ティナは『八つ脚の捕食者』を構え、笑みを浮かべた。


「私が捕食してきてあげる。

貴方はそこで船を救った私たちに振る舞う御馳走のメニューでも考えているといいわ」


雑に手を振るとティナは閃光のように飛び出していった。


「朔桜は心配だけど、あのおチビちゃんもいるしどうにかなるでしょう。

後々の懸念になりそうな芽は先に摘んでおくに限る」


激しく損傷している開けた場所に到着したティナの前に三人の人影が見える。

一人は、中心部に翼を広げた鷹の印がある漆黒の軍帽を被り

黒い肌に吊り上がった鋭い眼。

ビッグシルエットの漆黒のコートを羽織り

襟と手首袖の黄色のラインと足元にたなびく赤いラインが目を惹く。

そして、一段と目を惹く左の胸元に輝く七の勲章。

これは国の最高称号を全て網羅(もうら)した証。

濃い緑軍服に靴底の分厚いブーツ。

両手に握った銃を問答無用でぶっ放す仁道無比の狂人。

“人魔調査団”の一人、名をウェポン。

もう一人は、身長百八十センチはあろう大柄の身体。

金髪の角ばったリーゼントに真っ黒のサングラス。

戦闘中ながらも、しゃくれた顎と上向いた口で煙草を加え、煙を吹かす。

右の肩には☆のタトゥー。

左の腕は肩から生身ではなく機械の義手。

白いワイシャツからは、金色の雄雄しい胸毛がチラつく。

下は白のブリーフという漢らしさの塊。

“人魔調査団”の一人、名をスモーク。

だが、二人は既に満身創痍。

瀕死の負傷はしていないものの、身体中裂傷を負い、出血も酷い。

対峙しているのは、無数の三角形の鏡を繋ぎ合わせたような鏡の仮面の人物。

闇に紛れてしまいそうな黒衣。

左の手だけに手の二倍はあろう巨大な黒い手袋。

硬度の高そうな黒いブーツ。

その衣服には、左右対称に赤い模様が入っている。

ティナは一目で魔界の服装だと断定した。

つまり、あれは魔人だ。

仮面の魔人はティナの存在に気が付くと一瞬動きが止まる。


「余所見てぇんじゃねぇ!」


ウェポンが(ふところ)から取り出した片手式のショットガンを乱発。

弾丸には気術を纏わせており、一発一発の殺傷力も跳ね上がっている。

仮面の魔人は即座に後方へと距離を取り、弾幕の薄いところをしっかりと確認して回避。

かわしきれない弾は手で易々と弾き飛ばす。

弾かれた弾の速度は、銃から発射された速度を遥かに超えている。


「ミーも居る事を忘れるNA」


複数の気盾を展開し、弾かれた弾丸を絶妙な角度でぶつけ、仮面の魔人に再び跳ね返す。

だが、仮面の魔人が指を鳴らすと弾丸は

魔人に届く前に爆ぜ、跡形も無く消え去った。

そして仮面の魔人は再び。ティナの方を向く。

言葉は発しない。

ただ、だたティナを仮面裏で凝視する。

その表情は見えない。だが、溢れている。

深く、深く、重く、重い、憎しみという感情が。


「何あいつ……。気味悪い」


ティナは吐き気を催すような感情に当てられ嫌悪感を露わにする。

妙に嫌な感覚が全身を支配し、胸を打つ鼓動が次第に早まってゆく。


「ポニーテール。一時的にでもいい。ミーらに力を貸SE」


スモークがティナの右横に並び、半ば強制的な助力を求めた。


「いいでしょう。でも、高くつくわよ。

あと、これサイドテールだから」


「こいつを殺したら褒美にお前の銃を口に咥えさせて、濃厚な硫酸弾ぶち込んでやるよ。

つりは要らねぇ。俺は金で()るような男じゃねぇんでな」


左横にはウェポンが品性を疑うような発言をして並び立つ。


「ごめんなさい、お前の程度の粗末なブツじゃ私は()けないの。

お前はアレとでも掘り合ってるのがお似合いよ」


ティナも笑みを浮かべながら品性の欠片もない返答をした。


「……てめぇは後で殺す」


「黙れ。先にお前を殺すぞ」


険悪な空気の中、仮面の魔人との戦いが始まるのだった。

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