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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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四十六話 ほな、さいなら~

衣服を脱ぎ去り、黒のマイクロビキニ姿になった“人魔調査団”のメイプル。

対峙するのは、狐の仮面を付けたセーラー服の少女“顔の無い集団(ノーフェイス)”の一文字 咲。

傍から見たら異様すぎる光景。だが、二人は真剣そのもの。

互いに動きを見つつ、隙を窺い合う。

そんな中、先に痺れを切らして動いたのは咲の方。

腰の(さや)から素早く刀を振り、メイプルに鋭い斬撃を放つ。


「もう学んだのね」


近接で切り込まず、遠距離攻撃に切り替えた咲を称賛する。

先程のようにメイプルの体液で刀を絡め捕られ奪われるのを忌避している証拠。

メイプルは長くオシャレな黄色のネイルで自分の掌を突き刺して傷を付けた。

するとその自傷した傷口から褐色の液体が大量に溢れ出す。


「液壁」


手を縦に振って体液を広範囲に飛ばすと、液体は即座に硬化。

咲の放った斬撃を凌ぐ。

そして、視界を戻すためにすぐに液体に戻った。


「やっぱり。この甘い匂い液に治癒に硬化。

あんたの身体は、樹液で構成されてるんやね?

今、自分で掌を傷つけたのは、樹液を出すための初動か」


「さあ、どうかなぁ?」


意味あり気に首を傾げるメイプル。

はぐらかそうとするが、咲は掌に付けた傷が既に完治しているところまで目敏(めざと)く見ている。


「タネは見破った。残念ながら身体が液体で出来ていても、うちに斬れないモノは無いんよ」


咲は静かに刀を鞘に収めた。


「抜刀―不死身(ふしみ)


一足で跳び、間合いを詰めて死せぬモノを殺す剣術でメイプルの首を狙う。

メイプルは左の五本爪で右の五本の指先を傷つけ樹液を垂れ流し

手首を素早く振り、真っ向から突っ込んで来る咲に向かって樹液の弾丸を撃ち込む。


「気盾!」


鞘を握る指を揃えて伸ばし、前方に防壁を展開。

弾丸が前方にめり込みながらもその勢いは止まらない。

液体の身体であるメイプルは安易な攻撃では死に至る事はない。

だが、能力《樹液体》を見破ったうえ、自信に満ちた咲の態度に警戒して距離を取ろうとする。

その逃げ腰の姿勢を咲は見逃さない。

舌なめずりをして既に勝利を確信した。


「掛かったわねっ! 液抱擁(えきほうよう)!」


液壁に使用した地面に広がったままの樹液が咲の周囲を囲むように広がる。


「っ! 抜刀―三千(さんぜん)


樹液が足元に広がったのを視認した瞬間

即座に手首を切り返し、自身を独楽(コマ)のように回転。

刀を振り回して覆いかかる樹液を振り払いながら宙を裂いて直進。

咲が何かを狙っている事を察し、メイプルは後方へと距離を取る。


「抜刀――――」


再び不死殺しの一撃、不死身を放とうと構えた。

しかし、鞘から刀が引き抜けない。


「!?」


自身の刀の状態を確認するとその理由が判明した。


「したたかな女や。ほんま、やってくれるなぁ~」


刀と鞘の間には、べったりと刀に付着した樹液が硬化しており、溢れ出ている。

追撃を止めて地面に着地すると、咲の足を樹液が絡め捕り、あっという間に咲の周囲を樹液が包囲。

退路は完全に断たれた。


「抜刀術の使い手だったのが貴女の敗因よ。

流暢(りゅうちょう)にお喋り出来るみたいだし、貴女は捕虜にします。

でも、人道的に扱ってもらえるとは思わないで。

洗い浚い全てを吐くまで地獄の拷問が待っているわ。

その後に自身の罪に向き合ったのならば、死という褒美を与えてあげる」


怒りの籠ったメイプルの言葉を聞いて咲はクスクスと嘲笑う。


「なんでうちが捕まった前提で話しとるん?」


「刀なしでこの状況から逃げられるというの?」


「うち、剣術だけが取り柄とちゃうんよ」


咲は気取られぬよう静かな動作で人差し指と中指を揃えると仮面能力を発動。

気術で足元の硬化した樹液と天井を同時に破壊する。


「逃がさない!!」


取り囲んだ樹液が咲を捕らえようとするも

周囲の樹液を気術で牽制しつつ、咲は既にF2へと移動していた。


「なっ! いつの間に!?」


メイプルは一瞬の出来事に何も対応出来なかった。

咲は天井と樹液拘束の破壊。

そして、牽制と移動。別の二つの動作を全くの同時に行っていたのだ。

それもそのはず。それこそが咲の仮面能力なのである。


「おえ~~連続で使うとやっぱ気持ち悪いわこれ。

あんたとの勝負は預けておくわぁ……ほな、さいなら~」


咲はフラフラとした動きでその場を去る。

メイプルは彼女の得体の知れない能力に冷や汗を流しながらも引きつった笑みを浮かべる。

だが、あんな危険因子を易々と逃す訳にはいかない。

両手を液状に変化させて伸ばし、上層階へ移動。

メイプルは急いで咲の後を追うのであった。

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